天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

【2019修学旅行】紅葉狩りのはずが鬼と修行?

リアクション公開中!

【2019修学旅行】紅葉狩りのはずが鬼と修行?
【2019修学旅行】紅葉狩りのはずが鬼と修行? 【2019修学旅行】紅葉狩りのはずが鬼と修行?

リアクション

 確かに金剛峯寺に赤鬼はいた。すでに影分身は三体ともタッチされており、本体が残るのみである。
「いきますわよ! ひな!」
「まかせてください、緋音ちゃん!!」
 御堂 緋音(みどう・あかね)桐生 ひな(きりゅう・ひな)、二人は得意のコンビネーションで、赤鬼を挟み撃ちしようと、バーストダッシュをかける。
「おお!? 威勢がいい上、仲のいいお嬢ちゃんたちだ! しかし、そうはいかないぞ!」 
 さすがに本体の赤鬼、二人が挟み撃ち攻撃しようとしてきたところを、とっさに交わしてしまう。
「おっと、わらわもいるでのう!」
 ナリュキ・オジョカン(なりゅき・おじょかん)が体勢が崩れた赤鬼にタッチしてこようと猛然とダッシュしてくる。
「そうはいかん」
 赤鬼はそういうと、ナリュキのオデコをトン! とつくと、更に挟み撃ち攻撃してくる緋音とひなをぎりぎりまで待ち、タイミングを見計らって上に飛び上がってしまう。
 すると、勢い余った緋音とひなは正面衝突、オデコとオデコ同士をゴン! とぶつけてしまったのだ。
「きゃあ!」
「いたーい!」
 くらくらとその場にへたり込む三人を、赤鬼はくすくすと面白そうに笑っている。
「若いお嬢ちゃんたち、威勢が良くていいことじゃ! しかし、三鬼のリーダー、赤鬼、そう易々と捕まっては見せ場がないでな!」
「赤鬼さん! では僕とたたかいましょう」
 そこに大草 義純(おおくさ・よしずみ)があらわれた。
「おっと俺たちもいるぜ! 赤鬼!! 俺と勝負だ!!!」
「しー…私はオウガです。それ以上でも以下でもありません…おや、三対一になってしまいましたね。赤鬼さん、影分身を使っても構いませんよ」
 筋骨隆々のラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)と、オウガ・クローディス(おうが・くろーでぃす)が現れる。
「いや、それには及ばん。黄鬼も黒鬼も『だらすけ丸』を取られ、結界はなくなった。そろそろ、鬼ごっこも終いじゃ。それに、せっかくの『鬼ごっこ』。わしも自分の限界をお主たちと試したくなった。ルールは変更させてもらう。わしかお前たちか、どっちかがさきにタッチした方が勝者じゃ! ただし、ちょっとした趣向で精霊たちにも参加してもらうぞ。空気中に漂う精霊たちはお主らに積極的には関わらんが、触れると凍ってしまうでな。それを上手くよけるがよい」
 赤鬼の言葉に、精霊たちがふわふわと境内のなかに、あつまりはじめた。
「なかなか面白いですね」
 義純はくっと笑う。
「望むところよ!」
 ラルクはどんと胸を叩くと、オウガと赤鬼を追いかけはじめる。体格の良い三人が全力疾走すると、地響きが起こり、大地が揺れるようだった。
 しかし、赤鬼は思った以上に身軽でそうそう捕まらない。
 一方、義純も上手く赤鬼を挑発し、赤鬼が離れれば近づき追ってくれば逃げ、常に等間隔の距離をたもち続けるように追跡して相手のいらいらを誘った。
「どうです、赤鬼さん! 寄る年波には勝てないのではないですか!」
「まだまだあ!」
 大きな岩や大木など地形もうまくつかってつかまらないよう、頭脳的においかけっこをするのが義純なら、その巨体を活かし、迫力でおいかけっこをするのがラルクとオウガだった。
「おっと精霊さんたち、あたらねえでくれよ!」
 ラルクとオウガは意外なほど、機敏ですばしっこくもあった。
 さすがの赤鬼も徐々に疲れが見えてくる。それを悟った義純は本殿の奥側に回り込んで、姿をくらましてしまう。
「くっどこへ行った、あのメガネ君は…!」
「おっとメガネくんのことよりも、俺たちを忘れて貰っちゃ困るな!」
「その通りです!」
 ラルクとオウガが両脇から挟み撃ちにしようとするのを、赤鬼は今度はリンボーダンスの要領で背をそらし、そのまま、二三度バク転をすると、二人から距離をとる。
「すげえな! 赤鬼!」
 驚くラルクとオウガに、赤鬼はにっと笑う。
「普段から、高野山一帯を毎日ランニングし、鍛えておるからな!」
「それは凄いですね!」
 義純が姿を見せる。
「出たな、メガネ君!」
 赤鬼が義純を追おうとした、次の瞬間、全く逆の方向から
「ぢゃらら〜ぢゃらら〜!! ぢゃらら〜ぢゃらら〜!! でで〜ん!! ジャジャーン!!」
 厳かな境内にあの高名な任侠映画のテーマソングが大音量で響き渡る!!
「はっ! このテーマソングは!!」
 赤鬼がその音楽に気を取られていたところに、義純が回り込み、
「赤鬼! 狙われる者より、狙う者のほうが強いんじゃ。そげなこと考えちょると隙ができるど!!」
 義純は一度使ってみたいと思っていたセリフを口にすると、赤鬼にタッチしてしまう。
「勝負言うものは、 熱ぅなったら、終わりじゃけんの…」
 赤鬼はそういうとほんのりと光を放つ『だらすけ丸』を、義純に手渡す。
 赤鬼の瞳には、義純がスガラワブンタに、オウガがカネコノブオに、ラルクがマツカタヒロキに映っていた。

