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リアクション
「蒼様、だいぶ元気が良い桃の木のようす。気を付けて下さいね」
心配そうにレイ・コンラッド(れい・こんらっど)が声をかける。
「もう! 子供扱いしないでってば〜。大丈夫だよ! ねっ? 隆光くん」
晃月 蒼(あきつき・あお)は隣に居る久多 隆光(くた・たかみつ)に同意を求めた。
「そうだな。とにかく、俺は雑魚の相手」
「ワタシは桃の木!」
「私はお二方の援護を」
3人は自分の役割を確認すると動き出した。
まず、桃に寄って来ているパラミタオオカミとコウモリを隆光がスプレーショットで蹴散らした。
木の周りに魔物が居なくなったのを見計らって、蒼がバスタードソードで根を切りつけた。
レイはまだ動けそうな木を見て、沢山持っているモヒカン……ではなくウォーハンマーによって幹へとダメージを加えた。
根を切られ、幹を攻撃されて立って居られず、桃の木は倒れたのだった。
「やった〜! 隆光くん倒れたよ!」
「こっちもあらかた片付いた。収穫をしておこう」
「そうですな。魔物に捕られる前に収穫をしてしまいましょう」
いそいそと収穫をし、この木の桃は全てなくなったようだ。
3人は次の桃の木へと向かっていった。
「野郎ども、桃狩りだーっ! 逃げる桃は敵だ。逃げない桃は訓練された敵だーっ!」
「なんだか凄いテンションですー! とにかく頑張るです〜」
無駄にハイテンションな仏滅 サンダー明彦(ぶつめつ・さんだーあきひこ)と、その後ろにはこっそり学校見学に来ていた広瀬 ファイリア(ひろせ・ふぁいりあ)が居た。
「……元気だねぇ」
無気力な雰囲気で立っているのは黒脛巾 にゃん丸(くろはばき・にゃんまる)。
「楽しそうじゃないですか」
背中に籠、手には収穫用のカタールを持つという出で立ちなのはザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)だ。
「うおりゃーーーーっ!」
サンダー明彦は早速、叫びながらママチャリで突っ込んでいった。
魔物に雑じったその様は全身タイツに、ヘビメタ衣装、白塗り悪魔メイクときている為、まるでモンスターそのもののようだ。
「いきいきしてるですー」
ファイリアはあっけらかんと言う。
「あれは危ないんじゃないのかい?」
にゃん丸は周りにいる魔物を見て発言した。
「でも、あれはもう止められない気がしますよ」
ザカコの言葉に2人は頷くのだった。
サンダー明彦は魔物と一体になりながら、桃の木に近づくことに成功した。
ママチャリからジャンプするとそのまま桃の木の幹にしがみつく。
「とったぞー!」
背中のエレキが眩しく見える。
「どうやら無事みたいだねぇ」
そうにゃん丸が呟いた瞬間、事は起こったのだ。
「ほんぎゃー!!」
鞭のようにしなる枝がサンダー明彦の顎へと直撃し、吹っ飛ばした。
そして、そのまま遠くに居たタノベさんの上へと直撃したのだった。
「……」
そこに居た3人は暫く固まっていたが、意識をこちらへと戻した。
「ご覧の通りだ……奴は強い。俺が動きを止めている間に氷術で取押さえてくれ」
「任せて下さい」
「そのあとはファイがやるですー!」
皆の意思を確認すると、にゃん丸が動いた。
「黒脛巾忍法、地蜘蛛縄!」
そう言うとにゃん丸は持っていたロープで幹と枝を一緒にぐるぐると巻き付けていく。
動く根を巧みに避けているのは流石だ。
(ああ……俺やっと忍者らしい仕事した!)
心の中でガッツポーズをとる。
「さあ、皆! あとは頼んだぞ!」
にゃん丸の号令で、ザカコが根に向かって用意していた氷術を放つ。
根の動きが止まったのを確認してからファイリアがハウスキーパーを使い根を切り落していった。
「さすがは【光るちんちん】ですね!」
「【光るちんちん】ちゃん凄いですー!」
2人は感歎の声を上げる。
「素敵だったよ……ひ、ひか……」
たまたま側に居たホイップも声を掛けようとしたが、恥ずかしさのあまりどこかへと走り去ってしまった。
「…………光ってないのに……」
遠い目をしてしまったにゃん丸は置いといて、大人しくなった桃の木から収穫を開始したザカコとファイリアだった。
「美羽さん、本当にこの格好で行くんですか?」
ヒーローショーで使用したミニスカドレスに身を包んだ小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)にベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)が話しかける。
「勿論! パワーブレスはどう? かかった?」
小型飛空艇の上でベアトリーチェは美羽にパワーブレスを掛け終った。
「ええ、これで大丈夫です」
「よっし! 行っくよー!!」
わざわざ取りつけたバイク用のカーステレオからテーマソングが流れだす。
「魔法少女マジカル美羽、ただいま参上!」
そう上空から皆に見えるようにポーズを取った。
魔物達でかかりきりの皆の目を引いたのは一瞬だけだった。
「むぅ〜、うまく注目出来ると思ったのに! まぁ、いいや次! 『マジカル滅多斬り』!!」
そう技名を叫ぶと小型飛空艇から飛び降り、刃渡り2メートルの大剣型光条兵器を使って桃の木をメッタメタに攻撃した。
「凄いや! 魔法少女誕生の瞬間だよ!!」
「そ、そうだな……」
(いや、あれは自称だろう……)
ばっちり見ていた者がここに2人も居た。
クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)とエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)だ。
