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紅葉が散る前に……

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紅葉が散る前に……

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紅葉の中のWデート?

「はじめまして、七瀬 歩(ななせ・あゆむ)と申します。真希ちゃんがいつもお世話になってます」
 挨拶する歩に、瀬島 壮太(せじま・そうた)は笑顔を見せた。
「礼儀正しい子だな。よろしくな、歩。こちらこそ真希がお世話になってるぜ」
「も、もう2人して〜」
 話のネタにされた遠鳴 真希(とおなり・まき)がそう言いながら、壮太の腕のあたりを軽くぽんぽんぽんと叩く。
「いや〜、でも、絶好のお天気やで〜。それじゃ始めよか」
 日下部 社(くさかべ・やしろ)が音頭を取り、焼きイモパーティの準備が始まる。
「よし、それじゃまずは落ち葉だな」
 壮太が持ってきた箒を取り出すと、歩も仕込み竹箒を持ち出した。
「いいぜ、女の子はこういう汚れることしないでも。落ち葉はオレが集めるから」
「いえいえ、せめて落ち葉を集めるのくらいはしませんと。あたし、メイドですし」
 ニコッと笑う歩を見て、「それじゃ箒で掃くのくらいは手伝ってもらおうかな」と壮太が笑みを返す。
 その間に、真希が洗ってきたおイモを濡らしたキッチンペーパーで巻き、それを受け取った社がアルミホイルでさらに巻く。
「バケツも用意してきたよ!」
「お〜ありがとうな〜。ちょっくら、水汲んでくる」
「はーい!」
 真希は元気に返事をして、アルミホイルに包まれた焼きイモの番をする。
「最近、事件が多いから、こうやってノンビリできるといいね」
「百合園は大変かい?」
「意外と百合園も色んなことが起きて……ね、真希ちゃん」
「そうだねー、結構大きな事件が起きてるよね!」
「うん。パラミタの人と地球人が仲良く出来るには、もっとアンテナ広げなきゃなあ」
 そんな話をしているうちに、社が帰って来て、焼きイモを焼き始めることになった。
「よし、芋を焼いてる間は、交代で火の見張りと散策をしよっか」
 社の提案で、二手に分かれて行動することになった。
「まずは俺と瀬島さんで散策に行ってくるわ! ちょいと男同士の話をしてくるなぁ〜♪」
「あ、はい、お気を付けて」
「ちゃんと、焼きイモの番してるね!」
 見送る歩と真希に壮太は手を振る。
「おう、手をつっこんで、火傷したりするなよ」
 壮太と社は2人で他の場所に移動して行った。

「しっかし野郎二人で花を探すのって、絵ヅラ的にどーなんだよ……」
 そんなことを言っていた壮太だったが、社と共に、作り始めると、割と乗った。
「ま、良かったやないか。あんなに咲いてるところを見つけられたし。ついでにこっちもプレゼントしよう」
 簡単なリボンで巻いたそれを見せ合い、二人は笑う。
「ところで瀬島さん、真希ちゃんとは、うまくやっとるんか?」
「うまく? まあ、それなりに仲いいんじゃね?」
 壮太が笑う姿を見て、社は余裕があるなあと思う。
「そっちはどうなんだ?」
「俺とあゆむんは……ふ、普通に仲良くやっとるわ!」
 自分の事を聞かれるのは苦手らしく、社は適当に答える。
 適当というより、これ以上に答えようがない……のかもしれない。
「そっか。少し今日で仲良くなれるといいな」
「あ、ああ、そやな」
 そう答えながらも、社はどこか落ち着かなかった。
 パートナーの望月 寺美(もちづき・てらみ)が、物忘れの激しい社のために荷物チェックをしている時に、こう言いだしたのだ。
「歩さんがハロウィンパーティで、男性と一緒になったのを見たっていう子がいたよ〜」
 友達からのまた聞きだから、どんな人か分からないけど、と寺美は付けくわえた。
 それを聞き、社は気になっているのだ。
 彼氏でもない自分が何か言うのは……と思いつつもモヤモヤした気持ちになる。
(あゆむんが誰かと一緒になっても、あゆむんの笑顔が見られるなら、それで……)
 と思う反面。
(……でも! 俺だって!)
 という思いもある。
 歩を笑顔にするのは自分でありたいと。
「あ、そうだ! 寺美のお土産も買わないと……」
 社は帰りにお土産店で、寺美のお土産を買って戻って行った。

