蒼空学園

リアクション

　
「さて、ここから先には行かせん」
　サングラスを外して上着を脱ぐと、シニストラ・ラウルスがやってきたゴチメイたちを睨みすえて言った。その上半身がみるみるうちに狼のものとなる。
「おお？　敵か？　本当はココと拳と拳で戦ってみたかったんだが、あんたでもいいぜ。このおっさんの修行につきあってくれるってか！？　オラァ！　かかってこいやあ！！」（Ｖ）
　遅れてやってきた分、先頭に立ったラルク・クローディス（らるく・くろーでぃす）が、シニストラ・ラウルスと対峙した。
「雑魚が。でかい口を」
　シニストラ・ラウルスが飛び出した。
「まずは……闘気の弾丸くらいやがれ！！」（Ｖ）
　ラルク・クローディスは遠当てで牽制しようとしたが、それを読んだシニストラ・ラウルスによってあっけなく避けられてしまった。かわりに、急接近した人狼のキックを、避ける間もなくもろに食らってしまう。
「やられてたまるかよ！」（Ｖ）
「タフだな」
　ヒロイックアサルトで攻撃を相殺したラルク・クローディスは、あらためて身構えた。シニストラ・ラウルスも、間合いをはかりながら構える。
「遊んでるんじゃないよ！」
　そのシニストラ・ラウルスを足場にして、後方から走ってきたデクステラ・サリクスが大きく跳躍した。あっけなく、二人を飛び越えて、一気にココ・カンパーニュたちに迫る。
「ははは、俺が相手に……ぐぎゅ」
　駿馬を駆って飛び出したクロセル・ラインツァートの直前で、デクステラ・サリクスがしなやかな肢体をケープの間から顕わにしてクルリと一回転した。そのままクロセル・ラインツァートを馬上から蹴り落とす。
　ストンと駿馬の鞍の上に直立したデクステラ・サリクスの身体を、ふわりと下りてきたケープの裾がつつみ込んで隠した。
「行け」
　馬上に立つという離れ業を見せたままバランスを崩すことなく、デクステラ・サリクスが駿馬に命じた。おとなしく反転した駿馬がココ・カンパーニュたちの方にむかって走り出す。
「お嬢ちゃんにゃ悪いが、遊ばせてもらうよ」
　ケープを靡かせながら、デクステラ・サリクスが言った。
「おっと、正義の味方の持ち物は、正義の心を持つ者にしか使えないのだよ」
　落馬したままかに見えたクロセル・ラインツァートが、満を持して口笛を鳴らした。
　彼の駿馬が、急停止して背中のデクステラ・サリクスを振り飛ばした。
「甘いよ」
　だが、超感覚でその勢いを利用したデクステラ・サリクスは、加速して空中からココ・カンパーニュに襲いかかっていった。
　すかさず、道明寺玲がガードラインで間に割って入る。だが、右腕の一振りで、デクステラ・サリクスはそれを叩き伏せた。さらに、その反動すらも利用して左の拳の勢いに乗せ、ココ・カンパーニュに叩き込む。
「面白いじゃない」
　ピンポイントのドラゴンアーツで、ココ・カンパーニュはその拳をまっこうから迎え打った。
　二つの拳のぶつかり合う衝撃波で、そばにいた者たちが怯んだ。ココ・カンパーニュは間髪を入れず右手でその衝撃波を切り払うと、着地するデクステラ・サリクスの足下めがけてローキックを見舞う。身体をひねってキックの威力を殺したデクステラ・サリクスは、そのまま横に一回転して側面に回り込んだ。体を入れ替えるココ・カンパーニュにむかって、等割地獄の乱打で襲いかかる。それを、ココ・カンパーニュの則天去私の高速拳が一つ一つ捌いていった。
「楽しませてくれるねえ。そろそろ星拳とやらを使ったらどうだい」
「嫌だね、もったいない」
　挑発するデクステラ・サリクスに、ココ・カンパーニュは不敵に答えた。
「そちらこそ遊ぶな。一気に追い払え！」
　シニストラ・ラウルスが叫び、後ろで控えていた海賊たちのペットが一斉に前へ出てきた。
　たちまち、その場にいた者たちと乱戦になる。
「早く、安全なとこへ」
　イルマ・スターリングが、レオポルディナ・フラウィウスヒールに言った。
「はい」
「急ぎマース」
　アーサー・レイスの運ぶ道明寺玲に、レオポルディナ・フラウィウスヒールはあたふたとヒールをかけている。
「くっ、無念です。なんとも、力任せな者たちですな」（Ｖ　気絶時）
