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アトラス・ロックフェスティバル

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アトラス・ロックフェスティバル

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TRACK 23

「だが断る」
 ギター(鮪)が勝手に『ギュギャギュキュイーーン!』と鳴いてかき消した。
 観衆のパラ実生からも『校歌なんか知らねーぞ!!』という怒声。

 今ステージに立っているパラ実生は、ヨーコ、真奈美、たまちゃんの3人。観客(の一部)が期待している歌は、わざわざ聞かずともわかっていた。

「ああ、校歌よりわかりやすいヤツを歌ってやるよ!」


『アイツにRAKE(Full Ver.)』

作詞:渡部真奈美 作曲:小倉珠代



あたしのガードは 難攻不落♪
正面突破じゃ 返り討ち
あたしの有効射程は3キロ☆
アイツの心臓(はぁと)に 一斉掃射!

RAKE! RAKE! RAKE! (撃ち抜け!)
RAKE! RAKE! RAKE! (血みどろ!)
RAKE! RAKE! RAKE! (肉片!)


アイツの心臓(はぁと) 金城湯池
将を射るには まず馬から!
トモダチご家族お隣さん☆
籠城するなら あぶり出すのよ♪

RAKE! RAKE! RAKE! (焼き討ち!)
RAKE! RAKE! RAKE! (黒焦げ!)
RAKE! RAKE! RAKE! (硝煙!)



だって! 負けられないじゃない!
アナタの心(はぁと) ゼンブ読み切ってみせるわ


RAKE! RAKE! RAKE! (撃ち抜け!)
RAKE! RAKE! RAKE! (血みどろ!)
RAKE! RAKE! RAKE! (肉片!)
RAKE! RAKE! RAKE! (焼き討ち!)
RAKE! RAKE! RAKE! (黒焦げ!)
RAKE! RAKE! RAKE! (硝煙!)



 歌った。歌いきった……ところで何で歌ったんだっけ?

 空を仰ぎ見ると、ドラゴンと顔が合った。

 ドラゴンはくぐもった人間の言葉で、
「ライブの趣向であったか……そうか、生贄の儀式ではないのか……迷惑をかけた。
 だが紛らわしいのは勘弁してくれ」
 そう言うと、再び空を飛んで巣に戻っていった。

 終わってみると、ピックで引っかかれた鮪は血みどろになっていた。
「流石ヨーコさんギターにした客が血まみれだァー!」
 実際には興奮しすぎた鮪の鼻血だったが、勝手に伝説を作ろうとしている観客にとってはどうでもいいことだった。

 ぽに夫は思わず「ピック(爪)マン(男)モデルのギターですね」というギャグを言うか言うまいか悩んだのだが、瀕死なので言えなかった。


 『P−KO』のライブを見に来た支倉 遥(はせくら・はるか)ベアトリクス・シュヴァルツバルト(べあとりくす・しゅう゛ぁるつばると)は驚きを隠せずにいた。
「ハハハ、まさかとは思ったがね……
 『P−KO』は国連が秘密裏に送り込んだ平和維持活動が目的の超法規的秘密組織の特殊部隊であり、歌でパラ実生を纏め上げ、総長ドージェの出現以降崩壊した波羅蜜多実業高等学校の秩序回復&実権の一部掌握が目的らしい……なーんてことはないと思っていましたが……
 驚きました。パラ実にはパラ実の文化が芽生えつつある」
 遥の感想を聞いて、ベアトリクスはパラミタ語で「なんと恐ろしい(信じられない)」と返答した。
「……背後になんらかの組織か国家がいるのでしょう。どこだろう?
 教導団とは対立しているようだし、クトゥルフ教団でもない。フランスあたりですかね? ゲルマン系のイルミンスールとはそろそろ手を切りたがっているとも聞くし」
「ラヴクラフトの信奉者はフランスに多いとも聞いているがな」
「ではロシアですかね……もともとパラ実とロシア・マフィアのつながりは疑っていたのです……」
 ふたりは妙な議論をしながら帰路についた。







「……フン、どうやらオレが出るまでもなかったか。くだらん……」
 顛末を見届けた巨漢は、なかば無意識に鼻歌を歌いながら帰って行った。