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リアクション
「さぁ! そろそろ撃ってくるかな? 撃ってくるよね?」
桐生 理知(きりゅう・りち)は搭乗するイコンヒポグリフがメイシュロットに近づくにつれて、瞳をキラッキラに輝かせていった。
浮遊島の下半分は中心にそびえ立つ塔のように太く、そしてその表面には無数の穴が空いている。おそらくはその穴が砲口になっており、メイシュロットの防衛機能を担っているとみられていた。
「そうだよね〜、なんだか思い出しちゃうよね〜」
同乗する北月 智緒(きげつ・ちお)は瞳を閉じて、ウンウンと頷いていた。
「空に浮かぶ都市なんて、初めてシャンバラに来たときの事を思い出すよねっ?」
智緒は生粋の「ヴァルキリー」、シャンバラを訪れる地球人のような経験をしているはずがない。
いつもボケボケな理知に、ボケられる感覚を味わわせてやろうかとイジワルをしたのだが―――
「はっ!!!! 智緒は実は地球人?!!」
「んん? 何で?!!」
「なるほど、だから―――」
「だ……だから?」
「だから落ち着きが無いんだねっ!!」
「人のボケを悪口で返してきた?!!」
恐るべき処理をされた。決戦前の緊張感を和らげようとしたのだが、余計な疲労感に襲われるという結果になってしまった。
「さぁ、まずは、あの穴を狙いますよ!」
智緒の落胆などお構いなしに、理知は『大形ビームキャノン』を塔部中央の穴に向けて、そして掃射した。
敵の射程範囲にも入ったのだろう。理知の掃射をキッカケに、大量の砲弾が塔の穴から一斉に放たれた。
「智緒! 避けて!!」
「分かってるわ!」
砲弾を避けながら塔の周りを旋回してみた。思った通り、円柱八方、どこも大量に砲口となる穴が空いている。一見すれば死角はない。
「それなら底部を攻めるまでだ! 行くぜ! エレオ(エレオノール)」
「了解!」
ラビ・スカーレット(らび・すかーれっと)の判断にエレオノール・ベルドロップ(えれおのーる・べるどろっぷ)も賛同した。巨大生物型イコンリディを降下させて塔の底部を見上げたとき、そこから人型の巨大機兵が射出されるのが見えた。
「あれは……イコンですか?!!」
「そのようだな。ん? エレオ?」
「だ、大丈夫。少し驚いただけ」
覚悟はしていた。しかし本当にザナドゥのイコンと戦うことになるなんて。
「オレたちの手で、防衛機能を沈黙させるんだろ?」
そうだ。エレシュキガルに『クル・ヌ・ギ・ア』を発動させないためにも、出番を奪う位に活躍すると心に決めて出陣したのだ。
「大丈夫。行こう」
覚悟を決めてエレオノールは瞳を見開いた。
「相手がイコンなら、俺たちの出番ってもんだ! なぁ!!」
「…………えぇ、そうですね」
「なんだマイア! 気合いが足りねぇぞ気合いが!!」
そうは言われても。
斎賀 昌毅(さいが・まさき)の魂胆は分かっている。魔神 ロノウェ(まじん・ろのうぇ)軍奇襲時に受けたあの時の借り。復讐の対象であるはずのロノウェはいつの間にかこっち側ついている、その上もう一つの復讐の対象であるアルマインがこの戦場に出てくるのかも分からない。
悶々から放棄、そして発起といった所だろうが、結局の所は『ただの八つ当たり』―――
「あん? 何か言ったかぁ?!!」
「いえ、何でもありません」
八つ当たりだろうと何だろうと、怒りが力になるのならそれで。そんな風に楽観視していたマイア・コロチナ(まいあ・ころちな)だったが、昌毅が操るイコンフレスヴェルグは『大形ビームキャノン』一発で、ザナドゥのイコンを爆砕してみせた。
「え……えぇっ?!!!」
いくら何でも一撃で撃破するなんて。『大形ビームキャノン』もフレスヴェルグの力を見くびるわけではないが、いくら何でも威力がありすぎるような……。
「あんな張りぼてなんかに俺が負けるかよ!!」
「張りぼて?」
もう一度それを目にすることで、マイアも容易に気がついた。確かに、見れば見るほどそれは「張りぼて」だった。
ペオルの集落にあったイコンはまともに歩行も出来ないほどにお粗末なものだったと聞く。そしていま目の前に立ちはだかるイコンは、それに飛行能力を付け加えただけの粗末品、そんな気さえしていた。
「おらおらぁ!! まだまだ行くぜ!!」
『大形ビームキャノン』に『銃剣付きビームアサルトライフル』。目の前に現れるザナドゥのイコンを昌毅は次々と撃墜してゆく。
「底部はイコンの射出口……となれば」
エンキドゥはビームを発射できる白銀の銃と盾を所有している。必然的に戦術は射撃がメインとなる。
「エイミー、距離をとりつつ背後に回るぞ」
「了解」
エンキドゥに搭乗するのはクレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)とエイミー・サンダース(えいみー・さんだーす)の二名。先程からメイシュロットの防衛機能の中核を探しているのだが―――
「ボス」
エイミーの声にクレアも右舷前方に視線を向けた。
空中で立ち止まればたちまちに集中砲火を浴びてしまう。夥しい数の砲弾がエンキドゥに迫っていた。
「なるほどな、よく考えられてる」
「なんだ?」
「穴の大きさが無駄に大きいんだよ、それが射出方向に幅を利かせてる」
「なるほど。こちらも分かったことがある」
クレアは迫り来る5つもの砲弾を盾で防いでから、そのままビームを射出した。
直撃した砲弾はもちろん、僅かに掠めた砲弾までもが空中で爆発していた。
「砲弾自体の強度が弱い。目的が爆撃だからそれも当然だが、それを踏まえても脆すぎる」
「なるほどな。砲弾であり、爆壁ってわけだ」
その砲弾は端守 秋穂(はなもり・あいお)らをも苦しめていた。
「秋穂ちゃん! 来るよー!!」
セレナイトのレーダーを操作するユメミ・ブラッドストーン(ゆめみ・ぶらっどすとーん)が警告した。前方から3つ、左からも3つの砲弾が迫っている。
左の砲弾の方が機体に近い。ユメミは右方へ向きを変えると、一気に加速してそれらを回避した。はずだった―――
「きゃあっ!!」
「秋穂ちゃん!」
機体が大きく揺れた。推進する中、砲弾の軌道に掠めたようで、その爆風をモロに受けたようだ。
「大丈夫、大丈夫です。でも―――」
「でも?」
「もう許さないんだから!!」
「秋穂ちゃん?!!」
『新式アサルトライフル』と『スナイパーライフル』を同時に操り、蜂の巣にするかの如くに塔部めがけて掃射していった。それでも決して闇雲に撃っているわけではない。
「一撃でも多く、確実に爆破していくわ!」
冷静さも失っていない。それなら、と
「さっきみたいな事は、起こさせないんだからー」
幸いにも機体に致命的なダメージはない。これからだってそれはない、とユメミは自分に言い聞かせて、レーダーを強く睨み向くのだった。
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