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【十二の星の華】双拳の誓い(第1回/全6回) 邂逅

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【十二の星の華】双拳の誓い(第1回/全6回) 邂逅

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    ★    ★    ★
 
「怪我人は、こちらへおいでやす」
「みんな、大丈夫だよね?」
 信太の森葛の葉やヘルメス・トリスメギストスたちが、広間でもろに星拳同士の激突に巻き込まれた者たちの所へ駆けつけた。
「今のうちに、玄武甲を!」
 景山悪徒が、瓦礫に埋もれた玄武甲にむかって走った。他にも、アイン・ペンブロークや日堂真宵などが、同じ目的で走る。
「これは、壊れちゃってるよ」
 お互いに玄武甲を引っ張り合おうとした者たちは、引っ張るまでもなく玄武甲がバラバラになっていたのを見て唖然とした。
「いや、これは安物のただの鎧だ。してやられた。奴らの目的は……」
 そう言いながら、景山悪徒は、頭上で空中戦を繰り広げるアルディミアク・ミトゥナとココ・カンパーニュを見あげた。
「玄武甲は偽物……」
 崩れた通路の端から、落胆する者たちを見下ろして、九弓・フゥ・リュィソーがつぶやいた。
「予想の範囲内だわね」
 九鳥・メモワールが、眼鏡を軽く上下させながら言った。
「つまんないの」
 マネット・エェルがつぶやく。
「でも、あれは本物だよね」
 九弓・フゥ・リュィソーは、ココ・カンパーニュたちの星拳を見つめて言った。
 空中では、ドラゴンアーツで応戦するココ・カンパーニュと、星拳の光条その物を飛ばして攻撃するアルディミアク・ミトゥナが激しい空中戦を演じていた。
「くっ、やはり、力は向こうの方が上か……」
 飛んでくる光弾をなんとか防ぎながら、ココ・カンパーニュは決め手はないかと焦っていた。彼女のパートナーは地上にいる。それは、光条兵器に時間制限があることを示していた。本来、この制限だけは変えることができない。力をセーブしながら戦ってはいるが、いったいいつまでもつものだろうか……。
 サーフボードのようにウイング・シールドを乗りこなすアルディミアク・ミトゥナが、すっと身を沈めた。アウターのスカートが、風で大きくはためく。楯に収められた剣を抜くと、アルディミアク・ミトゥナはそれを投げた。ウイング・ソードが羽ばたき、自由に空を舞う。
 斬りかかってきたウイング・ソードを避けて、ジャワ・ディンブラが急旋回した。ココ・カンパーニュの耳許で風が唸る。それを待っていたとばかりに、華麗にローリングしながらアルディミアク・ミトゥナがココ・カンパーニュのすぐ横につけた。
「お前を倒すと、私は姉に誓った。それは果たさせてもらう」
 アルディミアク・ミトゥナがココ・カンパーニュの右腕を左手でがっしりとつかんで言った。二つの星拳が、激しく共鳴を起こす。
