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アトラス・ロックフェスティバル

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アトラス・ロックフェスティバル

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TRACK 03

 ステージ袖では『パラミタの妖精』のふたり、遠野 歌菜(とおの・かな)ネア・メヴァクト(ねあ・めう゛ぁくと)がスタンバイしている。妖精を思わせる薄手で露出度高めのステージ衣装を着ているが、イメージに合わせて歌菜はピンク、ネアはブルーの違いがある。
 プロデューサーの織機 誠(おりはた・まこと)はそんなふたりをみて満足げに頷いた。短い期間だが練習は充分こなしたし、このふたりならトップバッターが務まるだろう。
「アイドルになれば白馬の王子様もゲットできるね!」
 声が自慢の歌菜は結構自信があるようだ。ネアが誠に言う。
「プロデューサー様、準備が整いました」
「大丈夫、楽しんで行きましょう!」
 そういって誠はふたりをステージに送り出す。



『恋する妖精☆Bung! Bung! Bung!』

作詞作曲:織機 誠



恋する乙女は 無敵!(イェイ!)
スマイル ハート 撃ち抜いちゃうの☆ (※手でピストルを作って撃つポーズ)
恋する乙女は 最強!(イェイ!)
ライバル バトル ぶっ飛ばすぞぉ♪ (※パンチの振り付け)
(×2繰り返し)


「みんなー! 『パラミタの妖精』でーす!!」
「私たちの歌、聞いてください」

恋する乙女は 無敵!(イェイ!)
トラブル ブルー 凹んじゃっても
ぐっすり眠れば…… あしたは元気っ!



「ほう。今年はこんな出し物が出るのか。初めて見るな」
 はらわたに響くような声がした。
「ご存知無いのですか!? 彼女らこそ、今人気沸騰中の未来型アイドル、パラミタの妖精です!」
 誠は誇らしげに声の主のほうにむかって説明しようとした。
 だが相手の顔を見て、恐怖のあまりそれ以上の言葉は続けられなかった。

 ステージが終わってふたりの妖精が戻ってきた。だいぶ手応えはあったようだ。
「プロデューサーさん、わたしたちのステージどうでしたか?」
「ああ……このフェス、とんでもない大物が見に来ているぞ……」


 興奮冷めやらぬなか、次のバンドがステージに上がる。


 そのバンドが結成されたのは前日のことだった。
 アイドル志望の皆川 ユイン(みながわ・ゆいん)はとりあえず希望を出してみた。

・ボーカル希望
・キュート&セクシー系で、歌詞も少しえっちなの
・ポップで軽快な曲

 この条件のうち、上の2つまで呑む相手が見つかった。ヴェルチェ・クライウォルフ(う゛ぇるちぇ・くらいうぉるふ)だった。
「いいわね、あたしがユインちゃんをアイドルにしてアゲル♪
 そのかわり曲はハードロックでいくわよ。多少イメージと違うほうが男はグッとクるのよ♪」
 ヴェルチェの色気はユインにも伝わった。
「わかったよ、お姉さま! 私、アイドルになりますっ」
 こうしてユインのアイドル化計画がはじまったのである。

 ステージに上がったユインは手を振って観客にアピール。
「みんなー! イクよー!!」
 ヴェルチェがドラムを叩き始める。


『イけるとこまでラブミーハート』
作詞:皆川 ユイン 作曲:ヴェルチェ・クライウォルフ


キミの唇に触れたらもうどうかなっちゃいそう。
イけるところまでイってみない?

ハートをゲットされちゃったらもう駄目(※エッチな顔で)
果実のようにとろけた部分に触れて、イれて!
全て捧げちゃう!(※太ももをチラチラ)

ああ、そんなにイジられたら、もうらめぇぇぇぇぇ(※絶叫)



 外見から想像するよりも迫力のある絶叫に、観客の一部がざわめいた。『パラミタの妖精』と同じような普通のアイドル路線だと思われていたので、結構なインパクトがあった。テンションの上がってきたヴェルチェがマイクに叫ぶ。
「続いて二曲目いくわよ♪」

『※曲名不詳』
作詞・作曲:ヴェルチェ・クライウォルフ


出会った時からわかっていた
飛べなかったココロを破壊する

アイツの笑顔があたしを狂わせる
あたしの胸はマグマより
熱く燃えて噴き出しそう

右手に確かな覚悟を握り締め
左手に危険な媚薬を忍ばせて



 二曲目からはテンションの上がったヴェルチェのコーラスが入り、“えっちなかんじ”では済まないレベルになってしまった。


「うーん、やっぱりウチも生楽器を使いたかったなあ」
とは織機 誠の感想。