 その頃、火の番をしていた歩と真希は楽しく話をしていた。
「こんなに楽しいなら、パートナーのみんなも来れたら良かったね」
「あ、でも、うちは邪魔しないから行ってきなさいとか言われちゃった」
 真希はユズィリスティラクス・エグザドフォルモラス(ゆずぃりすてぃらくす・えぐざどふぉるもらす)のことを思い出し、そう答える。
 しかし、そんな話よりも、今はずっと真希には気になることがあった。
「修学旅行で告白したんだ、あたし」
「え?」
「返事はね、今は真剣なお付合いができる状況じゃないから、もう少し待ってって」
「もう少しかあ……」
 年齢かな、と歩は思った。
 真希はまだ13歳で、壮太は17歳だ。
 まだ真希には色々早いと、壮太は思ったのだろう。
「もう少しって……3年とか4年後?」
 その頃には真希が16、壮太が20になる。
「そうかな。でも、あたしが好きでいていい?って聞いたら、いいって言ってくれたの」
「そうなんだ。良かったね!」
「うん! えへっ、いつかちゃんと付き合えたらいいなっ!」
 壮太とお揃いのお守りをいじりながら、真希は微笑むのだった。

 それからしばらくして焼きイモが焼け、社の用意した軍手を使い、みんなで取りだした焼きイモを食べた。
「おいしーっ!」
 はふはふしながらパクっと食べる真希を見て、みんなが微笑む。
「いい食べっぷりやなあ。真希ちゃん」
「え、そ、そうかな」
 ちょっと恥ずかしそうにして、真希が飲み物を配る。
「はい、ミルクとコーヒーどっちがいいですかあ?」
 歩と社の希望を聞き、壮太にはさっとコーヒーを渡す。
「壮太さんはこっちの方が好きかなと思って、コーヒーも持ってきたよ。どうぞ」
「おう、サンキュ」
 四人は飲み物を飲みながら、焼きイモを楽しんだ。
 全部食べられるほどの量ではないので、それぞれパートナーへのお土産に残りを持って行くことにした。
「ミミくんのおみやげも包まないとね。これで足りるかな?」
 真希が袋に入れて笑顔で振り向くと、そこには三人が立っていて。
(あ……)
 高い空と三人が合わさって、真希は急に自分だけが遠くにいるような不思議な疎外感を覚えて、二人のほうに駆けだした。
「壮太さん……!」
「ん、どうした?」
 焼きイモを渡しに来てくれたのかなと思って、真希の方を見た壮太だったが、泣きだしそうな照れ笑いを見て、驚いた。
「どうした、真希」
 先ほどの言葉よりも真剣味を増した声で問いかける。
「う、ううん……」
 真希はぶんぶんと首を振り、壮太の服に顔をうずめて、小さな声で告げた。
「……好き」
 真希の言葉を聞き、壮太よりも社や歩が顔を赤らめる。
 告白を聞いている壮太は、不安そうな真希を優しく抱きとめて、髪を撫でてやるのだった。

 掃除を終えて山を降り、社は歩に、壮太は真希にプレゼントを渡した。
「はい、押し花の栞。シャレたもんは用意できなかったけど、これやるよ」」
「わあ、ありがとう!」
 今日は壮太さんに、あーんできなかったなあ、と残念に思っていた真希は、とてもうれしそうに、もみじの葉っぱと竜胆で作った押し花の栞を受け取った。
 うれしそうな真希を眺めながら、壮太は少し屈み、真希にだけ聞こえる小声で呟いた。
「……今は返事できねえけど、おまえが成長するまで待ってるから、はやくオレ好みのいい女になれよ」
「え……」
 真希が頬を染める。
 そんな様子を見て、歩はうれしそうに微笑んだ。
 真希が幸せなのが、自分の事のようにうれしいのだろう。
「はい、あゆむんにも」
「わあ、ありがとう!」
 歩は社のプレゼントに笑顔を見せる。
「それからこれも……」
 栞と一緒に渡されたのは、簡単な花束だった。
 真希も同じように花束をもらっている。
「ありがとう! うれしい」
 歩の笑顔を見て、社はこの笑顔を作るのが、やっぱり自分でありたいなと、思うのだった。