空京

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戦乱の絆 第3回

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戦乱の絆 第3回
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マ・メール・ロアセットの戦い

そこに、アーデルハイト達が到着する。
白砂 司(しらすな・つかさ)は、
ジャタ獣人族と歩む戦士として、戴冠式を成功させるため、戦いに参加していた。
「でかいな……」
ヘクトル達の搭乗するヴァラヌスは、ぶつかっただけで普通の人間なら死んでしまうだろう。
サクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)は、
ヘクトルを殴ろうとする。
(司君、ジャタの民の私よりジャタ好きなんじゃないでしょーか。
気持ちはうれしいですけど、難しく考えすぎるのは悪い癖ですよねっ)
「個人的な恨みはありませんが、目の前に立ちふさがるならしかたありませんよね!」
しかし、サクラコや司達の前に、
マッシュと迫のヴァラヌス、雄軒とバルトがヘクトルを守るように立つ。
「ここはあたし達が相手だ!
大将には指一本触れさせないぜ!」
迫が吠える。
雄軒とバルトも、生身ながら油断なく武器を構える。
「上等ですっ!」
サクラコやルイ、ナナ達は、応戦する。
イコンは強いが、各個撃破できればということである。

霧島 玖朔(きりしま・くざく)
ハヅキ・イェルネフェルト(はづき・いぇるねふぇると)も、ヴァラヌスに乗り戦う。
「コイツは最高じゃないか! シャンバラのイコンよりも強そうで気に入ったぜ」
キャノン砲と尻尾の振り回しで、玖朔は生身の学生相手に戦う。
「リンクス、油断は禁物です」
「わかってる!」
ハヅキが注意を促し、玖朔はさらに気を引き締めて戦闘に集中する。
相田 なぶら(あいだ・なぶら)フィアナ・コルト(ふぃあな・こると)も、
第七龍騎士団仮団員として、アーデルハイト達に対峙する。
(今回、アイシャさんが女王になる事がシャンバラの今後にとって良いこととは思えないし、
だからと言って寺院やエリュシオンに付くのも今までのこ事があったから少し難しい。
でも、第七龍騎士団のヘクトル団長は十二分に信頼できる人物だと感じた。
俺はこの第七龍騎士団で、彼の元で戦いシャンバラの今後について今一度考えてみたいと思う。
その為にも正式な団員になれるようしっかりと働かなければ。
こちら側に付く事は結果的に母校イルミンスールと敵対してしまう事になるだろう。
だとしても俺は俺の信じる物の為全力をもって戦おう。
今は敵対していても、
お互いがシャンバラの事を思って戦うならいつかまた分かり合える日が来ると信じて)
なぶらはそう考える。
フィアナは、アタッカー役として、ディフェンダー役のなぶらと協力し、歩兵相手に戦う。
「悪いですが手加減をしている余裕はありません、全力で行かせてもらいます」
フィアナの龍騎士のコピスが、サクラコをかすめる。
「実力差が……しかし、だからこそ燃えるというものですよね」
サクラコは体勢を立て直す。

鬼崎 朔(きざき・さく)
スカサハ・オイフェウス(すかさは・おいふぇうす)の姿を確認し、
ルイ・フリード(るい・ふりーど)は叫ぶ。
「なぜです! 雪だるま王国の皆だって、こうして朔さんと戦うことは望んでいないはず!」
スカサハは答える。
「朔様は……まだイルミンスールや雪だるま王国の皆様の事を大切に思われてるのであります!
ただ……一時期イルミンが塵殺寺院と手を結んだ事が許せなかったのであります!
……でも、もう戻るには遅いであります。
皆様……レールガンやミサイルで死にたくなければ、帰ってほしいであります」
「帰ってくれ!」
朔も叫ぶ。

