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アトラス・ロックフェスティバル

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アトラス・ロックフェスティバル

リアクション


TRACK 15

 『どら☆すれ』がステージに立つと喝采が起こった。地元の強みだ。名前の由来はドージェのドラゴン退治、つまりドラゴン・スレイヤーにちなんだもの。
 メンバーはボーカル兼ギターの姫宮 和希(ひめみや・かずき)、ドラム兼コーラスカリン・シェフィールド(かりん・しぇふぃーるど)、コーラスの泉 椿(いずみ・つばき)、バックダンサーの五条 武(ごじょう・たける)、キーボード兼コーラスフォルテュナ・エクス(ふぉるてゅな・えくす)の5人。全員、パラ実らしからぬ可愛らしい服装だ。
 和希はアイドル風の衣装だが、愛用の学帽はかぶったまま。カリンは百合園の制服に似たピンクの服。椿はキラキラした衣装。武はモノトーンのメイド服(男だが)。フォルテュナは青いメイド服。

「姫やんかわいいよ姫やん!!」
 客席最前列まで出てきた伊達 恭之郎(だて・きょうしろう)が大声を出して応援している。猛烈なアピールぶりに和希はムッとした表情を浮かべるが、それをみて恭之郎はさらに歓声を上げる。

「あたしもバンド出たかったよ〜」
 カリンのパートナーであるメイ・ベンフォード(めい・べんふぉーど)は舞台照明係を押しつけられて不満げだ。しかし彼らの舞台は非常に複雑なものなので、照明はまったく気が抜けない。


 5人は歓声を受けながら演奏を始める。

『My Heart 〜君への想い〜』

作詞作曲:姫宮 和希、五条 武


朝起きたら 君のことを考えちゃう
大切なこの気持ち ずっと前から持ってるの
ごはんを食べて 今日も一日頑張ろう
着替えて髪梳いて いつものワタシに大変身!
とっても素敵な女の子!
今日も君と会えるかな?


 ここで武によるナレーションが入る。
「おっとここで彼女が謎の波動をキャッチした!
 説明しよう! 彼女は純情戦隊ピュアファイブの一人であったのだ!」

 ナレーションが終わると同時に曲調が激しいものに変わり、照明もそれにあわせたものになる。
 メンバーはそれぞれ早着替えで、攻撃的なスタイルに。
 和希はパンク風、カリンはピンクの妖艶で大胆な衣装、椿は白い特攻服、武はスパイクやチェーンで装飾された黒いライダースーツ。機晶姫であるフォルテュナは青い外装に。

「姫やんかっこいいよ姫やん!!」
 恭之郎、もってきたエレキベースを振り回して歓声。“かわいい”よりは“かっこいい”のほうが和希も納得いくようだ。

「純情戦隊 ピュアファイブ!」

「戦いながら歌い続けるぜ! ピュアレッド!」
「純情を阻むもの許さぬ青き星…ピュアブルー!」
「見かけよりハート! ピュアホワイト!」
「やっぱりこの衣装じゃないと落ち着かないねぇ! ピュアピンク!」
「男が純情でも良いだろ! ピュアブラック!」

 メイが炎術や雷術で照明に変化をつける。

 後半は演奏しつつ交互に殺陣を取り入れるという大変なものになった。
 とくに悪役がいなかったため、ピュアホワイトが覆面をして戦う場面が頻出することになったが、途中からは空気を読んだ観客(主に和希や武の知り合い)が悪役のふりをしてステージに上がっては蹴落とされる、という観客参加型のライブになっていた。


夏祭り クリスマス 特別な日に
Let’s Destroy 乙女の敵を
人の恋路を邪魔する奴は 私に蹴られてDie Die Die
五つの心が 一つになれば 一つの愛は 百億パワー
ピュアブラスト 敵を焼き尽くす ピュアサンダー 乙女の怒り
純情戦隊 ピュアファイブ


 ふたたび武によるナレーション。
「ピュアファイブは恋路を邪魔するモノをブチのめす、謎の乙女達と青年である!
 乙女の恋のために、今日もピュアファイブ達は、自らの恋を犠牲に、戦いの日々を送るのである!」


 ライブは非常に盛り上がったが、最後の方はヒーローショーの様相を呈していた。
 楽屋に戻った『どら☆すれ』の5人は一通の置き手紙を見つけた。

「ライブ成功おめでとう。すごかったよ。
 ところであたいはちょっと『だごーん様秘密教団』にお灸を据えてくるわ。
 すぐ戻ってくるから心配いらないよ。知恵子」

 フォルテュナの契約者、御弾 知恵子(みたま・ちえこ)の残した手紙だった。知恵子はバンドのマネージャーとして裏方の作業をいろいろ手伝っていたが、どうも『だごーん様秘密教団』となにかあったらしい。
 心配したフォルテュナは、知恵子を探して出て行った。



 捻り鉢巻に黒の六尺褌という出で立ちの光臣 翔一朗(みつおみ・しょういちろう)が大太鼓(長胴太鼓)を担いでステージに上がる。たいまつが二本用意され、何とも言えぬ暑苦しい雰囲気だ。
 翔一朗が撥(バチ)を構え、太鼓を打ち鳴らす。

打・打・打! 打・打・打!
打・打・打・打・打・打・打・打!

打・打・打! 打・打・打!

打・打・打!


 悪鬼羅刹の如き形相でただただ無心に太鼓を叩き、一曲終わると太鼓を担いでステージから降りていった……