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紅葉が散る前に……

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紅葉が散る前に……

リアクション



あなたと二人、星空を


「皆が紅葉狩りへ行くから紅葉狩りへ。それはそれで別に構わんが、それでは面白く無いと思わんかね? イリーナ」
 レオンハルト・ルーヴェンドルフ(れおんはると・るーべんどるふ)の言葉を聞き、イリーナ・セルベリア(いりーな・せるべりあ)は素直に頷いた。
 レオンハルトの捻くれた性格には誰よりも慣れている。この程度のことに付き合えなければ、ずっとそばになどいられていない。
「いいよ、紅葉は京都に修学旅行に行った時に見たしな」
「そうだな。今回は山で晩秋の夜空を楽しむとしよう。夜間行軍の訓練だと思えば問題あるまい」
 そんなわけで6人は夜に紅葉の山に入り、見晴らしの良い場所に、シルヴァ・アンスウェラー(しるば・あんすうぇらー)の用意したキャンピングシートを広げた。
 イリーナが持ってきた薔薇型キャンドルライトに火を灯し、明かりをつける。
 その柔らかな明かりに照らされ、紅葉も見えた。
 幻想的な風景の中、イリーナがお弁当を広げ始め、フェリックス・ステファンスカ(ふぇりっくす・すてふぁんすか)が真剣な面持ちでレオンハルトに言った。
「レオンさん、僕、胃薬持って来てるから。キュアポイゾンもあるから大丈夫だよぉ」
「……フェリックス」
「え、だってイリーナが料理だよ〜。レオンさん勇気あること頼んだよね。イリーナが一人で戦車組み立てるとかの方がまだ安全だよ」
 散々な言われ方をしながら、広げられたイリーナのお弁当は、バイエルン料理のお弁当だった。
 シュバイネブラーテンの豚肉を小さく切って詰め、クヌードルがそばに添えられている。他にも懐かしい料理が並んでいて、レオンハルトは少し驚いたようにお弁当を見つめた。
「ほう、これは……」
「レオン、ミュンヘンの出身だって言ってたから……うちの学食は中華メインで、あまり食べることなくなっちゃっただろうと思って」
「なるほど。考えたな」
 感心しながら、レオンハルトが料理に手をつける。
「ふむ……35点」
 うっ、と詰まるイリーナだったが、異議は唱えなかった。料理のうまいシルヴァがそばにいるのだから、残念だけど当然だと受け入れたらしい。その様子を見て、レオンハルトがくすくす笑う。
「でも、こうやって考えてくれたわけだし、プラス10点で45点というところかな。以前に比べれば随分上達したものだ」
 レオンハルトが髪を撫でて微笑むと、イリーナも同じように笑みを見せた。
「次はもっと上手くなってるように頑張るよ」

 夕食が終わると、ルインたちが焼いてきたマドレーヌが振る舞われ、みんなはシルヴァの入れた紅茶を、レオンハルトはイリーナの用意してきた珈琲を飲み、雑談を始めた。
「どうした、イリーナ」
 自分の髪に触れるイリーナの方にレオンハルトが振り返る。
「レオン、髪が伸びたなーって思って。これなら三つ編みが出来そう」
「……せんでいい」
「じゃあ、寝てる間にこっそりやる」
「ベッドから蹴落とすぞ」
 レオンハルトがつんとイリーナの額をつつく。
 イリーナは小さく笑った後、真面目な表情になり、レオンハルトを見つめた。
「レオン、前に多分、異性として好きって言ったよね。でも……やっぱり違う気がする」
「違う?」
 目線を合わせるレオンハルトに、イリーナはこくんと頷いた。
「レオンはやっぱり恋人とかだけの存在ではないんだ。レオンはそう言うんじゃなくて……片翼が失えば飛ぶことはできない。半身を失えば生きてはいけない。私にとってレオンは、そういうものなんだよ。誰にも替えられないの……」
「……イリーナ」
 気づくと2人のそばには誰もいなくて、それぞれがペアで散って行っていた。  

「あちらがカシオペア、あれがアンドロメダ。ほら、あそこにあるのが星雲なんですよ」
 シルヴァの説明を、うんうんと真剣にルインが聞いている。
「シルヴァ様すごいねっ! ご本見なくても、分かるんだ」
「僕、星って好きなんですよ。ほら、夜って何処も真っ暗なのに、まるで其処だけ救いが在る気がするじゃないですか」
「救いかぁ。それじゃ、シルヴァ様はルインの星だね!」
 ルインはうれしそうにシルヴァにくっつく。
「えへへ、シルヴァ様、星が一杯見られて嬉しいかな? 嬉しいかなっ? 嬉しかったらルインも嬉しいんだよー♪」
 シルヴァが幸せなら自分も幸せというように、心の底からうれしそうに、ルインが笑う。
 2人はそのままずっと飽きずに星を眺めるのだった。

