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紅葉が散る前に……

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紅葉が散る前に……

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禁断の恋だから

「パラミタの紅葉は割と日本のに似てるね」
 焼きイモを焼きながら、エルシュ・ラグランツ(えるしゅ・らぐらんつ)がそう笑う。
 そのそばでは、兄であるエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)が、エルシュのパートナーであるディオロス・アルカウス(でぃおろす・あるかうす)とカレーを作っていた。
「正しい日本の家庭のカレーを作ります」
 ディオロスはそう言って、ジャガイモとニンジンタマネギと、さらには牛肉を切って、カレーの準備をする。
 ローリエなどの香辛料の準備もばっちりだ。
「それが正しいカレーなんだ」
 クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)は焼きイモを焼きながら、興味深そうに見つめている。
「クマラ、火、火」
「え?」
 ディオロスに指摘されてクマラが見ると、火術の加減がおろそかになり、火の勢いが強くなるところだった。
「わ、危ない危ない」
「大丈……痛っ」
 心配してクマラを見ようとしたエースだったが、野菜を切っている最中だったので、気が逸れて、指を軽く切ってしまった。
「大丈夫か、エース」
 エルシュはそう言いながら、エースの指を見て、パクっと咥えた。
「あ……」
 ところがそうしておいて、エルシュは自分で笑った。
「血を止めるには非科学的方法だな。ちゃんと消毒しないと」
 そう言いながら、エルシュはちゃんと消毒し、絆創膏を貼ってあげた。
 焚き火の上に置かれたケトルが沸いたよと伝えるように音を立て、コーヒーがいられる頃、カレーが完成し、夕食となった。

 夕食後は焚き火を囲んで雑談となった。
「紅葉って一言でいっても、色々な彩があるものなんだな」
 エースは感心して紅葉を見上げたが、クマラの方は切なげな顔をした。
「紅葉って、見てると何だか、せつないキモチになるよね……」
 ぽつんとそう呟く。
「昔は夜営とかして、戦友達ともこんな風に雑談してたけど、今のオイラにはロスしかいないし……」
「逆にいえば私がいる。でしょうに」
 ディオロスが暗い考えに陥りそうなクマラを慰める。
「また出会う日があるかもしれませんよ」
「うん、そうだね。みんなも契約者を得たら、虹の橋の向こうから、この世界に戻って来れるかな?」
 クマラは向こうの世界にいる友人たちを想ってしんみりした。
 雑談は時間と共に焚き火からテントの中に移り、気づくとクマラは寝てしまっていた。
「ゆっくりおやすみなさい、クマラ」
 ディオロスは寝相の悪いクマラの毛布を直してやりながら、そっと髪を撫でてやった。
 カタンと音がして、エースとエルシュが出かけたことに気づいたが、ディオロスは寝たふりをしてあげることにした。
「薔薇の学舎は楽しい? エース」
 エースを星空観賞に誘ったエルシュは、学校の違う兄にそう聞いた。
「ああ、あまり学校のイベントには関わってないけど、それでもまあまあ楽しくやってるよ。ただ」
「ただ?」
「エルシュとは学校が違うから、いつも一緒に居れないのは寂しいな」
 それは他校同士の恋人たちの抱える共通の悩みだった。
 エルシュとエースは兄弟なのだが、エースはそう思っていた。
「学校が違うと、同じ思い出が作れないだろ?」
「……だから今日は誘ったんだよ。同じ思い出を作りたかったから」
 2人は暖かいコートを羽織って夜の山を手を繋いで歩き、星空の良く見える視界が開けた場所で立ち止まった。
 夜の山は空気も澄んでいて星空も良く見えた。
 そして、昼に比べて人影もない。
「だから誘ったか。週末はエルシュのマンションで会えるのにな。寂しい?」
「さ……寂しいわけあるか。毎週、会えているんだし」
 エルシュはそう言いながら、コートと落ち葉を布団代わりにエースを抱いた。
「エルシュ……」
「大丈夫、誰もいない。2人っきりだから」
 そう耳元囁き、エルシュの手がエースの体に触れる。
「あ……」
 エースは弟の触れるのに反応しながら、その瞳を見詰めた。
 地球ではエースは家の当主で、エルシュはその影にすぎない。
 でも、パラミタでなら、その関係や立場を越えて、愛し合える。
「季節は変わるけど、俺の気持ちは変わらないよ」
 兄の上げる声を心地良さそうに聞き、震える体を優しく愛す。

 ……。
 …………。
 ………………。

 エルシュさんのご希望がありましたが、全年齢対象ゲームですから、今宵はこれまでにしとうございます。