 どうやら、赤鬼は広島弁が特徴的な任侠映画のディープなファンだったようである。

「なんだかよく分からないが、一件落着ってところか?」


【第4章 実は役小角さま!?】


「おお〜みな、よう頑張ったのう〜!!」
 結界が破れ、吉野山に集まっていた生徒たちの前に頭巾を被り、一本歯の高下駄を履き、右手に巻物、左手に錫杖を持った人物が二人の鬼を従え、みなの眼前に現れた。 
「あなたは!」
「既にあっちこっちで登場しちゃってますけど! 今更ですけど! 役小角さま!?」
 役小角は苦笑する。
「みなのもの、ご苦労じゃった。生徒たち諸君、君たちのことは、あのオデコちゃん、御神楽環菜(みかぐら・かんな)校長から頼まれていてのう。『最近なまっちょろいから、鍛えてやって!』なんて言われておったのじゃ」
「あのデコッパチめえ〜!!」
 ダブル・リリィ(リリィ・マグダレンとリリィ・エルモア)が半ギレになるが、一方でにゃん丸と刀真は「さすがです、カンナ様!!」とうっとりしている。

 さらに役小角はリカイン・フェルマータ、天夜見 ルナミネス、光臣 翔一朗に長曽禰 虎徹、アトロポス・オナーに向かって優しい微笑みを向けた。
「少々手荒なまねをして悪かったのう〜精霊たちや天狗はワシの大事な同胞。また、この山も、ユネスコ世界遺産…いや、それだけではなく、幾千年も前から山伏や村人、修験者たちによって守られてきたのじゃ。だから森の中で暴れられては困るんでの。それは理解して欲しいんじゃ」
 役小角はそう言うと、みんなの方へ再び振り返って
「とにもかくにも、お疲れじゃった。約束通りの山の幸を振る舞うぞ。前鬼、後鬼、したくせい」
「はあい! 小角さま! 父ちゃん、はよ、みんなを宴会場へ案内せんか!」
 後鬼と言われた鬼が、前鬼と呼ばれた鬼を蹴っ飛ばしている。
「お前こそ、はよう、夕餉の支度じゃ! さ、ささ、みなさん、こちらですじゃ!」
 前鬼がぱぱっと印を結ぶと、バフン! と音がして、生徒たちの前に一件の民宿が現れる。
「うわあ…すごおい〜!!」
「こちらは私共、前鬼、後鬼夫婦が営んでおります『民宿・鬼転がし』でございます。たびたび、小角様もいらっしゃるんですよ。宴会場は奥になってございます。ささ、ずいっとお入り下さいませ」

 宴会場へと前鬼が案内すると、そこにはすでに夕餉の支度ができあがっていた。あの赤鬼、黄鬼、黒鬼もせっせとお膳の用意に奔走している。
 葛鍋がぐつぐつと音を立て、ボタン鍋が良質の肉の良い香りを立てている。松茸の土瓶蒸しに、胡麻豆腐、栗ご飯に柿の葉寿司、それに川魚のてんぷらが生徒たちの空っぽの胃袋を刺激した。
 さっそく、みんなはわいわいとお膳の前に座ると、役小角が乾杯の音頭を取る。
「乾杯じゃ! さあ、みんな、たんと食べなさい。ワシからのご褒美じゃ、お疲れじゃったな!」
「かんぱーい!!」
 それぞれ、グラスを合わせると、みんなほくほくの笑顔でご飯にありつく。

「真人! あれだけこきつかったんだから、その松茸、私によこしなさいよ!」
「松茸は無理です。栗ご飯、たくさんよそってあげるから、それで我慢しなさい」
「もーう!!」
 セルファと真人は松茸の土瓶蒸しを取り合いしている。

 食扶持増えて食費が大ピンチ、刀真は栗ご飯をタッパーに次から次へ、詰めていく。
「はー。これで少しくらいは食費が浮きますね! カンナ様にもこき使われているこの身、ちょっとくらいの骨休めは許して貰えるでしょう! 温泉も楽しみです!」


「ご飯なのじゃー! 運動の後のご飯は最高なのじゃ〜……そこ、サボってたとか言うなじゃ! むしろサボってなんぞ、おらんのじゃ。もう大変だったのじゃ、もぐもぐもぐ…」
 セシリアは、栗ご飯をがっついていた。


 美羽とマナは黒鬼に絡んでいた。
「なんだよ、黒鬼の理想の女性って。マイブームとか、こっちをばっかにしてんじゃないの?」
 美羽が絡むと黒鬼が切々と、自分の思いの丈を語りはじめる。
「今こそ、和装なでしこの時代なのです。しかも、割烹着! 若い女性が割烹着を着ている!! それだけでも貴重なのですよ! 動く度におっぱいがぶるんぶるん、パンチラでその気にさせるだけさせて! 汁出せばいいと思ってんだろ! そんなアニメや18禁漫画には飽きたのです!」
「うーん、判る判るよ。黒鬼さん。その理想! 突き詰めると、和装割烹着、手が触れただけでもドキドキ! そんな初々しい感じがたまらないんだよなあ〜」
「ベアは黙っていて!」
 ベアが黒鬼に相づちを打つと、マナがぎりぎりっとベアのほっぺをつねり上げた。
「あいててて!」
「まあ、いいわ、お疲れ様でした! ヘンタイの黒鬼さん! お酌させて頂くわねえ〜」
「そうとも。ヘンタイの黒鬼どの、お疲れだったな。なんじゃ我の酒が呑めぬというのか?」
 玉藻 前もやってきて、次々に黒鬼にお酌をしていく。軽いイジメであった。