 残されたレオンハルト達はキャンピングシートに並んで座り、教導団の共同利用本棚から借りてきた秋の星座の本を見ながら、夜空を見上げていた。
「折角、星座の本を借りてきたが、流石パラミタ。こう星が多くてはどれがどれやらさっぱりだな」
「でも、とっても綺麗だよ」
 星を見るのが好きなイリーナは、とてもうれしそうに空を見上げている。
 そんなイリーナを愛しげに見つめ、レオンハルトは肩を抱いて寄り添った。
「イリーナ」
「ん?」
 自分の方を向いたイリーナに、レオンハルトはそっと口づけをした。
 そう在るのがごく自然で当然かのように。
 しかし、されたほうのイリーナは恥ずかしそうに頬を染める。
「いつまで経っても慣れないな、イリーナは」
 口ではそう言いながら、レオンハルトはどこか楽しそうに微笑む。
 頬を赤くするイリーナだったが、それでもレオンハルトから離れることはなく、2人で暖めあうように寄り添いあい、小さな声でレオンハルトに願った。
「俺だけのイリーナでいてくれって言ってくれたよね、レオン。だからどうか、私だけのレオンでいて……」 
 イリーナの言葉にレオンハルトはきょとんとし、それから緩く笑みを見せた。
「ああ」
 短いが、万感の思いを込めた言葉と共に、レオンハルトがもう一度、口づけをする。
 唇を離し、とろけそうなイリーナの様子を見て、くすくすと笑いながら、レオンハルトがその頬を撫でた。
「余り溶けると明日に響くぞ」
 いつまでも意地悪したくなる思いを抑え、レオンハルトはイリーナを優しく抱きしめるのだった。

「あ、また星が流れたよ、エレーナ」
 しし座流星群の流れるこの季節。
 パラミタでは地上以上にその流れ星を見ることが出来た。
「星が流れるたびに『恋人が見つかりますように』ちゃんと願ってますわよ! フェリックスは?」
「僕の願いはそうだねぇ。あれだけそばにいて想い合っても、お互いがお互いをどれだけ愛しているか気づけない2人が、ちゃんと互いの想いに気づけますように、かな」
「長いですわね」
「長いかな? だって2人とも互いのことがあからさまに好きなのに、互いにどこまで気づいてるのか……なんだもの。近すぎて見えないのかな? 愛してるという言葉が、なんで出ないのかな?」
「愛してるですか。多分、そういうものを先に越してしまっているから、逆に出てこないんですのよ。2人にとっては【大切】のほうが【恋愛】より上だから」
 困った弟妹たちを見るようにエレーナが苦笑交じりに笑う。
「愛情は本当にそれぞれで、人の数だけ愛の形があっていいと思うけど……。願わくばすべての人々に、この流れ星のように、幸福が降り注ぎますように」
 フェリックスは今日この紅葉の山に来た人たちすべてに幸福が訪れますように、と願うのだった。

担当マスターより

▼担当マスター

井上かおる

▼マスターコメント

皆様、ご参加いただきありがとうございました。
この度はここまで遅れてしまい、本当に申し訳ございません。

出会いがあれば、別れもあり。
各恋愛リアクションを見ていて、そろそろ恋の迷いや失恋とかいろいろなことが起こり始めてるかなと思って、始めたシナリオですが、予想以上に色々起きていた……という感じでした。

恋愛関係リアを書くマスターとしては「こうなっちゃったのは、自分のリアが悪かったのかな……?」と胸が痛む思いをしながら書いたり、アクションを読んだり、何があったのかな、心配したりの執筆でした。

割と複数関係が多くて、誰か消えませんように……とビクビクものでもありました。
また、最近はメールでの交流も増えてきたので「ふふふ、こんなリア書いておいて、実はもう関係が違ったらどうしよう」とか割とおどおどしています。

もちろん楽しく明るくもいっぱいでした!
クリスマスが華やかなものになるといいなあと思います。

今回のリアでは、かなり描写の多い少ないが顕著に出てますが、これは単純にアクションの結果です。

「2人で山に登って紅葉を見ます」だけなアクションと「2人で紅葉の山に行きます。『ほら、足元危ないから手を繋いで行こう』と手を繋いで2人で歩きます。紅葉を見たら『●●の瞳の色みたいにキレイだ』と笑顔で言って、2人で今日の思い出に栞を作るために、一番綺麗な紅葉を送り合います」というアクションとだと、後者の方がやはり多くなるのです。

特に恋愛リアの場合は、アクションの成功・不成功的なあまりありません。
なので、アクションに言いたい台詞を書いたり、それに合わせてしたい行動を書いたりすると、拾いやすく、書きやすくなります。
もちろん書いてるものが多すぎると、文章量の問題で全部拾われないから、本当にやりたいものをメインに書くとかいろいろ大事ではありますが。
自分の描写が少なかったなあと思う方は、クリスマスに向けて、みんながどんなことをしているか、見てみてくださいね。

と、これだけ遅れたくせにあれこれ書いてすみません。
個別メッセージについては、人数が多くて書ききれず、寂しい思いの方もいるかもしれませんがごめんなさい。どのPCさんたちもみんな好きです。

そして、どうかマスター以上に、あなたのお友達を恋人を愛してください。
小さな勘違いで、すれ違いで、楽しいクリスマスが迎えられないなんてことが起きないよう、みなさんが幸せな冬を迎えられるように、祈っております。