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リアクション
プロローグ
晴天の朝
藍澤 黎(あいざわ・れい)は、今日行われる薔薇の学舎と百合園女学院合同開催の六校合同体育祭の準備に追われていた。
「ふう、体育祭の準備というのもなかなか大変なものだな。しかし、皆が楽しむ為なら、それも我の糧となるであろう」
言いながら、黎は、体育祭にはあまり相応しくないテーブルセットや、ティーカップなどを会場に運び込む。
「我は、残念ながら執事では無く、騎士。しかし主人に仕える心というものは、変わらないはず。今日の体育祭は、我の騎士道に何かしらのプラスになるであろう」
黎は、まだ見ぬ自分が仕える主人を思い描きながら準備を進めていた。
淑女を待つ時
空京の体育祭会場、主催席で薔薇の学舎校長ジェイダス・観世院(じぇいだす・かんぜいん)はダシガンコーヒーを飲みながら、百合園女学院の淑女達が来るのを今か今かと待っていた。
「ラドゥよ。百合園のレディーとやらは、どれくらいのものだと思う?」
ジェイダスは同じく、主催席でダシガンコーヒーを飲んでいたジェイダスのパートナーラドゥ・イシュトヴァーン(らどぅ・いしゅとう゛ぁーん){に意見を求めた。
しかし、ラドゥは気怠い様子であまり興味がないのか。
「百合園のレディーね。私に意見を求められても困るというものだ。そもそも私は、そのレディーというものに興味が無いのだから」
「ほう、なら、何になら興味があるのかな? ラドゥ?」
ラドゥの言葉に興味を持ったのか、ジェイダスがラドゥに意地悪な笑みを浮かべて尋ねると、ラドゥは視線を逸らし「貴様には、関係ないことだ」と一言、ジェイダスに向かって言った。
そんなラドゥを見ながら、含み笑いをしていると、黎がやって来た。
「ジェイダス校長、百合園女学院の皆様がいらっしゃいました」
うやうやしく、ジェイダスに頭を下げる、黎。
「そうか、それでは、お出迎えしなくてわな」
ジェイダスはそう言うと、コーヒーをテーブルに置き、黎の案内に従い百合園女学院の淑女を出迎えるのだった。
お嬢様来襲
百合園女学院校長桜井 静香(さくらい・しずか)は、百合園女学院の生徒達を引き連れて緊張した面もちで、会場にやって来た。
「ラズィーヤさん。最高の淑女を決める体育祭らしいけど、僕達の学校の女の子達は、薔薇の学舎の皆さんをガッカリさせないかな?」
静香は、ジェイダスが提案してきた体育祭の内容を思い出し、少し弱気になる。
そんな静香にパートナーのラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)は、満面の笑顔で。
「心配することは、ありませんわ。静香さん。百合園女学院の女生徒は、みんな静香さんには及ばずとも、立派な淑女ですわ。それに、薔薇の学舎の方々の方から私達をもてなす競技を提示してきたのですから、しっかりおもてなしを受けるのも、淑女の使命ですわ」
「そうかな?」
静香達が歩みを進めると、前方から薔薇の学舎校長ジェイダスが歩いてきた。
「これは、これは、桜井校長を始め百合園の生徒諸君、良くいらっしゃってくださった。今日は、我が校の生徒達がたっぷりおもてなしをさせて頂くので、よろしくお願いする」
騎士らしく、紳士的に挨拶するジェイダス。
それに慌てて、静香は「有り難うございます。よろしくお願いします」と頭を下げる。
その姿を見て、ラズィーヤは心の中で『薔薇の学舎の殿方達は今日は、私達の執事なのですから、そんなにかしこまらなくてもよろしいのですわよ。静香さん』と思っていた。
「それでは、百合園の生徒の皆さんの、出場種目をお教え頂けるかな? こちらの執事の用意もあるのでね」
ジェイダスは、いつもの慇懃無礼な態度が嘘の様に、社交的に静香に問いかける。
「あっ、はいっ。このプリントを見てください。百合園の生徒のみんなの出場希望種目を一覧にしてきました」
言いつつ、ジェイダスに一枚の紙を渡す静香。
「これは、ご丁寧にありがとう。それでは、百合園の生徒の皆さんは控え室の方で競技の準備の方へ。生徒の皆さんを案内する様に」
「はい。分かりました。ジェイダス様」
言われると、待機していた、藍澤 黎は百合園女学院の生徒を控え室に案内するのだった。
「それでは、静香殿とラズィーヤ殿は、私と一緒に主催席へ向かいましょう」
ジェイダスは、二人を主催席へ案内すると、静香から渡された、百合園の生徒の出場種目が書かれた紙を見て、眉間にしわを寄せる。
「……執事が足らんな」
少し考え、ジェイダスは打開策が見つかったのか、口元に微笑を浮かべる。
「……これは、楽しくなるかもしれんな」
ジェイダスの口調は、悪戯を思いついた子供の様だった。
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