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【戦国マホロバ】参の巻 先ヶ原の合戦

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【戦国マホロバ】参の巻 先ヶ原の合戦

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第四章 先が原4

【マホロバ暦1190年(西暦530年) 9月15日 8:00】
 先が原村(さきがはらむら)――



【東軍】

「今回もまた、貞康様の元で働かせてください」
 忍びの頭目フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)が、ベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)と共にここぞというタイミングで参上する。
 忍犬忍野 ポチの助(おしの・ぽちのすけ)も一緒だ。
「この戦、我らが勝利へ導きましょう」
 貞泰は軽くうなずき、フレンディスを呼び寄せて耳打ちした。
 貞康がフレンディスにあまりに顔を近づけているため、ベルクは軽い嫉妬心を覚える。
 彼女の手前、それを隠した。
「……承知いたしました。では、私はこれで。おいで、ポチの助」
「はい、ご主人さま。この吸血鬼より役にたって見せます!」
 ポチの助はしっぽを振って、フレンディスについていく。
 去り際、ポチの助の見下したような視線にベルクは軽く舌打ちした。
 貞康がベルクに言う。
「そちも行け」
「は……しかし」
 最近、フレンディスと恋仲となったばかりのベルクにとって、彼女も貞康も互いに異性をして意識していないことがわかっていても、複雑な思いがするものだった。
「いくら優れた忍びでも、今回はそちの助けもいるだろう。わしの警護は心配しなくてもよい」
「承知」
 ベルクに背中に小さく声がかけられて様な気がした。
「がんばれよ」
「……ああ。そっちもな。殿が死んだら、フレが泣く」
 フレンディスをはじめとした忍びの一行は、貞康の密命を受けてその場を去った。

卍卍卍


「はううぅ、第一陣とは責任重大ですぅ。こんな乱戦、怖いのですけれど、他の皆さんが葦原 祈姫(あしはらの・おりひめ)さんを説得するまで、前線を守り抜くですよー!」
 土方 伊織(ひじかた・いおり)は、馬謖 幼常(ばしょく・ようじょう)と共に先陣として参戦した。
 東西の軍は先が原村で互いに睨みあったままだ。
 相手の出方がわからぬまま、いつ、どちらが動くのかを見計らっていた。
「数では西軍が勝ってはいるとはいえ、戦力的には五分五分。鍵は、祈姫様の陣がどう動くかだろう。西軍から離反者が出れば、一気に流れは変わる」
 おそらく、鬼城 貞康(きじょう・さだやす)もそのことは計算に入れいているだろう。
 とはいえ、他人の出方次第というのも、薄氷の上を歩くような危うさではある。
 ゆえに、前線に課せられた責任は重いものだった。
「それまで、時間を稼ぐのだ。前線を突破されるな」
「無論です。お嬢様」
 幼常の戦術に応えるように、サー ベディヴィエール(さー・べでぃう゛ぃえーる)が馬上から土方隊の指揮をとる。
「混戦になれば小細工は不要。ただ、勝機を逃さず、敵を討つのみ。伊織お嬢様からは、前線を維持することを申し付かっております。この陣、騎士の誇りにかけても、守り通してごらんにいれます」
「すっごいのう! 馬が、兵が並んでおる。てれびでみた大河どらまのようじゃ!!」
 逸る心を抑え、サティナ・ウインドリィ(さてぃな・ういんどりぃ)は、ベディヴィエールが敵をひきつけるのを待つ。
 途中、濃霧が晴れてきた中で、西軍から忍びの一行が彼らのわきを通った。
「お味方か。どうされた?」
 ベディヴィエールの問いに、忍びの頭目フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)は、「物見でございます」とだけ答えた。
「そうですか。ならば通してもよいでしょう」
 サティナは忍びの彼らを先に通す。
 やがて、西軍の主力の方角へ向けての発砲音が聞こえた。
 貞康からの命を受けたフレンディスらが仕掛けたものだ。
 それを契機に、睨みあったままの西軍が動き出した。
 敵が近づいたのを見計らって、サティナは仕掛けておいた罠を発動させた。
 自分の半包囲に向かって、魔法攻撃を仕掛けるものだ。
「ふ、折角の大舞台じゃ。精々、派手に戦場を舞い踊るとしようかの!」
 罠にかかった足軽兵に対して、ベディヴィエールの馬が突撃していく。
 こうして合戦の幕が上がった。