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【2019修学旅行】紅葉狩りのはずが鬼と修行?

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【2019修学旅行】紅葉狩りのはずが鬼と修行?
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 諸事情あるため、黎は温泉には入らず、胡麻豆腐を堪能していた。
「このコク、香り高さ…さすがは大峰山系の豊潤な水で仕込まれた胡麻豆腐ですね…」
「ほんまや〜美味しいなあ」
 フィルラントも、胡麻豆腐に舌鼓をうつと、
「川魚の天ぷらもいけるよ!」
 エディラントもほくほく顔である。
「……うまい。」
 余り表情が出ないものの、胡麻豆腐と高野豆腐を交互に口にし、ヴァルフレードはご満悦である。

 仁と、ナタリーも山の幸を堪能している。
「葛鍋って意外といけますね、仁」
「うん、まろやかな味わいだ。ナタリーはジャージは脱いだのか?」
「ええ。温泉に入ったら浴衣に着替えますわ。二人で夜の散策にでかけましょう?」
「まあ、それも悪くないかな」


 翔一朗も精霊たちからお酌を受け、山の幸に舌鼓を打っている。
「なかなかいけるもんじゃのう…」


「あつ!」
 ユキノはまだ、あつあつのぼたん鍋で舌をやけどしてしまう。
「仕方ないねーユキノ、ふうふうしてあげるよ。…これで大丈夫、あーんしてごらん」
 英虎がボタン鍋の肉に息を吹きかけて、さましてやると、ユキノもようやくそれを口にすることが出来た。
「美味しいかい?」
「とっても! じゃあ今度はユキノがトラにふーふーしてあげます!」

「う〜ん、お魚も新鮮で美味しいわ! ルナも食べなさい、抹茶を振りかけると、なおいっそう香ばしいわよ」
リカインはほくほく顔で、山の幸を堪能している。
「ええ。なかなか美味しいです。お姉様、あとの温泉も楽しみですね」
 ルナミネスも吉野の夜を楽しんでいた。
「美味しい! さっすが山の幸! 前鬼さんと後鬼さんご夫婦、良い仕事してるなあ☆ 栗ご飯おかわり〜!!」
 りをがどんぶりを差し出すと後鬼が
「ええ食べっぷりですなあ〜気持ち宜しいわ!」
 と思いっきり、栗ご飯を山のようによそってくれる。
「ああ、後鬼奥さん、りをに余り食べさせないで下さい、そうでなくても秋の旅で体重が…」
「なんだとう! もう一回、いってごらん、サバト!」
「ふう〜これだからりをの面倒をみるのは大変だぜ…」
 サバトはそれでもりをがはしゃぐ姿を微笑ましげに見つめていた。

 祥子はいつのまにやら着替えた浴衣姿で、レイディス・アルフェインにガンガン迫っていた。
 食べる事に夢中になっているレイディスにいきなり背後から抱きつき、そのまま、まるでポールダンスの要領でレイディス真正面に回り込み、レイディスの手を取って、顔をもうぎりぎりまで近づけて愛の告白に及んだのだった。
「今日はあなた、黄鬼のところにいたのね。私はあなたのいない赤鬼の高野山で、ひとりぼっちで頑張っていたのよ…教えてくれても良いじゃない、レイディス。いいえ違うの、あなたをせめているわけじゃないの、あなたの役にたてなかった自分が憎いのよ!! …ねえ、レイディス…私ね、あなたのことが好き。誰かの為に自分を犠牲にすることを厭わない所も、時折見せる子供っぽいところも。掴み所のない浮雲のような自由さも、何もかもが好きです。叶う事ならずっと傍にいたいの…」
「えっと、栗ご飯、おかわり」
 意に介さないレイディスにもくじけない祥子。
 みんな見てみないふりをしている。毎度のことであった。
「答えは、今すぐじゃなくていい。でも、必ずしてね?」 
「とりあえずは、松茸の土瓶蒸しももう一つもらっていい?」
 むっしゃむっしゃと食べ続けるレイディスにまとわり続ける祥子であった。


 虎徹とアトロポスはなんどもキノコを裏表してみたり、逐一チェックしながら、夕餉にありついていた。
「陰湿な罠を仕掛けるのが好きな誰かが、これに細工をしているかもしれないです…」
「うんまい山の幸? 温泉? ……ん〜〜〜……引っかかる…」
「まあ、そう堅くならず、ささ、お酒でも。ここには細工するような人間はおりませんよ〜」
 前鬼が二人に酌をした。

