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まほろば遊郭譚 第二回/全四回

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まほろば遊郭譚 第二回/全四回

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第八章 桜下の再会1

「俺は、扶桑に命を分け与えている【扶桑の巫女】封印の巫女 白花(ふういんのみこ・びゃっか)の契約者だ……扶桑を救うために全力をつくす」
 樹月 刀真(きづき・とうま)は扶桑の木の下でそう誓った。
 彼は、樹の根元にある焦げた裂け目に近づく。
「白花、俺とお前はいつも繋がっている。死ぬも生きるも一緒だ。だから、俺の命もお前にあげよう。ともに扶桑を支え、マホロバを安定させる」
 刀真は黒い刀身を抜くと、自らの腕に当てた。
 力を込めた瞬間、赤い鮮血が流れる。
「刀真……」
 パートナーの漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)が、扶桑の傷を治そうと試みていた。
「大丈夫だからね、白花」
 月夜の手のひらから温かい光がこぼれた。
 刀真の流れる熱い血と共に、扶桑へと注がれた。
「行くぞ、月夜」
 刀真は立ち上がった。扶桑の市中へと向かっていく。
 月夜はなんども振り返りながら、彼の背中を追った。
「ごめん……白花、すぐ戻るからね」


 武神 雅(たけがみ・みやび)は扶桑へと向かう途中、その往来で刀真たちを見つけた。
天子は、マホロバの為に祈ることしか出来ない。自分達で考え国家を創造していく事が大切であると語ったのです――」
 刀真は額に汗を浮かべて、叫び続けていた。
「マホロバの前将軍鬼城 貞継(きじょう・さだつぐ)は、間違いなくマホロバの人々を愛していた、その為に噴花を拒み、彼はマホロバの未来を貴方たちに託して壊れたんだ。その彼らの願いに、想いに少しでも応えようという気持ちはありませんか?」
 往来では幾人もの人だかりができているが、中にはシャンバラ人を珍しく見る冷やかしの連中もいる。
 雅は胸が傷んだ。
 刀真はなおも続けていた。
「暁津藩士にも言いたい。暁津勤王党は、外国をうち払うべしと活動しているようだが、その外国人が、今の枯れ行く扶桑に命を分け与えて支えているのを知っているのか、と!」
 数名の侍集団がざわめいている。
 彼らは刀真を指差し、口々に何かを言い合っている。
「刀真、ここを離れるんだ!」
 雅が走りこんできて、彼の腕を引っ張った。
 と、同時に、侍集団が追いかけてくる。
 彼らは、追跡を逃れようと走る。
「気持ちはわかるが、彼らを刺激しすぎだぞ。白昼から斬られたいのか」
「それでもいい。俺は、出来る限りのことをやっているだけだ」
「ならばいいが、私も知らせをもってきたんだ。コーラルネットワークに関して、マホロバ幕府がシャンバラ政府に申し入れをした。刀真がかつてイルミンスールでやろうとしていたことだ」
「それは……まさか」
 その瞬間、刀真がガクリと膝を付く。
 月夜が慌てて彼を抱えようとしていた。
 雅の手にもぺったりと赤い血がついている。
「どうしたんだ、この……血。刀真?」
「白花や扶桑のために、自分も命を分けたいって自ら……私は止められなくて。刀真の気持ちが痛いほど……分かったから」
 月夜は泣きじゃくっている。
 刀真は彼女の黒い髪をすくっていた。
「そうか、陸軍奉行並……牙竜がやってくれたか。俺の行動の先をつなげてくれたんだな。しかし、俺にそれを、見ることができるのだろうか……」
 刀真は彼を呼ぶ声も聞こえず、そのまま意識を失った。