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【戦国マホロバ】参の巻 先ヶ原の合戦

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【戦国マホロバ】参の巻 先ヶ原の合戦

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第四章 先が原5

【マホロバ暦1190年(西暦530年) 9月15日 09:54】
 先が原村(さきがはらむら)――


 街道が交差する東軍第二番、三番隊の周辺は先が原での最大の激戦地であった。
 西軍の侍大将日数谷 現示(ひかずや・げんじ)率いる猛撃に、東軍は苦戦する。
 鬼鎧稲桜に乗り込んだ透玻・クリステーゼ(とうは・くりすてーぜ)璃央・スカイフェザー(りおう・すかいふぇざー)は、必死に食い止めていた。
「ここを突破されたら、後方には本陣がある。稲桜1機では一千機に遠く及ばないが、多少は戦力になるだろう」
 『銀鼓』と名乗る透玻に、璃央は『金鎖』として答える。
「はい、銀鼓様。私はここに来て、鬼鎧マホロバの地から支援されているような気がします。これも水が合うと申しましょうか。稲桜からそう感じるのです」
 璃央は気のせいではなく、レーダーの感度がよくなっているとも言った。
 透玻も間違いではないように思う。
「……うむ。私も、鬼鎧の稲桜と心を交わしたわけではないが、金鎖が言わんとしていることはわかる。この時代はまだ鬼が鬼としてあった時代。鬼鎧の性能を発揮するには最適なのだと……思う」
 彼らはその鬼鎧によってもたらされたという、東軍の勝利を信じている。
 遠く第三番隊で戦うイコンの情報が入った。
 透玻は言う。
「きっと東軍のものだろう、連携して戦うぞ。今回は防戦の戦いではない。敵の数を減らす!」
「了解」
 璃央は稲桜は、第三番隊付近で戦うイコン第六天魔王に近づけた。
 第六天魔王を操る桜葉 忍(さくらば・しのぶ)織田 信長(おだ・のぶなが)は、「これから、この周辺を吹き飛ばすから注意するように」と言ってきた。
「久方ぶりの戦じゃからな! 存分に暴れてやるぞ!」と、信長。
「というわけだ。できれば、離れていてほしい。第六天魔王の力をフルで放出する」
 忍の説明に、透玻はなるほどとうなづいた。
「わかった。では、稲桜は他の味方に、第六天魔王から離れるように伝達しよう。ついでに、敵をここまでおびき寄せる!」
「そうしてくれるとありがたいな」
 忍に信号に璃央は丁寧に返す。
「例には及びません。この戦線は、互いに協力しなくてはもちません」
 稲桜はこの場を離れ、味方に合図を送っている。
 それを見計らうように、信長はイコンの出力を上げていく。
「第六天魔王の力みせてくれるわ!」
「あちきも、お手伝いしますよー!」
 レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)が、愛馬の蒼雷にまたがって、ぬうように駆け回った。
 一段高い丘の上から、ミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)がレティシアに向かって誘導している。
「レティ、敵の部隊をこちらに引っ張ってきて! 味方イコンの動きに合わせて!」
「はいはい、一度動き出したら、あちきを止められるものなんていないって。思い切り、足並みを乱れさせてさせてあげますよう!」
 レティシアが敵陣形の間を横断する。
 彼女がいっきに駆け抜けたとき、竜巻があたり一帯を襲っていた。

卍卍卍


【西軍】

「現示くん、ごめんね。ボクが軽い気持ちでここへ連れてきたばっかりに……」
「てめー、さっきから謝ってばっかじゃねーか。いいから、俺は好きでここにいるんだからよ」
 合戦が始まってから、小二時間が経過した。
 西軍は奮戦し、敵を撃退してゆく。
 西軍の侍大将を務める日数谷 現示(ひかずや・げんじ)は、桐生 円(きりゅう・まどか)に向かって言った。
「たとえ、てめえに連れてこられなくても、いてもたってもいられなくなって、自分から来ただろうよ。いっぱしの瑞穂藩士が、瑞穂国の祖瑞穂 魁正(みずほ・かいせい)様にも、天下人日輪 秀古(ひのわ・ひでこ)太閤殿下にもお仕えしたんだぜ。こんな名誉なことがあるかよ」
 西軍は現在、有利にある。
 しかし、オリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)が、冷静に状況を分析している。
「あの東軍のイコンはやっかいですわね。もしものときは、わたくしたちが殿を務めますわあ」
「もしも、なんてねえ。絶対に勝つ。それ以上言うと、ここで裸にひんむくぞ」
「まあ……下品ですわね。でも、それだけの元気があるのでしたら、心配いらないかもねえ」
「瑞穂の数千年の未来がかかってんだ。死んでも退けるか」
 東軍の鬼城 貞康(きじょう・さだやす)のもとには、未来人……すなわち現示と同じ時代の人間が、イコンを持ち込んでいることは知っていた。
 ゆえに、西軍もイコンを欲してた。
「よーし、西軍に加勢してやるぜ。この俺がなあ!」
 柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)はイコン屠龍で参戦していた。
 イコンは通常二人乗りで設計されているため、パイロット一人では真価を発揮することはできない。
 また、稼働時間も限られている。
 彼の目的は、生体兵器に近いといわれる鬼鎧のデータを取ることにあった。
「さあて、鬼鎧のオリジナルがどんなものか。試させてもらうか。鬼鎧はどこだあ?」
 合戦が始まって小二時間は経過しただろうのに、この時代のものと思われる鬼鎧はまだ姿を現さない。
 魁正もじりじりとした様子で、葦原の鬼鎧が投入されるのを待っているだろう。
「朱鷺が行きましょう」
 東 朱鷺(あずま・とき)が進み出る。
「初めて出会った頃は只の陰陽師でしたが、今は八卦術師です。八卦術師の強さをこの時代に刻んで差し上げましょう」
「あれは……陰陽術? いや、八卦か。やっかいだな」
 レギオン・ヴァルザード(れぎおん・う゛ぁるざーど)は西軍に偽装し、紛れて活動していた。
 彼は西軍を内部からかく乱するために密かに動いていた。
「八卦の恐ろしさから、逃れることができますか?」
 朱鷺の八卦術が敵味方もろとも容赦なく襲いかかる。
 レギオンは舌打ちした。
「どんな名誉も報酬も、生きて帰ってこれてこそ……下手な名誉に走るよりは、適当な手柄を立てて死なないように暴れるだけだ……あれは味方……東軍か?」
 レギオンは、西軍の中でも奇妙な動きをする一団に気付いた。
 如月 正悟(きさらぎ・しょうご)の送り込んだ遊撃隊である。
「……頃合いか。合流させてもらう!」
「そうはさせないよー! ねえねえ、もっとミネルバちゃんと遊んでよー!」
 ミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)が先に回り込んでいた。
 使い慣れた大剣を構え、盾のようにして突撃してくる。
「水平に件を振り回すと楽しーよ。超楽しい!!」
 ミネルバの笑い声がこだまする。
 前線は一進一退のこう着状態に陥っていた。