他の場所で隠れ身を使い桃の収穫をしていたのだが、テーマソングが流れた途端、クマラの目が光り、近くまで連れてこられたのだ。
美羽が枝を切り落とすと地面まで降りて来ていたベアトリーチェと近くに来ていたホイップが手伝い、枝から桃を回収していく。
「オイラ達もあそこを手伝おうよ!」
「解った、解った」
服の袖をぐいぐい引っ張られ、ここの収穫を手伝う事になった。
ホイップが桃を素早く採り、ベアトリーチェが持ってきていたアイスボックスに桃を入れていく。
このアイスボックスはエルがアイスタイガーの時に買ったものだ。
「俺達の桃も入れてもらって良いか? 匂いで魔物が寄ってきそうだ」
「ええ、勿論です」
ベアトリーチェは笑顔でアイスボックスを差し出す。
その中に自分達が採ってきた桃を入れ、桃の収穫を手伝っていく。
根っこでの攻撃は美羽が剣で防ぎ、魔物は雑魚を専門に倒している人に任せている。
桃が集まると、ホイップのバニッシュにより桃の木はその動きを完全に停止させたのだった。
「魔物が焦がれるほどの桃なのだぞ? さぁ、行くのだー!」
「解りましたから、背中で暴れないで下さい」
棒と落ちてきた桃を入れるタモを持ったマナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)をクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)がおんぶ紐で背負っている。
その身長差からまるで、赤ちゃんをあやすお父さんの様に見えなくもない。
そのまま動いている桃の木へと近付くが、退治しきれていないパラミタオオカミやコウモリがおり、桃の木もあっちこっちと動いてなかなか難しい。
「早く近づくのだー!」
「無茶言わないで下さい!」
桃に目がくらんでいるマナに押されているクロセルだった。
「しょうがないですね。手伝いますよ」
背後からスプレーショットを放ち、周りにいた魔物と根っこを破壊したのは緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)だ。
「おおー!」
2人とも声を揃えて歓声を上げた。
そのままバーストダッシュを使用し、間合いを一気に詰め氷術で残った根と幹を凍らせてしまった。
「さて、一掃は出来ました。収穫を……って、素早いですね」
気がつくと、クロセル達はもう桃の実を採り始めていた。
「……ごくり」
「なんか冷たいものが首に……って、それマナさんの涎じゃないんですか? もしかしてもう食べてません!? 食べてますよね!? 涎じゃなくて桃の汁ですよね!?」
「う、うむっ?」
早速、収穫出来た一番桃を口に頬張りながら、マナは果汁のたっぷりついた自分の手を見る。
そのまま手はクロセルのマントに行き、果汁はマントに素敵な香りを施した。
「……それって、まずいんじゃないですか? 魔物が寄ってきますよ?」
見ていた遙遠が2人に声を掛ける。
「な、な、なっ!!」
「ひゅ〜」
「口笛モドキで誤魔化さないで下さい!! って、魔物が本当に寄って来ましたーーー!」
魔物が美味しそうな匂いにつられ、涎を垂らしながらにじり寄って来ていた。
「クロセル、桃がまだ足りない」
「そんなこと、言ってる場合じゃないじゃないですか!!」
「やれやれ……」
結局、襲われるクロセル達を遙遠が護衛しながら桃を収穫していく事になったのだった。
「貴重な桃をこっそり収穫してやろうと思っていたのに……何なのよこの騒ぎは。しょうがない……カーラ、しっかり寛太を守りなさいよ」
「桃の収穫宜しくね」
伊万里 真由美(いまり・まゆみ)は鳥羽 寛太(とば・かんた)から収穫用にと渡されたマントを袋状になるように結びながら言う。
「真由美さんの指示ですからね、守りますよ」
カーラ・シルバ(かーら・しるば)はそう言うと寛太の箒の後ろにまたがった。
それを確認すると、寛太と真由美はそれぞれの箒を木の上空へと向かわせた。
木の真上へと到着すると、寛太は火術を手に留まらせ木へと挑発をする。
見えているのか、木はその挑発に乗り枝を寛太とカーラへと集中させた。
素早く飛んでいるコウモリは桃が危険にさらされている事実を察知し、2人の箒へと群がってきた。
「こんなコウモリなど超高性能最新型機晶姫の相手じゃないです。ホントです」
「そっか、じゃあ宜しくお願いしますね!」
カーラはツインスラッシュを連発……しようとするがSPが足りず、2撃で打ち止めとなった。
「大丈夫です。ナイフ投げ的な機能も搭載していますから、100%の命中率です。ホントです」
「凄いですね!!」
寛太はカーラを褒めながら、箒を器用に操り、枝攻撃を何とかかわしていく。
「えい!」
持っていたカルスノウトを投げるが、コウモリには当たらず、空を切るだけとなった。
「む……今日はメンテが十分ではないようです。でも、私にはこの拳があります。ロケットのように飛ばせます。ホントです。……要メンテですが」
「うん、なら今度宜しくお願いしますね」
こんなやりとりの2人をよそに、自分に攻撃がこない真由美は桃を順調に集めていた。
「楽勝ね」
地面近くまで行くとオオカミが真由美を狙って牙をむいてくるが、ホーリーメイスで殴りつけて対処していた。
「ま、こんなもんね。そろそろ戦線離脱といきますか」
ある程度桃を収穫すると2人を放置して森の中へと消えていった。
「桃は十分収穫出来た頃でしょうか。……あれ? 真由美さん?」
キョロキョロと辺りを見回すが、真由美の姿はすでにどこにもなかった。
森の中へと逃げた真由美は1本の針葉樹の枝に腰かけ、桃にキュアポイゾンを試していた。
「変化なしみたいね」
性質が変わらないのを見て、持ってきた桃を全て平らげたのだった。
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