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第1回 ヤマハGP~空京・秋の陣~

リアクション公開中!

第1回 ヤマハGP~空京・秋の陣~
第1回 ヤマハGP~空京・秋の陣~ 第1回 ヤマハGP~空京・秋の陣~

リアクション

 5.閑話休題


 ……ここで、レース以外の話題も取り上げて行くとしよう!
 参加者達がレースに夢中であった間に、会場では一体どんなことが起きていたのだろうか?
 
 
 □スタート地点
 
 サクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)は、「ヤマハGPのレースネコクイーン」に名乗りをあげた。
「“秋葉原四十八星華”がネコ座の私としては、いまが売り時ですからね! ブロマイドだって何だって売っちゃいますよ!」
 はぁーい、とファン達の呼び掛けに笑顔で応える。
 その衣装は、この日のために用意したセパレートの特製水着。
 よくよく見ると、胸元には秋葉原四十八星華の名前に、蒼空学園校章にネコミミを付けているではないかっ!
 そして過激なポーズをリクエストされてホイホイやろうとし、マネージャーの白砂 司(しらすな・つかさ)から厳重注意を受けていた。
「今日びのトップ・アイドルたるもの!
 そうそう自分を安売りしてはならんからな!!」
 とはいえ、サクラコはこの一日で、「ヤマハGPのレースネコクイーン」としての知名度を上げたようだ。
 
 羽瀬川 まゆりは、審査員席に座る山葉涼司と花音・アームルート(かのん・あーむるーと)をGPへの参戦を勧めていた。
「校長のあなたが参加してこそこの、GPよ。
 レースを最高のイベントにしてこそ、御神楽環菜元校長の後を継いだと言えるんじゃないかしら?」
「環菜なら、最高のイベントにするため、蒼空学園生なら自分で盛り上げて、優勝しろ! と命令するだろうな」
 涼司の対応は冷静だ。
「では、アナタは?」
 まゆりは焦って花音に振ってみる。
「普通の花嫁が主人のいない家を守るなら、剣の花嫁は?
 そう! 主の道を切り開くものでしょう!」
「昔の涼司さんならそうですね。
 けれど、いまの涼司さんは、違いますから!!」
 花音はきっぱりと言い切る。敬愛の眼差しを向ける。
 彼等はそのまま公用車へ乗り込み、他の中継ポイントへと移動してしまった。
 まゆりの狙いは、いまの涼司達には通じないようだ。
「ふん、ふふん、何よ。
 校長になったとたんに、急に賢くなっちゃって。
 そんなの、メガネじゃなぁーいっ!!」
 
 そして彼女自身はその後ヘリファルテで参戦し、鬼崎朔の計略に引っ掛かって撃墜されたのであった。
 
 □蒼空学園・校長室
 
 樹月 刀真(きづき・とうま)漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)は蒼空学園の校長室で、仕事の準備に取り掛かっていた。涼司が帰ったらすぐ、仕事に取りかかれるようにするためだ。
「あの涼司が、環菜より優れているはずもないからな」
 ふうと息をついて、書類をそろえる。
 時折校長席に目を向けるのは、別の誰かさんの思ってのことか?
「いや、この書類はこっちだったかなって……」
 机上に手をついて、頭を振る。
「……ああ、環菜によく注意されてたよな。これは書棚のだ」
「刀真、無理しないで……」
 月夜は気遣うように、彼に目を向ける。
 着信音――月夜の携帯電話。
 メールを確認してから、作業にかかった。
「レースのこと。
 誰でもネット観戦出来るよう、涼司から録画や中継用の設備、ホームページ等を手配する許可はもらったわ。
 今頃は、現地へ派遣されたカメラマンを通じて、ネット上に映像が流されているはず」
「すまないな、月夜」
「私は『根回し』と特技『経済』を使って経済関係の準備にかかるわ。
 環菜の真似でも、やらないよりはましでしょ?」
 でもやっぱり難しかった、と溜め息。
 そして2人は協力して、「ヤマハGP」にかかった莫大な経費を集計するのであった。
 
 
 □並木道
 
 リンダ・ウッズ(りんだ・うっず)は蒼空学園生を応援しつつ、S字カーブの並木道に碁盤を置いていた。
「カンナの追悼・青空囲碁教室会場」と立て看板がある。
 ネットで集まった学生達と、碁をうつようだ。
「おう! まあ囲碁っと」
「…………(しらっ)」
 ……という開会宣言の後、レースクイーンの格好で碁盤の前に座っていた。
「箒、行け!
 自転車、行け!
 蒼学、負けんなよおおおおおおおおおおおっ!」
 とん、と碁を打つ。
 はらはらと枯れ葉が落ちてくる。
 ついでに、枝と太い幹も……ん? 『太い幹』?
 妨害された選手の小型飛空艇がぶつかり、木が倒れてきているではないか!
「何じゃ!
 こんの忙しい時に!
 ふっざけんなよおおおおおおおおおおおおおっ!」
 そしてリンダはひょいと木を避けると、妨害者に向かって碁石を投げるのであった。
 碁盤は壊れてしまったが。
「ふん、涼司のレースじゃけん、涼司に請求したろ。
 カンナ様への『香典』代わりにもなるけん、それがええじゃろ!」
 
