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リアクション
「アディーン様ですね。私はユニコルノと申します。ユノとお呼びください。貴方様は長いこと、この遺跡で眠っていらっしゃったご様子ですね。もしよろしければ、現状についてご説明させていただきますが」
丁寧だがどこか機械的な感じがする口調で話しかけてきたのは、機晶姫のユニコルノ・ディセッテ(ゆにこるの・でぃせって)だった。
「興味ねぇな」
即答したアディーンだったが、彼の興味は、現状よりもユニコルノの方にあるようだった。ユニコルノの頭の上から爪の先まで視線を移動させた後、
「てか、お前。もっと笑ってみろよ。その方が可愛いぜ」
と、ウィンクをする。
即座に食ってかかったのは、密かにユニコルノに心を寄せていた変熊だった。
「貴様、俺様のユノちゃんに何てことをしやがる!」
「あぁ?! 粗○ン野郎になんかもったいねぇよ」
またもや一足触発の自体である。
「この部分は録音する必要はないですよね…」
正確な情報を入手しようとボイスレコーダーを回していた比島 真紀(ひしま・まき)が、遺跡内をビデオに収めていたサイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)に問いかける。
「…無駄に報告書の作成時間が延びるだけだ」
アディーンたちのやりとりにサイモンもまた呆れ顔だ。
最初からその場にいた者達がアディーンの話を聞いた方が良かろうと、自分たちは遺跡内の情報収集に回ることにしたのだが。
これならば、教導団で尋問の授業を受けたことがある自分たちが話を聞いた方が良かったかもしれない…。
アディーンと変熊の喧嘩の原因であるユニコルノが、表情を一切変えないまま呼雪に尋ねた。
「呼雪、どうします?」
ユニコルノに問いかけられ、我観ぜずとばかりに黙々と、未だ花嫁が眠る棺に鳴子式の罠を取り付けていた呼雪は、ため息とともに手を止めた。
呼雪の反応もまた淡々としたものだった。
いい加減、この不毛な喧嘩に付き合わされるのも面倒になってきた。
「とりあえず黙らせるか」
「了解しました。作戦を実行します」
バチバチという音を立てて高周波ブレードを抜きはなったユニコルノを慌てて止めたのは、ファル・サラーム(ふぁる・さらーむ)とスレヴィ・ユシライネン(すれう゛ぃ・ゆしらいねん)だ。
「ちょっ、ちょっと駄目だよ! みんなもっと仲良くしようよ〜」
「お前ら落ち着けって! というか、変熊。悪いけど、君は少し黙ってて! 話がこじれるだけだから!」
スレヴィの主張も尤もである。
名指しで叱られ肩を落とす変熊を尻目にスレヴィは話を進めた。
「できれば君の話を聞かせてくれないか? 君はなぜここで眠っていたのか?
この遺跡は何のために作られたのか? 恐らく君の仲間だろうけれど、まだ眠っている剣の花嫁の嫁のこととか」
スレヴィの質問は至って当然のものだったが、アディーンの答えは素っ気ないものだった。
「俺が知るかよ」
「それは話す気がない…ということなのかな?」
呼雪が続けて質問するが、アディーンは不機嫌な顔でそっぽを向いた。
「知らねぇもんは知らねぇんだよ。俺は自分を目覚めさせた奴にアレを渡せって言われただけだ」
「誰に言われた?」
「覚えてねぇよ。たぶん俺を作ったヤツじゃねぇの?」
八方塞がりな状況に一同が顔を見合わせる中、大河がぼそりと呟いた。
「ってことは、やっぱりさっきの扇は俺のものってことだよな?」
「契約を交わした様子は微塵もなかったけどな」
「あいにく私達はその場に居合わせませんでしたが…」
そう断りつつ、比島は「これを試してみませんか」と自分とサイモンが持っていた携帯電話を大河とアディーンへ手渡した。
「何だよ、これ?」
「圏外だぞ、ここ」
不審そうに携帯電話を見つめる二人に、背筋を伸ばした比島は淡々と説明した。
「本来ならばつながりませんが、契約者同士なら通話が可能であります。例しに大河くん、この番号にかけてみてもらえませんか? お二人の契約が成立しているのであれば、アディーンさんに渡した携帯につながるはずであります」
「あぁ、そうか!」
比島の提案に呼雪やスレヴィは納得した様子で頷く。
「そういうものなのか?」
密航者であったため契約についての知識を持っていなかった大河は、首を傾げつつも言われた通りの番号に電話をかけた。
瞬間、アディーンの持っていた携帯電話がブルルと震える。
「当たりか?!」
一同の視線が再びアディーンに集中したときだった。
「えー、なんでそんなガキと契約なんてしちゃってるのよ。折角、私が仲間に誘おうって思って出向いてきたのに」
それは件の羽扇を手にしたメニエス・レイン(めにえす・れいん)だった。
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