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フロンティア ヴュー 3/3

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フロンティア ヴュー 3/3

リアクション

 
 
「当然と言えば当然だけど、この宮殿も巨人用のサイズなのね」
 聖剣を捜すのは他の人達に任せて、水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)は、パートナーのマリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)と、遺跡内の建築物の調査をしていた。
 聖剣以外にも、この遺跡に何か重要なものがあるのなら、把握しておかなくてはと思った為だ。
 ついでに聖剣の在処についての情報が得られることがあるのなら、とも勿論思うが。
「罠の類は、無いようね、今のところ」
「待ち伏せも無し、か」
 マリエッタも、『神の目』を用いて周囲を警戒する。
 やはり、何処にも生き物の気配はなく、侵入者に対するような仕掛けも一切ない。
「うーん、どうにも、これは落書きにしか見えない……ような気がするのだけど、何か特別な意味を持つのかしら」
 壁に無造作に描かれた、不自然な絵なのか文字なのか解らないものを発見して、ゆかりはとりあえず地図に印をつけた。
「此処は、崩れたのかしら? ここだけ穴が開いてるの、変ね」
 反対側の壁には、人がくぐって通れる程度の大きさの穴があり、マリエッタが首を傾げる。
 マッピングをして、気になるところにはマーキングをしておく。
 マリエッタのトレジャーセンスには、全く反応は無かった。
「それにしても、ここまで規模が大きいのに、町じゃないのね」
 マリエッタは周囲を見渡す。
 町ほどに巨大な、しかしこれは一個の建物だった。
 とはいえ、ところどころにベランダやら中庭やらがあるので、閉塞感もあまりない。
 ゆかりは頷いた。
「生活する為の場所じゃないんだわ。門の遺跡から此処に来て、そしてまた、帰る。
 此処は、長く留まる場所じゃない」
「じゃあ、何の為に、来るの?」
「それを調べているのよ」
 生活する為の場所じゃない。
 ゆかりの言葉を脳裏に繰り返して、マリエッタは改めて周囲を見る。
 だから、なのだろうか。
「……上手く言えないけど。何だか、夢の世界みたいな場所ね」
 呟いて、肩を竦める。
「こんな曖昧なの、教導団員としては失格ね」
「言いたいことはわかるわ」
 ゆかりは苦笑した。


「……そう言えば、聖剣を捜しに来たんでしたね」
 別の場所で、遺跡内部の調査に没頭していた叶 白竜(よう・ぱいろん)が、不意に我に返って呟き、パートナーの世 羅儀(せい・らぎ)は、うっかり笑いを堪えた。
「素で忘れていたな……」
 つい遺跡の調査に夢中になって、目的を見失うところだった。
 それでも、興味深く、意識が向かう。
 かつて、ドラゴンと巨人族とドワーフと、そして人間が共存して世界があった。
 今、そんな世界に触れて感慨深かった。
 一緒に行動している都築の影響もあるのだろうか、と白竜は考える。
 戦意や焦りに支配されず、大らかな気持ちで捜そうと思った。
 勿論、最低限の警戒は怠らず、羅儀にも都築の周囲に気をつけておくように指示してはあるが。
 最も警戒すべき時があるとすれば、聖剣が見つかった、その時だろうか。

「……聖剣は、戦いの為というよりは、世界樹を何らかの理由で切る為の道具だったのではないでしょうか」
 遺跡内部に根を張り巡らせる世界樹を見つめて、白竜は呟いた。
 世界樹を死なせることなく切り分けられる、そんな道具だったのかもしれない。
 羅儀が何も言わずににやにや笑っているが、白竜は真面目だ。
 少なくとも、剣の扱いを知らないジールにも扱えるもの、戦いだけが目的のものではないという気がする。
 そんなことを考えながら、剣を捜した。

 ふと、羅儀は耳を澄ます。
 誰かが歌っている。
 いい声だな、と思った。
 技術ではなく、気持ちの込められた歌。
 暫く続いて、それから、本職と思しき歌が始まる。
(秘宝が歌であったように、聖剣も、そういった人の他の器官に寄るものかもしれないな……)
 歌声によって、見つかればいい。
 そう思った時、羅儀は外を見て目を見開き、慌てて白竜を呼んだ。