リアクション
■□■ 東京の結婚式場。 本日行われる式の一つに、 ・永井家・南條家 挙式 と書かれていた。 「おっかしいのよねー」 託のパートナー、アイリス・レイ(あいりす・れい)は未だに信じられなかった。 なぜ、託が南條 琴乃(なんじょう・ことの)と結婚する事になっているのだろうか。 「平凡なサラリーマンとOLの結婚式、何が悪いんだよ」 と託は嘯いているのだが、本人も信じられなかった。 託が10年以上琴乃に片想いだったのは事実だ。 しかし、つい最近まで琴乃と託は単なる友人関係であり、それ以上では一切ない。 琴乃が婚約したという話を聞いた瞬間、軽い絶望感を感じたような記憶もある。 なのに、よくよく考えてみると“琴乃と結婚するのは自分”だったのである。 「シャキッとしなさいよ!」 とアイリスは託に発破をかける。 「琴乃が結婚してくれるなんて、これ以上の幸運ないんだよ? ほら、さっさと支度しないと遅れるわよ」 「遅れるわよぅ!」 アイリスの娘にもドヤされる。 「分かったよ。でも、それにしても信じられないんだよねぇ」 ■□■ 永井家と南條家の結婚式が始まった。 「ふう、どうにか間にあったよぉ」 雫澄は結婚式に飛び込んで参加した。 「遠くから来てくれてありがとう!」 ウェディングドレス姿で満面の笑顔の琴乃が声をかけてくる。 その隣でガチガチいなっている託の姿を見ていると幸せな気分になる。 二人は神父の前で愛を誓いあおうとしていた。 その時である。 式場内が急に騒がしくなった。 いや、式場だけではない。式場の外も同じようだ。 何かのニュースに皆騒然となっているようだ。 雫澄は外に飛び出した。軍人としての勘が異常事態と告げていたのだ。 外に出ると驚くべきニュースが目に入った。 「宇宙が急速に収縮を始めている!?」 ビックバン以降、膨張を続けていた宇宙が急に収縮を始めたというのだ。 あと数ヶ月もしない内に何故か地球を中心として宇宙は消滅するという。 「高峰雫澄。あなたと宇宙の間にフラグが立ったのです!」 そこに現れたのは平和維持軍のスポンサーたち、いずれも雫澄に対して恋愛感情を抱いている世界中の実力者であった。 「あなたに想い焦がれている宇宙は少しでも近付こうとしているのです」 「……あのサハラ砂漠の塔は」 「そうです、フラグです」 収縮した宇宙は雫澄と共に新たな宇宙として再生するのだという。 あの塔は宇宙とフラグを立てるための雫澄の恋愛力の増幅装置だったのだ。 今生で雫澄と結ばれることのが無理と知った者たちはならば人間でない圧倒的な存在と結ばれた方が良いと考えたのだ。 託が琴乃と結婚出来たのも魂の片割れである雫澄の力の影響であろう。 「そんなバカな! ……宇宙と結ばれるなんて」 だが、雫澄にはなすすべがなかった。 ■□■ 東京、秋葉原。 その一角にある事務所が爆発した! しかし、その瓦礫から立ちあがった一人の少年がいる。 「お前が【大MS王 オキマタリク】だな! 2031年の悪の支配者っ!」 事務所を爆発させたのは風祭 隼人(かざまつり・はやと)であった。 秋葉原事務所を爆破してオキマタを爆殺しようとしたのだが、徒労に終わったのだ。 「そうだよ。こんな事で僕を倒せると思ったのか! ムダだよ。この世界はなすみんと合一した宇宙として再創造されるんだ。 その決定は覆りはしない」 「そんなことはないよ!」 事務所の上に転移してきた乗り物に乗っていたのは湯島 茜(ゆしま・あかね)だ。 「悪魔の兵器●によって無茶苦茶になったこの10年後を救うために、 このタイムマシンを発明したんだから! ……好きなようにはさせないよ!」 「ウゼえんだよ、何が発明だ!」 オキマタの手から光線が飛びタイムマシンに被弾。 半壊したタイムマシンから何かが落ちる。……それは。 「みんな、空京万博を、よろしく、ね……」 空京 たいむちゃん(くうきょう・たいむちゃん)だった。 「た、たいむちゃーーんーーーーーっ!!」 風祭は絶叫し、オキマタは不敵に笑った。 「タイムマシンなんていってもなあ。 その実たいむちゃんを積んだだけの小型飛空艇」 「……違うもん、アクション締切の時は空京万博は発表されてない……」 「それをどうにか出来るから、俺はオキマタなんだよ!」 「ひいっ!」 威圧された湯島茜は小型飛空艇で逃走した。 秋葉原の東、文京区湯島方面である。 逃げなければと直感したのだ。だが、 「逃すかよーーっ!!」 「ぎゃああっ!!」 茜は見えない力に引き裂かれて四散した! 湯島中に茜の血が降り注ぐ。 「“湯島を茜色”に染めやがったか。 