 
 □底なし沼・橋の歩道
 
 リアトリス・ウィリアムズ(りあとりす・うぃりあむず)ベアトリス・ウィリアムズ(べあとりす・うぃりあむず)は涼司の親友として、選手達の給水を手伝っていた。
 リアトリスは道の右側から、ベアトリスは道の左側から。
「お疲れ様でしたー♪
 はい!」
 ニッコリとして参加者にコップを差し出す。
 その飲み物の種類は、以下の三種類。
 
 リアトリス側――ブレンドティー・緑茶・ギャザリングヘクス(味は激甘&激辛の二重不協和音)。
 ベアトリス側――ミルクコーヒー・冷たい水・ギャザリングヘクス(味はすごく苦いとしょっぱいの二重不協和音)。

 
 ……それって、ギャザリングヘクスは「ハズレ」ってことですか?
「うん。だから僕達、絶対選ばないようにって!」
「一生懸命、祈っているんだよ!!」
 2人は異口同音に、愛らしく答える。
 しかし悪意のない「いたずら(?)」にはスキルも効かないようで。
 参加者達はなぜか「ギャザリングヘクス」を選んでは苦悶した後、魔力を高めて去って行くのであった。
 
 
 □急こう配の手前・商店街入り口
 
 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)は、たまたま公用車で観戦に来ていた涼司一行と遭遇した。
「よお! 山葉新校長!」
 片手を上げて近づくと、むっとした様子で花音、その後ろからわらわらと黒服共が現れた。
 リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)アストライト・グロリアフル(あすとらいと・ぐろりあふる)といった面々の顔も見られる。
 涼司の護衛のついでに、沿道警備に救護の手配、リタイア組の回収用意なども行っているようだ。
「へえへえ、それは感心なこって。
 ところで、涼司」
 エヴァルトは傍若無人に近づくと、涼司に質問した。
「『ヤマハGP』のことだけどよ。
 どうして急に、レースなんか開いたのさ?」
「あるものだから使った。
 経営者としては、当たり前のことだろう?」
 意外そうな顔をしたのは、涼司の方。
「まあ、環菜ならな。でもおまえは……。
 ……ん? 待てよ。
 この突拍子の無さ、ハチャメチャさ、流石は幼馴染みということかっ!!」
 おどけた調子で決めつけて、エヴァルトは黙った。
 目が違う、と思う。
(こいつ、いま、ひょっとしてすげー「独り」なんじぇねえの?)

 ドゴオッ!

 コースアウトしてきた選手がエヴァルト目掛けて吹っ飛んできた。
「よし! 俺に任せろおっ!」
 ……言ったきり、彼は吹っ飛んだ。
 かの選手を両腕に抱きとめたまま。
 涼司が目をむいてみている。
「だ、大丈夫だ! 涼司。
 直、パートナー共が帰ってくるからなああああああああああっ!」
 
 だが、事はそううまくは運ばないもんだ。
 
 パートナーの1人・合身戦車 ローランダー(がっしんせんしゃ・ろーらんだー)が買い物から戻ってくる。
「はあ、ここにお目当ての品はないのでありますか。
 じゃ、壊れた乗り物の搬送でもするであります!」
 そこへエヴァルトがすっ飛んでくる。
 ローランダー、受け止めの姿勢に入ったぞ。
「大丈夫であります!
 エヴァルト様、自分がしっかと受け止めるであります!
 ……って、あ〜れ〜!!」
 ローランダーは受け止め損なってしまった。
 自身もひっくり返って、通行人に助けを求めるが、重量過多で不可能のようだ。
 
 ロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)が通りかかった。
 けれど、彼女は何やら不機嫌そうだ。
「機晶エネルギー伝達用バイパスの修復部品……あ、衝撃吸収剤もストック少ないんだっけ?
 ヤマハGPのせいで、お店に行けなかったよ!
 こんな辺鄙な商店街じゃ、置いてある訳ないよね?」
 総ては、山葉くんが悪いんだ!
 がおっと怒鳴る……という訳で、エヴァルトは放っておかれた。
「えーい、腹の虫がおさまらないや!
 ラジエータ、調子悪いから、山葉くんに熱風でも吹き付けちゃえ! それ!」 
 だが、それはアストライトの機転によって止められる。
「よお、ねーちゃん。
 昼間っから、商店街で物騒なことはやめようぜ!」
 黒服軍団も立ちふさがって、盾となる。
 校長たる涼司にちょっかいを出すのは、至難の技のようだ。
 
 パートナー2人に見捨てられたエヴァルトは、更にふっ飛んでゆく。
 最終的に商家の塀に激突し、通りかかったミュリエル・クロンティリス(みゅりえる・くろんてぃりす)に助けられた。
 彼女はレースを真面目に応援しつつ、怪我人にヒールを掛けていた。
「もう! お兄ちゃんってば!
 そんなところで、1人で遊んでないで!
 え? 助けて欲しい?
 いいですけど、代わりに……『お嫁さん』にしてくれます?」
 
 ……エヴァルトはトドメを刺されて、気絶したそうだ。
 気絶した彼に、ジュースを売りに来た宙波 蕪之進(ちゅぱ・かぶらのしん)が声をかける。
「おーい、あんた!
 こんなところで寝ていると、山葉に唇奪われちまうぞ!
 えっ? キスは賞品だから大丈夫???」

 ……以上。
 閑話休題の皆様、お疲れ様でした♪
 
 ■
 
 そうこうしているうちに、レースは最後の直線へと突入だぞ!!