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リアクション
「セルフィーナ先生!」
「詩穂様、行きます!」
騎沙良 詩穂(きさら・しほ)とパートナーのヴァルキリー、セルフィーナ・クロスフィールド(せるふぃーな・くろすふぃーるど)は、ユニオンリングを使って合体した。
純白の衣装を身に纏った、十六、七歳程の美少女が、魔鎧清風 青白磁(せいふう・せいびゃくじ)を装備する。
その背には、ヴァルキリーの羽。
「敵が大きいのであれば、それよりも更に上から行きます!」
詩穂は、宵一達と共に、空中戦でヴリドラに対峙する。
空中に居ても、ヴリドラの放った咆哮の衝撃を受けたが、精神を蝕む咆哮は堪えきった。
「目を覚ましてください。
ヴリドラさんは、立派なパラミタの守護者なのですよ。
思い出してください、取り戻してください、ヴリドラさん。
パラミタを守護するための力と誇りを」
アンチナノマシンブレードを手に、詩穂はヴリドラに訴える。
「「汝如キニハ、解ルマイ。
力モ誇リモ、我ハ失ッテナドオラヌ!」」
「どうして、解ってくれないんですかっ……!」
パラミタと民を救いたいというこの気持ちを。
ほんの少しの可能性でもあるのなら、こうして命をも懸ける、自分の心を。
そして哀れなヴリドラをも、救いたいというこの思いを。
(アイシャちゃん……)
全ての想いを捧げる相手を思い出し、詩穂はぎゅっと唇を噛んだ。
彼女の為にも、負けられない。戦うしかないのなら。
詩穂達はヴリドラが空中戦を仕掛けて来るだろうと予測したが、ヴリドラは基本的に坑道入口の上を動こうとしなかった為、その巨体は格好の的でもあった。
「体力が多ければ多い程、効果的な攻撃もあります!」
しかし、咆哮を凌ぎ、死角から急所を狙って攻撃を仕掛けた詩穂は、ヴリドラが放った酸のブレスの中に飛び込んでしまう。
死角からでも拡散される、性質の悪い範囲攻撃だ。
それでも、攻撃の手を止めず、エクス・スレイブの一撃を放つ。
ブン、と目の前に振られたヴリドラの尾を叩き斬り、既にヴリドラ自身によって断たれていた尾の先は、ザアッと霧散して消えた。
トカゲの尾のように、ヴリドラは尾の先を捨てて本体を守ったのだ。
「……く……」
詩穂は焼け付く痛みに、距離を置いて息を吐く。
削りあいは、あまりにも分が悪すぎた。
ヴリドラに深刻なダメージを与える前に、こちらの命が尽きてしまう。
その時。
微かな地鳴りのようなものを感じた。
パラミタ内海、沖合いの方だ。
ヴリドラがびくんと反応し、初めて、空へ舞い上がろうとする。
「待て!」
翔一朗によって、ハルカの結界に連れ込まれ、回復していたエヴァルトが飛び出した。
イルダーナの時は、出遅れた。同じ轍は踏まない。
「俺も連れて行け!」
しがみついたエヴァルトを振り落とすよりも、ヴリドラは沖へ向かうことを優先した。
瞬く間に飛び去るヴリドラの背に何とかよじ登るエヴァルトは、少なくとも見えなくなるまでは、振り落とされなかったようだ。
「ず、ずるいでふ〜!」
リィムが叫ぶ。
「言ってる場合か、追うぞ!」
宵一が、その叫びにはたと我に返って言った。
「説得は失敗だったわね」
真宵はヴリドラの後を追わず、しみじみと考え込んだ。
「メロンパンをお渡しできませんでしたわ……」
メロンパンを食べなかったリューリクは、上に立つ者として失格だし、メロンパンの情報をすぐに入手しようとしなかったトゥプシマティは、魔道書として失格だとテスタメントは思っていた。
そして今、ヴリドラへ勧めるつもりだったメロンパンを手に残念がる。
「やれやれ。とんだ経験だ」
土方がひとつ息をつき、
「何がいけなかったのかしら」
と真宵は首を傾げる。
「好きな人の悪口を言われたから怒ったのです」
そう言ったハルカに、視線が集中した。
「……好きな人?」
集中した視線に、ハルカはぽかんと驚く。
「……そう見えたのです」
成る程、と思わなくもない。
最も、恋愛感情というもの自体を解っているのかどうか、というハルカだから、「好きな人」もどういう意味を込めているのか今いち不明だが。
ヴリドラが向かった沖合いの方では、何が起きているのだろうか。
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