【名は体を表す】とはこの事だよなあ」 「なんて残虐な、なんて残虐な!」 「風祭、今なら俺の部下になる事を認めてやってもいいんだぞ?」 「ほ、本当なのか!? 命は助けてくれるんだろうなっ」 「ああ、本当だ」 「だが断る。 この風祭隼人の最も好きな事のひとつは自分で強いと思っているやつに『NO』と断ってやることだ……」 「生意気な! ならばさらなる恐怖を味あわせてやる。やれっ!!」 「油断したな」 風祭はイケメンの剣の花嫁に羽交い締めにされた。 ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)だ。 「こいつはルカルカのパートナーじゃ……」 「そうだよ、良く知ってるな。俺のママをよおっ!」 「おまえの、母親、だとお!!」 「俺はルカルカの四男として生まれ、地獄の特訓の末にダリルの継承権を勝ち取った! ……ダリルは今や俺の剣の花嫁なんだよっ!!」 この時、風祭は初めて絶望と言う言葉の意味を知った。 オキマタが幼い姿をしていたのは ルカルカ・ルー(るかるか・るー)の子供として生まれていたからだ。 「うまいことやってるわね。 さすが、最終兵器の子供は最終兵器だね♪」 息子の戦いを見に、ルカルカがやってきていた。 この状態を異常と思わないという事は彼女も●の影響を受けているのだろう。 「オキマタさんに従って神になれば毎年ろくりんぴっくを開催できるネ」 666人の地球人と契約に成功したゆる族、 “ろくりんくん”ことキャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)も風祭を外道に勧誘する。 (こ、こんな光景夢に違いないわっ! 早く帰って寝ないと) キャンディスのパートナー茅ヶ崎 清音(ちがさき・きよね)は悪夢のような展開を見て、全てを夢として終わらせよう思って帰る事にした。 結果として清音の願望は現実となる。 夢ではないのだが、起きた頃には全ての決着がついていたからだ。 オキマタは雑魚の清音の事など気にもかけず、風祭を脅した。 「なんなら、 シナリオ参加してないお前のパートナー人質にとってもいいんだぜ?」 味方は一人もいない状態。 だが、風祭は笑った。 「俺は史上最高の冒険者になる男だ! ……これぐらいの困難、想定済だ」 風祭はダリルの手を一瞬振りきり、制服をはだけさせた! それを見て驚愕したのはオキマタだ。 「風祭、それは!」 風祭は体に大量の●を巻きつけていたのだ! 「これだけの●が一気に爆発したら、 さすがのオキマタ様でも耐えられないだろうな」 「や、やめろっ! そんな事をしたらどんな混沌が起きるか、分かってるのかっ!」 「分かってるよ! でも、これしか方法がないのよ!」 死んでいたはずのたいむちゃんが起き上ってオキマタに取りつく。 四散した茜は偽物で、本物はたいむちゃんの着ぐるみの中に入っていたのだ。 茜はタイムマシンによって、何度もこの戦いを経験していた。 結果、この方法でしかオキマタを倒せないという結論に達したのだ。 もちろん、たいむちゃん着ぐるみの中にも●は満載である。 そして風祭もオキマタに抱きついた。 だが、オキマタはそれを見てニヤリとしたのだ。 「バカが、ゲームマスターに不可能なんかねえんだよ。 お前ら、それは●じゃない。 あい じゃわ(あい・じゃわ)の目玉だ!」 風祭と湯島は笑い返す。 「ああ、問題ない」 「あたし達が爆薬を仕込んだのはあいじゃわの目玉だもん!!」 「なにぃっ!!」 直後風祭達を中心に爆発が起きた。 秋葉原は吹き飛び、そこから出現した大量の●が空に消えていった。 ■□■ 秋葉原の外れにある教会で、清音は祈りをささげていた。 (世界は救われました。でも、それは私の夢だったからではなくて、 風祭様や湯島様などの英雄の手によって成し遂げられたものでした) オキマタと風祭・湯島の爆発直後、宇宙の収縮は止まり、元のように膨張を開始した。 また、ルカルカも正気に返り、 「今度こそ、“普通の子供”を育てないとね」 「誰と契約するかは俺が決めるからな」 と自分の本当の子をリーサルウエポンにしてダリルを継承するために帰っていったのだった。 ※二人とも秋葉原が爆発したぐらいでは死にません。 (何よりも……嬉しい事は) 清音は何故かキャンディスとのパートナー契約を解消出来た。 これほど嬉しい事はなかった。 そして清音は教会にふたつの墓を作った。 名もなき英雄たちの、墓を。 |
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