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まほろば遊郭譚 第二回/全四回

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まほろば遊郭譚 第二回/全四回

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第八章 桜下の再会7

 夜の遊郭では遊女たちの甘い誘いに満ちている。
 七刀 切(しちとう・きり)は竜胆屋の二階の明仄の部屋で、こう言っていた。
「明仄さん、今夜はわい、貴女を買いに来たからね」
「あら、この間のお大尽じゃないですか。胡蝶(てふ)をお望みかと思ってましたが」
「まあねえ。ねぇ、暁仄さんから見て、胡蝶ってどんな子だった?」
 切の物怖じしない様子に、明仄は吹き出して笑っていた。
「大胆なお大尽ですこと。浮気者は嫌われちまいますよ」
「そんなんじゃないって〜。ちょっと興味があるだけだよ。正識さんに連れていかれちゃったしね〜。『私と来い』、なんて言って連れてったから、すぐ殺すなんてこともないだろうさ。……あれ、どうしたの? 気分悪い?」
 明仄の色の白い肌が、さらに青くなっている。
 切は心配したが、彼女はにこやかに笑った。
「身請けは、遊女の夢ですからね。あの鼓(こ)も変に遊女に染まる前で良かったんですよ。ここにいちゃあ、まともに恋もできません」
「そうなんだ。でも……気にならない? ティファニーは、明仄さんのこと心配してたみたいだし。明仄さんもそうなのかなと思って」
「……あの鼓(こ)のことは大事にしてました。でも今は、あなた様の方が大事ですよ。さあ、床へ参りましょう。せっかく酒で火照った身体が、醒めちまいますよ」
 そういって、明仄は切を三重布団へ誘う。
 彼を寝かせ、帯を解いた。
 切の上に覆いかぶさり、耳元で囁く。
「ねえ……アタシだけを見てくれなきゃ嫌ですよ」
「う、うん……」
 遊女のしなやかな指が、切の身体を撫で上げる。
 そのあまりの気持よさに彼はうめき声を漏らした。
「だめ、だよ、明仄さん……そんなにしたら……あ、け……どうしたの明仄さん?」
 急に明仄の手が止まり、彼女は激しく咳き込みだした。
 切が驚いて背中をさすってやるが、止まりそうにない。
「コホ……コホ……ゴホッ」
「明仄さん!!」
 明仄の手の平には血飛沫が飛んでいた。
「おねがい……このことは……誰にも。お代は入りませんから……帰って……!」
「明仄さん! 開けてくれ!」
 切は急き立てられて部屋から追い出された。
 明仄の咳はまだ続いているようだ。
「誰にも……知られちゃいけない……。正識様には……絶対に!」
 布団が血で赤く染まっていく。
 明仄は箪笥の引き出しを開けて、金色に輝くマホロバ小判を握りしめると、人の目を偲ぶように裏戸から出て行った。


 今宵も、遊郭に明かりが灯る。
 陽炎(かげろう)のようにゆらゆらを漂いながら、初夏はもうすぐそこまでやってきていた。


担当マスターより

▼担当マスター

かの

▼マスターコメント

 こんにちは「かの」です。
 この度は公開が遅れて申し訳ありませんでした。

 アクションは総合的に判断していますが、『マニュアル』に準拠しています。
 ダブルアクションやグループアクションはご注意ください。

 『托卵』によって『天鬼神の血』を引く子供を出産した方は、次回のシナリオ参加時に、子に『鬼』の兆候が出るかチェックを行います。(男女とも)
 方法は、公平を規すために、シナリオガイドの『挨拶掲示板』を使用します。
 『挨拶』をご記入いただき、右のサイコロが『ゾロ目』だった場合、『鬼』化します。 その場合、アクションにも影響します。
 お手数おかけしますがよろしくお願いいたします。

 今回のシナリオ中に遊郭などでの動いた金額は、キャラクターデータには反映してませんが、私のほうで管理しています。
 個別メッセージで残金をお知らせしてますので、そちらをご参照ください。
 今回動いた方のみ記載しています。
 違っている場合は、お手数ですが次回アクションでお知らせください。
※所持金は平成23年5月16日のキャラクターデータを使用してます。

 また、給金前借り年季奉公のため、遊郭で働いてる方への給金は初回のみ、二十大判を一律加算させていただいてます。
 遊郭からあがる場合は、最低でも二十大判プラスアルファ(ランクによる)の金額が必要になります。


※桜木に取り込まれている三人の巫女(SFL0000661)木花 開耶、(SNL9998864)封印の巫女 白花、(SFL0003468)リース・バーロットは、解放されました。
 代わりに、(SFM0002869)秋葉 つかさ、(SFL0002870)ヴァレリー・ウェイン、(SFL0034733)蝕装帯 バイアセートが取り込まれました。
 このシナリオでは依然扶桑の木の中のままですが、他のシナリオにはご自由に参加されて結構です。

※アクション結果により『天鬼神の血』のリスクが解消されなかったため、托卵を受けたキャラクターの身体的ペナルティは継続しています。
こちらも、私の担当する今作と次作シナリオ限定で、他のシナリオに参加される場合は、とくに制限等はございません。

 イルミンスールとエリザベートの描写を一部猫宮マスターにご協力いただいてます。
 猫宮マスターありがとうございます。


(リンク切れ、文章訂正等、一部修正しました。2011.5.23)
(キャラクー名、口調等、一部修正しました。 2011.5.24)
 度々、申し訳ありませんでした。