激しい戦いの中、
同じ学生なのに、仲間なのに、という悲痛な叫びがあがる。
しかし、第七龍騎士団は戦闘をやめない。



そんな中、シグルズ・ヴォルスング(しぐるず・う゛ぉるすんぐ)が、
ヘクトルのヴァラヌスに躍り掛かり、則天去私を放つ。
その隙に、アルツール・ライヘンベルガー(あるつーる・らいへんべるがー)が、
光術を放ち、目くらましとともにヴァラヌスの足元をブリザードで凍らせる。
「このようなもの!」
ヘクトルは即座に離脱しようとするが、アルツールは言う。
「待て。少し話を聞いてもらおう」
ヘクトルはアルツールをにらみつけつつ、少しの間、静止する。
「地球人から見れば、神に将来を委ねるパラミタ人も主体性の無い蛮族に見える時がある。
だがパラミタ人も地域や個々人で考えや慣習はまるで違う。
自分達の文化に土足で踏み込まれれば、激昂し殺そうとしてくる者もいよう。
だからと言って、相手を殺して良い訳が無い。
それを分からずに地球を滅ぼすと言うのなら、
それは君のパートナーを殺そうとした者と同じ野蛮人と言わざるをえんよ」
「ならばなぜ、この要塞内部に入って狼藉を繰り返すのだ、野蛮人め!」
言い返すヘクトルだが、
風森 望(かぜもり・のぞみ)がさらに続ける。
「地球人を蛮族と蔑める程、エリュシオンの方々が高尚とは思えはしませんがね」
「なんだと?」
「事の善し悪しに関わらず、
出自も風習も過去も私を形成する大切な物……誇り持って名乗らせて頂きますわ、地球人、風森望と」
望は、アーデルハイトをかばうように立ちながら言う。
「嫁にすると言う理由で、
婦女子の捕獲命令を出すのは蛮族とどう違うのかお教え願いたいですね。
トップがソレでは国民も同様ですね」
アーデルハイトとの平和的な会談を行おうとしていた
ノート・シュヴェルトライテ(のーと・しゅう゛るとらいて)は、望の言い様に対し苦笑する。
「だから、どうしてそういう毒を……」
「彼が言ってるのはそういう事でしょう?」
「猛将スヴァトスラフ殿を倒した横山 ミツエ(よこやま・みつえ)は強敵。
5000の兵を送ることのどこが野蛮なのだ?」
しかし、ヘクトルは望の言葉に動揺した様子はなかった。
「ああ言えばこう言う! この屁理屈騎士!」
「望……」
地団太を踏む望にノートがツッコミを入れる。

緋桜 ケイ(ひおう・けい)は、ヘクトルの護衛を行っていたが、
ヴァラヌスが徐々に大破してきているのを見てヘクトルを気遣う。
(前回の戦いでヘクトルは傷を負ったからな……)

そうしていると、
茅野瀬 衿栖(ちのせ・えりす)
レオン・カシミール(れおん・かしみーる)とともに進み出て、ヘクトルに言う。
「たしかに、今西シャンバラとエリュシオンは戦争状態になっています。
人と人です。主張が違えば対立もしますし争いもします。
それは避けれないことです。
けれどそんな中で、戦場での医療活動を容認したヘクトルさん率いる第七龍騎士団、
騎士道精神あふれる武人なんだなって……思ってました。
だからこそ……非道な行為を繰り返す塵殺寺院と協力態勢をとったことが残念でなりません。
ヘクトルさん……それがあなたの騎士道なのですか?」
「第七龍騎士団が塵殺寺院と協力態勢をとったという話を聞いた時
正直、耳を疑った。
私もヘクトルに対しては
騎士道精神を重んじる武人だと認識していたからな。
ヘクトルは簡単に信念を曲げるような人物だとは思えん。
戴冠式阻止がそれほどまでに重大な任務ということなのか……?」
さらに、衿栖はケイにも言う。
「緋桜さん、塵殺寺院などと協力することが
ロイヤルガードとしてあなたが選んだ道なのですか?」
ヘクトルは、衿栖とレオンに言う。
「イアンは唾棄するべき人物だが、鏖殺寺院そのものが特別邪悪とは思えない。
なぜならば、鏖殺寺院もシャンバラと同じく地球の勢力の一部にすぎないからだ。
オレから見ればどちらもパラミタを脅かす敵、利用するだけ利用するだけだ」
「同じって……!」
衿栖に対し、ケイも答える。
「俺はヘクトルが信じられると思ったから、今ここにいる。
塵殺寺院と呼ばれている人達だって、いろいろな人達がいる。
シャンバラでもエリュシオンでも地球でも、
話し合うことができればいつかわかりあえないか?」
「いろいろな人が……?」
ケイの言葉を聞いて衿栖は考え込む。