「私だって、誓いを……」
「そんな物は、私には無意味だ!」
 ついと、アルディミアク・ミトゥナが右手の指を動かした。ココ・カンパーニュの背からウイング・ソードが迫る。
 避けられまいと、アルディミアク・ミトゥナがほくそ笑んだ。その瞬間、銃声とともにウイング・ソードの軌道がわずかに変わった。星拳をつつむ光条に、ウイング・ソードがあたる。瞬間、二人は離れた。
「もう、こういうの難しいんだから、も一度は無理だからね」
 地上から狙撃したリン・ダージが叫んだ。
「二人の邪魔はしないでもらおう!」
 次はさせないとばかりに、シニストラ・ラウルスがリン・ダージに迫った。
「きゃっ」
 大振りのナイフがリン・ダージに迫る。
 キンと、金属のぶつかり合う鋭い音が響き渡った。
「黙って見ていられるほど、私たちは忘恩の徒ではありません」
 フランベルジュでリン・ダージを守ったペコ・フラワリーが、力強くシニストラ・ラウルスに言った。
「そうそう。邪魔ならいくらでもみんなでしてさしあげますよ」
 空にむかって爆炎波を放ちながら、マサラ・アッサムが言った。
 地上は乱戦であったが、その隙を見て、双方が空中にむかって散発的に攻撃をする。それを巧みに避け、あるいは星拳で吸収しながらココ・カンパーニュたちは戦いを繰り広げていった。
「ちっ、こうなると、お嬢ちゃんが本懐を遂げてくれない限り、戦い自体が無意味だねえ」
 いい加減飽きてきたのか、デクステラ・サリクスがつぶやいた。
「奴を、低空に誘い込むぞ。味方に近い方が有利だ」
 ジャワ・ディンブラが、ココ・カンパーニュに告げた。
「そうしてくれ」
 ココ・カンパーニュがうなずく。味方がいると同時に、敵もいる。攻撃を受ける可能性はお互いに高い。
「あいつらなら、なんとかしてくれるさ」
 短い間とはいえ、道中をともにした面々を見下ろしてココ・カンパーニュはつぶやいた。
 ジャワ・ディンブラが、高度を落として遺跡をなめるように飛んだ。アルディミアク・ミトゥナが後をついてくる。地上では、そんな彼女たちを攻撃しようと、いいや、そうはさせじと、敵味方入り乱れて激しいぶつかり合いが起きる。
「逃がすか」
 アルディミアクが、遺跡の裏口があった瓦礫の上にさしかかった。そのとき、突然瓦礫が爆
発した。ミラベル・オブライエンが仕掛けた爆薬を、六本木優希が爆発させたのであった。
「このチャンス、逃しはしません。勝負です」(V)
「ちっ」
 下から突き上げてくる爆風と瓦礫のつぶてに、アルディミアク・ミトゥナが体勢を崩した。そのまま、ウイング・シールドから振り落とされそうになる。
 そんな彼女の腰に誰かが手を回してささえあげた。デクステラ・サリクスだ。
「潮時だ。撤退するよ」
 ウイング・シールドの取っ手にぶら下がるようにしてつかまりながら、アルディミアク・ミトゥナをかかえたデクステラ・サリクスが言った。
「いい判断だ。――やれ!」
 それを見て、シニストラ・ラウルスが携帯でどこかに命令を送った。
 