【NPC一覧】

鬼城貞継(きじょう・さだつぐ)……マホロバ前将軍。扶桑の噴花を止めるため将軍職を白継に譲ったが、廃人となる。

房姫(ふさひめ)……葦原藩姫。大奥入りし、貞継の意思を継ぐと約束した。
睦姫(ちかひめ)……瑞穂藩姫。行方知れず。貞継との間に子「雪千架」がいる。

ハイナ・ウィルソン……葦原明倫館総奉行(=校長)。房姫のパートナー
ティファニー・ジーン……葦原葦原明倫館・元分校長。将軍家の秘密を流したため、追われる身となった。現在は『東雲遊郭』にて遊女見習い。

鬼城慶吉(きじょう・よしき)……鬼城御三家の一人。将軍後見職。

白継(しろつぐ)……マホロバ将軍。貞継と(SFM0033439) 樹龍院 白姫の子。
穂高(ほだか)……貞継と(SFM0034290) ファトラ・シャクティモーネの子
明継(あきつぐ)……貞継と(SFM0015871)葛葉 明の子
貞嗣(さだつぐ)……貞継と(SFM0002869)秋葉 つかさの子
珠寿姫(すずひめ)……貞継と(SFM0016822)度会 鈴鹿の子
緋莉姫(あかりひめ)……貞継と(SFM0032573)水心子 緋雨の子
雪千架(ゆきちか)……貞継と睦姫の子


蒼の審問官・正識(あおのもんしんかん・せしる)……七龍騎士の一人。瑞穂藩主。マホロバ名では(まさおり)
日数谷現示(ひかずやげんじ)……瑞穂藩士。瑞穂藩を追われ、流浪している。
瑞穂弘道館分校……葦原明倫館分校と同じで、マホロバ内作られた瑞穂藩分校


胡蝶(てふ)……ティファニー・ジーンの源氏名
明仄(あけほの)……『竜胆屋(りんどうや)』No.1の売れっ子。姉遊女。ランクは天神。
海蜘(うみぐも)……妓楼(ぎろう)『竜胆屋(りんどうや)』楼主
正識(ごしき)……美形の影蝋。正識の源氏名


【付録】

●瑞穂藩(みずほはん)
マホロバ西国一の大大名。
二千五百年前の戦国時代、鬼城・葦原に破れ、西国に追いやられた。
現在は若き藩主、正識(マホロバ読みでは『まさおり』)が治めている。
瑞穂藩はエリュシオン帝国との貿易により栄え、その文化や風土の影響を受けてきた。
新しい藩主正識はエリュシオンのユグドラシルに強い感銘を受け、七龍騎士として働いており、臣下にもそれが影響されている。

●暁津藩(あきつはん)
マホロバ西国の藩のひとつ。
二千五百年前の天下二分の戦いでは鬼城家につき、「戦功大なり」の褒章に預かった。
現在まで続く大名として優遇されてきたが、藩政改革は進んでいない。
暁津勤王党(あきつきんのうとう)という一派が藩内で一大勢力となり、扶桑の都で活動を行っている。
しかし最近では、その反体制運動に懐疑的な複数の同志達が決別、脱藩者を出している。

●マホロバ二大遊郭
東雲(しののめ)遊郭……マホロバ城下にある幕府による唯一公許の遊女街。幕府の規制もあり、出入口は大門のみ。
水波羅(みずはら)遊郭……扶桑の都にある伝統ある花街。一般に出入りは自由。

●遊女の階級
太夫(たゆう)……最高位の遊女。遊郭における伝説的存在
天神(てんじん)……高級遊女
花扇(かおう)……一人前の遊女
雛妓(ひよこ)……見習い遊女。
的矢女郎(てきやじょろう)……最下級の遊女。病に冒されたものも多く、あたると死ぬという意味
芸者・舞子(げいしゃ・まいこ)……遊興時の舞や三味線、唄などを行うもの。身体は売らない
楼主(ろうしゅ)……遊女屋の主人

※『花魁(おいらん)』と呼ぶのは『花扇(かおう)』以上の遊女

『影蝋(かげろう)』……男娼。客は男だけでなく女もいる

●花魁道中(おいらん どうちゅう)
花魁が雛妓などの見習いを引き連れて揚屋や茶屋まで練り歩くこと

●揚代(花代) 
遊女を呼んで遊ぶ時の代金のこと。
高級花魁(太夫)と一回遊ぶのに揚げ代、人数分の料理代+酒代、ご祝儀などで100〜200万円前後、三度通って馴染みになるまでには1,000万円はかかる。。
座敷で芸者や舞子などをたくさん呼んで、賑やかに騒ぐ金払いの良い客はお大尽(おだいじん)として喜ばれる。
『天神(てんじん)』で10〜20万円程度。
『花扇(かせん)』で5〜6万円程度。
一番安い『的矢女郎』は3,000〜6,000円程度。

●身請け 
遊女の身代金や借金を支払って勤めを終えさせること。
相場は、
花扇で三百小判〜百大判(300万〜1000万円)
天神で三百大判(3,000万円)
太夫だと七百大判(7,000万円)

●マホロバの通貨
マホロバには大判・小判(金貨)、銀(銀貨)、銅(銅貨)がある。
一銅=1円
一銀=1,000円
一小判=10,000円
一大判=100,000円

(参考)1ゴルダ=100円〜500円