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アトラス・ロックフェスティバル

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アトラス・ロックフェスティバル

リアクション


TRACK 04

 アトフェスでは後半になるほど危険な観客が増えるため、序盤は比較的穏当なバンドから登場する傾向があった。
 続いてステージに上がったのは『ホワイト・リリィ』のふたり、メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)セシリア・ライト(せしりあ・らいと)である。
 『ホワイト・リリィ』は他のバンドと大きく異なり、メイベルはアコースティックギター、セシリアはピアノという編成だ。衣装もバンド名にあわせた白の清楚なもの。
 なんとなく拍子抜けする観客もいたが、演奏が始まると会場にざわめきが起こる。それはバラード調にアレンジされていたが、明らかにあの曲であった。

 そう、『小さな翼』である……
 『小さな翼』をご存じない方は、『蒼空のフロンティア』のプロモーションムービーをご覧いただきたい。そこで流れている曲である。

 そんなわけで『ホワイト・リリィ』の演奏には大きな拍手が起こった。メイベルがマイクを握る。

「声援ありがとうございますぅ! 続いて二曲目、聞いてくださぁい!」

 ここでも拍手。しかしいざ曲が流れ出すと、一気に会場の雰囲気は不穏になる。
 今度もバラード風にアレンジされた曲だが、原曲は『アイツにRAKE』ではないか。
「この糞アマども、スカした曲で冒涜しやがって!!」
 過激な『P−KO』信者の一部が興奮してステージ上にあがろうとする。危険を察知したセシリアは、自らの体内から光条兵器を取り出して身構えた。セシリアの光条兵器はモーニングスター、『明けの明星』の名に恥じぬ光を放っている。
「メイベルちゃんに手は出させないよ!」
 暴徒も迂闊なことはできないと判断したのか、遠巻きにしながら罵声を浴びせてくる。すぐに会場警備にあたっていた高月 芳樹(たかつき・よしき)アメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)が走ってきたので、暴徒は客席に戻っていった。

 このまま続行するのは難しいとの判断から、『ホワイト・リリィ』の演奏は中断されることとなった。


TRACK 05

「どうしよう、なんだか大変なことになってるよ」
 舞台袖で七瀬 歩(ななせ・あゆむ)が不安げにしている。
「大丈夫。音楽はもともと楽しいものでしょ。みんなだって音楽が好きでここに集まっているんだから、きっと伝わるよ」
 カミュ・フローライト(かみゅ・ふろーらいと)がそう言って元気づける。
「そうだね、大事なことを忘れるところでした。
 あたしたちの音楽を、まず自分たちで信じないとね!」
「よっし!!それじゃあ、頑張っていこうぜ!!!」
 ラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)がギターを鳴らして気勢を上げる。カミュのパートナー、赤月 速人(あかつき・はやと)はなにか考えている様子だが、首を縦に振って賛意を示した。

 4人がステージに上がっても、まだ客席はざわついている。衣装は歩とカミュがゴスロリドレス、ラルクと速人はギャリソン服を少しばかりアレンジしたものだ。カミュがマイクを握り、速人がドラムを鳴らし始める。


『無題』

作詞・作曲:赤月 速人


楽しかったかい? 他の誰かと殴り合うのは(後悔してないのか?)
音楽は争うための理由じゃない 忘れてしまったのか?(思い出せ)
君はいつも俺らの憧れだった(憧れだった)
たったの4年だ 何が君をそこまで変えてしまったというんだ

(Ahhhhhhhhhhh!!!)
(Ahhhhhhhhhhh!!!)


 少しの間奏のあと、ベースのカミュに代わってラルクとピアノの歩がヴォーカルを続ける。曲調がアップテンポになる。


音が傷を癒してくれる 熱意が心を傷つけたりする?
考え直してくれることを 俺らは待っているぜ
フェアにいこう すごく悲しいよ
今の君には何を言っても 聞かないかもしれない
けど、本当は分かっているんだろ?

今からだって遅くはない……



 1曲目が終わると、客席の雰囲気は若干落ち着いていた。ライブで“落ち着く”というのもあまりいい話ではないが、少なくともステージの曲を聴くムードにはなっていた。

「聴いてくれてありがとう! あたしたち『RIVe』の2曲目、聴いてください!」


『愛がなければ見えぬモノ』
作詞・作曲:ラルク・クローディス


それは過ぎ去りし思い出。この指を絡めている。
だけど、その瞳には何も……写らない……
孤独と現実の狭間で、もがき苦しむアナタを
救おうとしてそれでも、私には何も見えない。

あなたを助け出すために必要なのは…ナニ?

もし、もしも…願いが叶うならば
その痛みを取り除いてあげたい。
でも、まだ…愛が足りない。
君を包み込む程の愛を………



 パフォーマンスは成功におわり、4人は舞台裏に戻った。
「ところで歩、質問があるんだ。俺たちのグループ名『RIVe』だが、どういう意味なんだ」
 速人が言い出しそうに切り出した。命名した歩はちょっと困ったかんじで答える。
「一応意味はあるんだけど……秘密!」
「そうか……それなら別にいいんだが……」
 速人はそこで質問を打ち切ったが、あとで語学に堪能なカミュに聞いてみた。

「英語では“裂く、もぎる”といった意味だよ! おそらく“LIVE”と“RAKE”を念頭においたネーミングじゃないかな」

 絶対ちがうな、と思う速人であった。