 宴たけなわと言った所である。


   ☆   ☆   ☆


 『民宿・鬼転がし』には、大峰山系よりわき出してくる豊潤な源泉掛け流しの温泉が露天風呂として備え付けられている。
「なにせ、鬼や天狗、精霊しかきませんさかい、静かなもんですわ。それに今日はみなさんで貸し切りですから、ごゆっくりと」
 前鬼は宿の主人らしく、愛想良く笑っていた。

 レベッカや、アリシア、ミツ子にオーコも女湯でワイワイと他学園の生徒たちと、交流を楽しんでいる。
「レベッカさんって胸、おおきいじゃん…」
 リリィ・マグダレンが興味津々に、レベッカのカラダを見つめている。
「oh!いうほどではありませんヨ! リリィさんもセクシーですヨ!」
「みんな、スタイルいいよねえ!」
 メイ・アドネラが陽気に笑うと、女同士の会話の交流が余り経験のないユキノはどきまぎしてしまう。
「み、みんな大人のおねーさんばかりです…どきどき」
 アイリス・零式は「お風呂、お湯、温泉…後で霜月にたくさん質問しなければいけないことが増えたであります」と呟いている。

 アリア・セレスティも温泉を楽しんでいたが、天穹 虹七が露天風呂で泳いでしまい、それをたしなめるのに必死だった。
「虹七ちゃん、ダメ! マナーがなってないわ」
「だって楽しいんだもん!」
「いけません。それに女の子ならせめて背泳はやめて、犬かきていどにしておきなさい」

 緋音とひな、ナリュキ・オジョカンはきゃっきゃと温泉を楽しんでいる。かき氷を持ち込んで、体が温まる度に温泉から出てはかき氷のひんやりした味覚を楽しんでいたのだ。
「はーい、ひな。いちごのシロップです」
「わあ、美味しい! 緋音ちゃん、こっちは宇治金時! あーんして!」
 最高に仲良しの二人をよそに、ナリュキは温泉を思う存分、楽しんでいる。
「にゃはは、極楽極楽なのじゃ……♪」


 騎沙良 詩穂とセルフィーナ・クロスフィールドも温泉のふちに腰を掛けて、二人で夜空に浮かぶ月を眺めている。
「詩穂様、月があんなに綺麗ですわ」
 しなやかで美しい肌を月光に輝かせ、セルフィーナはうっとりとしている。
「本当! お菓子もぜーんぶ黄鬼さんや大食らいの人たちにあげちゃったし、うーんいいことした! きっとそのご褒美ね!」
 詩穂もすらりと伸びた肢体を、うーんと温泉の中でのばすとセルフィーナとお湯のかけっこをしてはしゃいでいた。


 一方、男湯では赤嶺 霜月は、鬼たちと露天風呂でお酒をたしなんでいた。
「いいところですね、この吉野の山々は…」
 ラルクとオウガも、戦い終わってすっかり、赤鬼と意気投合してしまっていた。
「まったくだ! あ゛−極楽極楽」
 ラルクが顔をざぶざぶと温泉で洗うと、赤鬼が酌をして回る。
「ところで、オウガ殿はあの『酒呑童子』とお見受けしますが、いかがですかな、うぃーっす」
 ちょっとお酒の入った赤鬼が、すすっとオウガの側に寄ってくる。
「…いや、お恥ずかしい。そういう名前で呼ばれていたこともありますが…」
「そうなんですか?」
 霜月もオウガの過去に身を乗り出してくると、赤鬼が興奮して続けた。
「な、なんと!! 我々の同胞ではないですか!! 源頼光や渡辺綱、そしてあの坂田金時との戦いの真実とはいかなるものだったのですか!?」
「いやあ、お話するほどのことでも…」
「いやいやぜひぜひ」
「お聞かせ下さい」
 瞳をらんらんと輝かせる霜月と赤鬼にオウガは困惑し、ラルクはくっくっくと一人で笑いをこらえていた。


「ウィス、ご飯は美味しかったねえ」
 朱華は、ゆっくりと温かめのお湯に浸かるとふうっとため息をつく。地からわき出る温泉には、やはり大地からの恵みがたくさん込められているのか、疲れた体をあっという間に癒してくれる。
「ええ、朱華。とても美味しく、珍しかったです。それに鬼ごっこも終わってみると、楽しかったです」
「そうだね。…また、こんな風情のあるところに、二人で旅行しよう! 今度は雪見風呂って言うのもいいね」
「ええ、朱華が一緒なら、どこでも楽しいですよ、きっと」