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リアクション
3.底なし沼
水面に、青と碧のコントラスト。
誤って飛び込んだ小虫は足を取られて水中に沈み、波紋は岸へと広がって行く。
ここは高層ビルに囲まれた、底なし沼。
休日ともなれば親子連れでにぎわう、オフィス街のオアシスだ。
沼に注目しよう!
比較的広い沼の上には橋があり、2車線であることから「御神楽777号線」の架橋であることが分かる。
沿道の歩道や、湿地帯の遊歩道や、高層ビルの窓という窓からは、観光客や休憩中の会社員達が物珍しそうに眺めている。
そこに――レッサーワイバーンが、優雅に降り立った。
集団はレッサーワイバーンを先頭に突っ込んでくる。
さあ! 第2ポイント「底なし沼」での攻防が、始まるぞ。
■
イルミン生の本郷 涼介はレッサーワイバーンから降り立つと、遊歩道から呪文を唱え始めた。
ひゅるるっ、と指先から吹雪が舞い始める。
それは、『ブリザード』の呪文では?
「いかにも!
イルミン生優勝のため、他校生はここで葬り去るのだ!」
涼介は『ブリザード』を、やっ! と水面目掛けて投げつけた。
上に乗ると割れるような固さに固めて、沼の底に沈めるらしい。
「では、さらばだ!」
涼介は飛び立つ。
しかし参加者達は橋の上を走行したため、罠に掛かる者は結局1人も出ないのであった。
レッサーワイバーン集団が通り過ぎ、僅差で小型飛空艇集団がやってくる。
実力行使に出たのは、天貴 彩羽(あまむち・あやは)&天貴 彩華(あまむち・あやか)のお嬢様姉妹。
マリンブルーのライダースーツで参戦だ!
「アウタナの戦輪で、一網打尽よ!」
ギュルルンッ!
アウタナの戦輪は生き物のように動き回り、周囲の乗り物を次々と破壊する。
「サイコキネシスのおまけつきよ!
スキルなしには逃れられないわ!」
たまらないのは、「禁猟区」や「殺気看破」等の用意をしていなかった参加者達だ!
レッサーワイバーン集団と、小型飛空艇集団と、後続の箒系集団が巻き添えを食らった。
美鷺 潮(みさぎ・うしお)は小型飛空艇の制御系統をやられた。
「操縦経験が3度しか無いからかしら?」
火術を一瞬だけ噴出…推力制御を試みてみるも、これは手遅れ。
日傘を片手に、あ〜れ〜と底なし沼へまっさかさまだ。
鬼崎朔もレッサーワイバーンの手綱を切られて制御不能となり、沼へと落ちて行く。
「げ、落ちるううううううううっ! 助けてですっ!」
スカサハ、アテフェフは小型飛空艇をそれぞれやられて、緩やかに急降下。
遊歩道に避難した。
「はあ、朔様はどこでありますか?」
「大丈夫! オレイの索敵機能は無事みたいだから
すぐに見つかることでしょう」
ルツ・ヴィオレッタは折れた空飛ぶ箒ごと、湿地帯に落ちて尻もちをついた。
腰に手を当てて。
「痛つつつぅーっ!
だがイチルは残っておるようだ、よしとしようか」
火村 加夜(ひむら・かや)は「六蓮ミサイルポッド」で撃墜されてしまった。
のろのろと飛んでいたにもかかわらずだ。
ノア・サフィルス(のあ・さふぃるす)を捜す。
「だって、ノアってば。
寄り道ばかりなんですもの!
ほら、ノア! レースは終わったから、失格者席に行きましょう!」
神崎 輝(かんざき・ひかる)はシエル・セアーズ(しえる・せあーず)の『禁猟区』により、彩羽の攻撃を回避した。
「何てことでしょう! 爆炎波で応戦です!」
だがそれは、彩華の殺気看破に見抜かれて回避されてしまう。
終夏は『風の鎧』で守られたが、落ち葉と順位は落としたようだ。
当の妨害をしかけた彩羽達は、彩華の強引な運転で順位を上げ、とうに沼地を去っている。
結局潮と朔は、山葉 涼司(やまは・りょうじ)の側近が手配したレスキュー隊によって救出された。
「よかったぞ! 出番があって。
大丈夫か? 2人とも」
茜は救急箱を持って2人の下へ駆けつける。
だが、朔の口元は微妙に笑っていた。
「ええ、だって! これで、晴れて『失格』になれましたからね、私達」
なるほど! 失格は狙い通りでしたか……しかも、その手にあるは「しびれ粉」の小袋。
「山葉用」と書かれてある。
これはひょっとして山葉校長、大ピンチでは!?
■
……そうして多少の障害はあったものの、集団は底なし沼を後にして行った。
トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)が操縦する小型飛空艇オイレの低空飛行により、今のところ地上組の順位に目立った変動はない。
これが、その後のレース展開にどのように響いて行くのか?
レッサーワイバーン圧倒的優勢なまま、ヤマハGPは最後の難関「急なこう配の坂道」へ!!
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