    ★    ★    ★
 
「やっと連絡が来たぜ」
 トライブ・ロックスターが待ちかねたとばかりに言った。
「では、やってしまいましよう。ぽちっと」
 ロザリィヌ・フォン・メルローゼが、仕掛けのスイッチを押した。即座に、彼女たちが遺跡や森のあちこちに仕掛けておいた発煙筒に火がついて周囲に煙幕が立ちこめた。
「せっかく助太刀にきたのに、こんな役目しかもらえないなんて、つまらないですね」
「そうだ。つまらないぜ」
 藤原優梨子の言葉を、宙波蕪之進が繰り返した。
「まあ、新参者はまだこの程度しか信用されてはいないということだよ」
 しかたないと、桐生円が肩をすくめた。
「そういうことだねぇ」
 オリヴィア・レベンクロンも同意する。
「まあ、勝手についていった奴もいたが、命令には従っておいた方がいいだろう。どうにも、ヴァイシャリーで懲りたみたいだからに、あの狼」
 トライブ・ロックスターが、経験を語った。
「それより、早くアルディミアクを迎えに行こうよ、ねぇ〜」
 オリヴィア・レベンクロンが、皆を急かした。
 
    ★    ★    ★
 
 立ちこめる煙に、海賊たちはあっと言う間に姿を消してしまった。あざやかとも言える引き際だ。
「今頃時間切れになった? やっぱり……」
 光の粒子になって消えていく星拳エレメント・ブレーカーを見て、ココ・カンパーニュはぽつりとつぶやいた。
「……逃がしたか」
 クルード・フォルスマイヤーが刀を鞘に収めて言った。
「それとも、見逃してもらったかですね」
 道明寺玲が、まだくすぶっている煙幕をパタパタとハンカチで追い払いながら言った。
「結局、玄武甲は偽物で、最初から海賊たちの罠であったか。残念なことだな。それで、おぬしたちは、これからどうするのだ?」
 相馬小次郎が訊ねたが、ココ・カンパーニュはすぐには答えずに遠くを見ていた。
「まあ、これじゃ、クイーン・ヴァンガードの兄ちゃんにあわせる顔がないからなあ。また、ばっくれてしまいますか」
 あっけらかんと、マサラ・アッサムが言った。
「だったら、イルミンスールにくるのはどうでしょうか。みんなで、エリザベート様に頼めば、何か仕事ぐらいありそうですし」
 突然、いいことを思いついたように、狭山珠樹が言った。
「それはいいじゃん。イルミンスール魔法戦闘航空団に入ってくれるんなら、優遇するよ」
 茅野菫が、自分の主催する倶楽部の名をあげた。
「うんうん、それはいい客寄せパンダに……、いや、ごほんごほん」
 思わず本音を言いかけて、クロセル・ラインツァートが咳き込んでごまかす。
「バイトでいいなら、いいのがあるじゃん」
「地図作りですかな?」
 メイコ・雷動の言葉に、マコト・闇音が聞き返した。
「何それ、面白そう」
 リン・ダージが、それに興味を示した。
「ザンスカールへ行くのもよさそうですねえ」
 チャイ・セイロンも同意する。
「どうしますか、リーダー」
 ペコ・フラワリーが、ココ・カンパーニュに訊ねた。
「そうだね。ちょっと森でのんびりするのもいいか。じゃ、クイーン・ヴァンガードの諸君、報告は任せた。じゃあね」
 あっさりとそう言うと、ココ・カンパーニュは再びジャワ・ディンブラの背中に乗った。他のゴチメイたちも、同じようにジャワ・ディンブラの背に乗る。
「ううむ、重いぞ」
 そう言いつつ、さっとジャワ・ディンブラは空に舞い上がった。そのまますたこらさっさと、遺跡から離れていく。
「えーと……。また逃げたのかぁ!!」
 後に残された者たち、主にクイーン・ヴァンガードの隊員たちの叫びが、むなしく廃墟となった遺跡に響き渡った。

担当マスターより

▼担当マスター

篠崎砂美

▼マスターコメント

 双子座編開始です。
 全6回と長い感じになっていますが、逆に1話ごとの独立性はかなり高くなっていますので、間が抜けたりしても問題なくこの後参加できます。読み物としても普通に読めるレベルの話ですので、一応参加していない回も読んでおいてねということはありますが。
 本当は3回3回などに分ければいいんでしょうけれど、切れが悪いんですよね。だからといって、1話ごとの6話というのもバラバラすぎますし。
 基本的に、6回の連載と言うよりも、6話のオムニバスと考えてください。1話完結で、全部でより大きな話になるという感じです。
 もちろん、続き物ですから、前回の結果は、次の回に反映されます。いや、むしろこのお話は、キャンペーンの方と交互になっていますから、むこうの影響の方が大きいかも知れません。とりあえず相互に影響を与えていますが、最終的な敵はまったく別ですので、まったく別のストーリーとなります。まあ、敵さん同士は、裏で手を結んでいそうですが。
 
 今回で、様々な情報が出ましたので、さあ、これからという感じでしょうか。どの情報が本当で、どれがブラフなのか。そして、それをプレイヤーが知るにとどめないで、どうやって、キャラたちに把握させるか。そして、それをどうNPCに伝えるかで、お話は大きく変わっていくでしょう。

 今回、細かい物は個別コメントに書きませんでしたが、ココや海賊たちとは、だいたい一緒に移動したりしていれば警戒心程度は減ります。会話をしていて、相手が気分を害してなければ、おぼろに覚えられています。相手が怒っていたりすると、マイナス感情です。同意したりしていると、確実に覚えられています。まあ、だいたいの目安ですので、極端な差はありませんが、仲良くなったと思ってべたべたすると嫌われたりしますので、まずいと思ったら関係修復に努めてください。

 さて、次回のペリフェラル・エピソードの前に、ゴチメイたちは今度は世界樹に寄るようです。さすがに、世界樹が破壊されることはありえないでしょうが、なるべく被害は少なくしてあげてください。

 文中の赤いV印は、ボイス対応です。
 台詞を言っているキャラのボイスの中に、まったく同じ物がありますので、そのキャラのプロフィールページのボイス一覧から手動再生してお楽しみください。

PS.冒頭、チャイがマサラになってました。誤字修正。