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第1回 ヤマハGP~空京・秋の陣~

リアクション公開中!

第1回 ヤマハGP~空京・秋の陣~
第1回 ヤマハGP~空京・秋の陣~ 第1回 ヤマハGP~空京・秋の陣~

リアクション

 4.急なこう配


 長い直線の果てに、長い急なこう配の坂道。
 坂道の入り口には、『御神楽777号線商店街』の大きなアーチが。
 歩道に沿って、小売店がぎっしりと並んでいる。
 坂の頂上からは遠くに空京大学が、天気の良い日には御神楽講堂の屋根が見渡せることでも有名だ。
 
 坂の手前――長い直線状の一角に、2つの影。
 上空に、近道をしてきたらしい、報道用の「小型飛空艇」がのんびりと飛んでいる。
 
 集団の姿が見えてくる。
 レッサーワイバーンの姿が見える。
 レッサーワイバーン、圧倒的リードの展開のようだっ!
 
 さあ! 第3ポイント「急こう配の坂道」での攻防が始まるぞ!
 
 ■

「さ、私達は、透乃ちゃん達の優勝のため、ここで気張るぞ!」
「ええ。そうでないと、いつまでも陽子ちゃんが塞ぎこみっぱなしだしね」

 ふふ、と逆光の中、直線コースの影は笑った。
 霧雨 泰宏(きりさめ・やすひろ)月美 芽美(つきみ・めいみ)の2人だ。
『いつまでも、弱い私じゃいられないから……』、なーんちゃって!」
「殺る順番は、竜系>攻撃能力を持った乗り物>陽子さんよりレベルが高い奴>その他、だぞ! わかってんのか? 芽美さん」
 泰宏は小型飛空艇をホバリングさせる。
 手にはスナイパーライフル。
「あとは近づく奴も、でしょ? 泰宏君」
 芽美は巨獣狩りライフルで、地平線を狙う。
 ドガンッ!
 ひゅるるる〜、と落ちて行くのは、先頭にいたレッサーワイバーンの「ハル」。
 防御スキルを行使しなかったイチルは、こうしてあっけなく幕を閉じたのであった。
 さらに火器は強すぎて、周囲の商店に少なからずの被害が出る。
「さ、この調子で。次行くわよ! 泰宏君」
「……容赦ないよな、芽美さんって。
 私は反撃されないよう、距離をとるぜ!」
 
 その様子を、空から見ていた者がいる。
 中継レポーターの空京稲荷 狐樹廊(くうきょういなり・こじゅろう)だ。
「や、かの女の火器は、かような町中にふさわしいものではないですね。
 空京の平和を乱す行為、と取られかねませんぞ!」
 彼は自らの指名に従って、芽美を排除しにかかった。
 同じ頃、泰宏によって狙われた2番手の本郷涼介も「殺気看破」で交わした後、応戦体制をとっていた。
「こんな町中で私に挑んでくるとは、なかなかの度胸だ。
 どれ、ひとつ遊んでやろうか?」
 正面切って対峙すれば、それは総合力で狐樹廊と涼介が勝つ。
 だが泰宏は、通常の攻撃では届かぬよう距離をとっているぞ!
「ならば、『炎の聖霊』で我が身を守りつつ、攻撃魔法で対抗だな。
 相手は小型飛空艇。
 いくら逃げようと、小細工なしにレッサーワイバーンには勝てまい」
 という訳で、泰宏は接近された涼介に天のいかづちで、芽美は狐樹廊の爆炎波により、退散した。
 やれやれと狐樹廊達もまた、各々の立場へと復帰する。
 だから沿道に隠れた芽美と泰宏の会話までは、注意をはらえなかったようだ。
「結果オーライ! だわ」
 はっ、と芽美は鮮やかに笑った。
「先頭の足止めは出来たし。
 透乃ちゃん達も、ほら! 優勝圏内に入ったみたいだしね!」
「ああ、そのようだな」
 傷ついた体を起こして、泰宏は車道を見る。
 レッサーワイバーンの涼介に迫る勢いで、透乃のヘリファルテと陽子のオイレが追い上げていた。
「これで、優勝……最悪でも準優勝は頂きだな!」

 ■
 
 さて――。
「妨害」を排除した選手達は、第3の難関たる「急こう配の坂道」に差しかかったようだ。
 
 その様子を、ザッと見渡すと。
 
 優勝を目指して、黙々と坂を乗り越えたり。
 道や『御神楽講堂』の屋根を眺めて、カンナ様に思いを馳せたり。
 
 そこは「山葉GP」だけに、様々な目的の選手達がいるようだ。
 
 ■
 
 国頭 武尊(くにがみ・たける)は坂の頂上で軍用バイクを止めていた。
 辺りの風景を、サイドカーに乗せたデジタルビデオカメラで撮影。
 秋の空京を満喫したようだ。
「ま、あの環菜が作った道だろ?
 ついでに何か仕掛けでも写りゃ、おもしれえじゃねえの!」
 
 姫宮 みこと(ひめみや・みこと)はレースクイーン姿で沿道に立っていた。
「最後の上り坂で、馬の『敦盛』にパワーブレスとヒールで支援するのです!」
 まもなく敦盛に乗った本能寺 揚羽(ほんのうじ・あげは)が現れる
 揚羽が目を剥く。
「なんじゃ! さる。
 その格好は!!
 ん? 敦盛、なぜ元気が出ておるのだ!?
『れえすくぃん』とは、馬の元気が出るスキルなのか?」

 終夏は登りきったところで「荒ぶる力」使用。
 気合を入れ全力疾走に入った。
「これで、いままでの遅れを挽回さ!」

 アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)はサンタのトナカイ「スズちゃん」を駆って、下り坂――何も考えずに全力ダッシュで行く。
「よーしスズちゃん、ラストスパートよ!
 風になれ!」
 彼女達の姿は、大空の点となって行く――。

 ■
 
 坂道での攻防は終わった。
 最後の直線へと移る……。