リアクション
◆◆◆ 何処までも続く砂と照りつける太陽。 そして風。 ――ここはカナン? 大きな幹、枝、精霊の集う森。 天空を浮遊する。 ――イルミンスール? 高く高く天を貫かんとする塔のような大樹。 小さな『鬼』の子が、高官に付きそわれで昼寝をしている。 ――ユグドラシルか? 桜の樹がまさに噴花しようとしている。 それを見上げる『鬼』の男。 桜の花びらが舞っている。 「あれは貞継将軍……様!?」 そのほかにも、かわるがわる景色が交差する。 人の脳の容量を遥かに超える『記憶』と『情報』。 「ううん、違う。貞継様やない……あれは……」 開耶は目の前に流され続ける情報を止めることができない。 「あれは二千五百年前の……扶桑の『記憶』なのですか!?」 白花が叫び、ぐるぐると景色が舞う。 目の前のパラノマが現実が嘘かもわからない。 ただ、音と映像と意識が頭と体中を駆け回った。 その時である。 「……ッ!」 彼女たちは急に強烈な痛み感じ、意識が遠のいた。 ◆◆◆ 「コトノハ、夜魅……どんな理由があろうとも、テメエらがやったことは、俺や白花、マホロバ再生の為に力を尽くす皆を否定したことになるぞ!」 桜の木の下で、樹月 刀真(きづき・とうま)が『黒い剣』を抜きながら、コトノハ・リナファ(ことのは・りなふぁ)と蒼天の巫女 夜魅(そうてんのみこ・よみ)に襲い掛かっている。 彼女たちは呆然と立ち尽くし、刀真に揺さぶられている。 扶桑の樹は……焦げた根元がぱっくりと裂けていた。 「他の奴らが許しても、俺は、絶対に許さない……! テメラは俺の敵だ!!」 怒りのあまり自制がきかなくなった刀真を、秋葉 つかさ(あきば・つかさ)やウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)が必死に押さえつけている。 「落ち着いてください、刀真様!」 「冷静なあなたが、一体どうしたんです!?」 ウィングの手を振りほどきながら、刀真は声を振り絞って叫んだ。 「……聞こえなくなった、白花の声が。天子も……!」 「天子様の声が聞こえなくなったって……そんな」 愕然としている水心子 緋雨(すいしんし・ひさめ)。 「開耶、開耶!? 返事をしておくれやす!」 橘 柚子(たちばな・ゆず)が何度も神子の名を呼びながら、樹の根元でうずくまっていた。 |
||