「ヘクトル! 話を聞いてくれ!」
そこに、匿名 某(とくな・なにがし)結崎 綾耶(ゆうざき・あや)
神崎 優(かんざき・ゆう)水無月 零(みなずき・れい)がやってきた。
「この間のことは誤解だったんだ」
「俺達の話を聞いてくれ!」
某と優に、ヘクトルは冷たく言う。
「おまえたちとかわす言葉などない」
「じゃあ、こうしよう。1対1で決着をつけるんだ。
本当は話し合いで解決できたらいいけど、俺の言葉なんて信じられないだろ。
だったら、嘘がつきようがない手段で誤解を解かせてもらう」
某はその場で武装を解除すると、ヘクトルに一騎打ちを申し込んだ。
「ヘクトルは武器も魔法も使っていい。これで、誤解が解けるのなら」
「それでも信じられないなら、決闘の間、私が人質になります!」
綾耶は言う。
ヘクトルは、傷ついたヴァラヌスから某たちを見下ろしていたがやがて言う。
「いいだろう。もうこいつも使い物にならない。
直接勝負をつけてやろう」
ヘクトルはヴァラヌスから降りると、剣を抜く。
「後悔するなよ!」
斬撃が、某を襲う。
武装を解除した某の身体に、剣がぶつかり、血しぶきが上がる。
「くっ……」
はじきとばされた某は床に転がる。
「……何を考えている? こうなるのはわかっていたはずだ」
ヘクトルの言葉に、某はなんとか立ち上がろうとする。
「……あんまり、地球人をなめるな。蔑むな。そして……見損なうなよ」
「ヘクトル、あなたが地球人を憎むのは、
パートナーのことがあるからなんだろう?」
優の言葉にヘクトルは振り返る。
「部下思いのあなたにこれ以上憎しみで行動してほしくない。
憎しみは新たな憎しみを生むだけだ。
そして、ふたりとも過去を受け入れかつ乗り越えて己自身を変えなくては、
世界を変える事はできない。それに何時までも、今のままではいずれ利用されて終わるだけだ」
「知ったような口を……」
「優は卑怯なことをするような人間じゃないわ。
それに、勇気を持って自ら手を差し出さなければ、何も変わらないのよ」
零も真摯に訴える。
ヘクトルは沈黙し、それから口を開く。
「おまえ達の言っていることはわかった。
誤解があったようだな。だが、しかし……」
「いい加減にするのじゃ! これ以上無益に争ってはならん!」
そこで、アーデルハイトが出ていく。
「貴様は地球人を野蛮人と言っているが、であるならばどうしてシャヒーナと契約をしている!
契約(コントラクト)とはそもそも……」
そこまで言いかけて、アーデルハイトは口をつぐむ。
実際に、シャヒーナがいかに地球を憎んでいようと、
シャヒーナが地球人であることは間違いのないことである。
「オレは……」
シャヒーナの方を見て、ヘクトルは動揺する。
シャヒーナの表情は、ニカーブに隠れてわからない。
ケイのパートナーの悠久ノ カナタ(とわの・かなた)が、アーデルハイトに付け加えるように言う。
「確かに、おぬしが見た残虐性も、地球人の持つ性質なのであろうよ。
……だが、それは一面にしか過ぎぬ。
愚かな者がいれば、賢い者もいる。
凶暴さを見せたかと思えば、溢れんばかりの優しさを見せることもある。
臆病であり、勇敢。
時に嘘を吐き、時に誠を語る。
その多様性こそが、地球人なのだ。
シャヒーナをパートナーに持つおぬしなのだ。
本当は気づいておるのではないか?」
ヘクトルはシャヒーナを見つめて沈黙する。

その時。
斎藤 ハツネ(さいとう・はつね)大石 鍬次郎(おおいし・くわじろう)が、
シャヒーナを捕えようとする。
「ヘクトル、2回も壊せなかったの。悔しいの。
だから、シャヒーナお姉ちゃんを壊してあげるね」
ハツネは、耳まで裂けるような笑みを浮かべた。
「攻撃しようとしたら、人質を盾にするぜ? くくく……」
鍬次郎も笑う。
「やめろ!」
「お前らの思うとおりになんかさせるか!」
ケイと某が、身体を無理やり割り込ませる。
「卑怯な……許さん!」
「そんなことができると思うのか!」
朔やなぶらもハツネ達を包囲する。
さらに、玖朔達のヴァラヌスも、近づいて来ようとする。

「シャヒーナに手を出す者は許さない!」
怒りのヘクトルに、鍬次郎はハツネを連れて逃げる。
「潮時だ。また今度な」

すでに傷を負っていた某は、その場に倒れ込む。
「おまえのことを誤解していたようだ。すまなかった」
「お前、こうでもしなきゃ信用しないと思ってさ」
ヘクトルに、某は笑顔で言う。
「地球人にだって、友達を守りたいっていう気持ちくらいあるんだぜ」
ケイも言う。
シャヒーナは、その様子を見て、だまって考え込んでいる。

そうしている間に、マ・メール・ロアセットの火器管制システムが破壊された連絡が入った。
「このまま継戦するのは難しいな。マ・メール・ロアセットを一時撤退する。
……地球人のこと、少し考え直す必要があるのかもしれないな」
ヘクトルは命令を下し、契約者達を見回して言ったのだった。