　痛む脇腹を押さえつつ道明寺玲が言った。
「さっさと運べ」
　追ってくるお化けキノコを切り裂きながら、土方歳三がアーサー・レイスを急かした。
「貴公は、先に遺跡へ」
　イルマ・スターリングが、まだデクステラ・サリクスと戦っているココ・カンパーニュにむかって叫んだ。同時に、火球を放つ。
　直撃はしなかったものの、火球がかすめたデクステラ・サリクスのケープが燃えだした。
「お気に入りを！」
　怒りとともに、デクステラ・サリクスが、燃えるケープを広げてココ・カンパーニュの眼前に投げた。広がる炎の壁で相手が怯んだところを、火などものともせずに拳を叩きつけようと迫る。だが、殺気を感じた猫娘は、寸前で大きく後ろへ飛び退（すさ）った。
　入れ替わるように、神代夕菜が燃えるケープを高周波ブレードで千々に切り裂いた。その飛び散る炎の花びらを突き抜けるようにして、神代明日香の姿が飛び出してくる。
「厄介な」
　横薙ぎに襲ってくる超振動の刃を、デクステラ・サリクスはクローで上から叩いた。触れただけで、大きく弾き飛ばされるような反動が襲ってくる。それに逆らおうとせず、デクステラ・サリクスは大きく後退していった。
　追いかけようとする神代明日香に、海賊たちのペットであるスライムが襲いかかってきて邪魔をした。
「えーい」（Ｖ）
　反射的に、神代明日香がスライムを高周波ブレードで真っ二つにした。鮮やかな切り口ができると思ったとたん、高周波振動を受けたスライムが無数の破片となって広範囲に飛び散る。
「きゅぅぅぅぅ～。いや～んですぅ」（Ｖ）
　スライムまみれになって、神代明日香は後退した。
「魔法だけじゃないんだぜ。おや、なんで、こんな所にあの海賊がいるんだ！？」（Ｖ　チェインスマイト）
　パラミタ虎を遠当てで気絶させた緋桜ケイが、シニストラ・ラウルスを見つけて言った。
「なんだと。奴らも海賊なのか。だとしたら、この俺様に挨拶もないとはけしからん」
　その言葉を聞いたクラッチ・ザ・シャークヘッド（くらっち・ざしゃーくへっど）が、つかんでいたパラミタ猪を地面に叩きつけて唸った。
「えー、やっぱり、あの人たち悪い人なのー。だって海賊なんだよね」
「いや、俺様だって海賊だぞ」
　クラッチ・ザ・シャークヘッドは、びびるウッド・ストーク（うっど・すとーく）に対して、自分を指さしながら困ったように言った。
「ちょっと、気を抜かないでよね！」
　アスパー・グローブ（あすぱー・ぐろーぶ）が、クラッチ・ザ・シャークヘッドの巨体を突き飛ばして、突っ込んできたパラミタ猪にぶつけて楯にした。
「ぐおおぉぉっ……きっ……貴様ぁぁ！！　後で……叩き割って……やる……」
　真正面から激突して、両者ノックアウトになる。
「ふええ、痛いの痛いの飛んでけ～」
　半べそでしゃがみ込んだセレンス・ウェスト（せれんす・うぇすと）が、なでなでとクラッチ・ザ・シャークヘッドにヒールをかけた。
「もう、危ないから、下がってろよ。女王器なんてどうでもよかったけど、俺たちに手を出す悪い奴らだと分かったから、もう容赦する必要はないぜ。叩き潰してやる」
　ウッド・ストーク（うっど・すとーく）が、セレンス・ウェストに飛びかかってきた強盗鳥をロングスピアでかっ飛ばしながら言った。
「そうよね、いっそ、女王器自体壊しちゃえばいいのかも。そんな物があるから、争いが起きるのよね」
「それはいけません。玄武甲は、ちゃんとココさんたちからミルザム様に渡さないといけないんです」
　クイーン・ヴァンガードである土方伊織が、アスパー・グローブに反論した。
「そこが納得できないのよね。女王器なんてなくったって、女王になる人はいずれなるはずでしょ」
「二人とも、今は戦いの最中です。――ええい邪魔をするな！」
　サーベディヴィエールが、ディフェンスシフトを布（し）いて、忍び寄ってきたお化けキノコをハルバードで真っ二つにした。
「どちらにしろ、中に入れなければ、どうにもならねえな。いっそ、ここで海賊狩りを楽しむか？」
　スプレーショットで足下から忍び寄る毒蛇を掃射しながらロア・ワイルドマン（ろあ・わいるどまん）がココ・カンパーニュに訊ねた。
「それも面白いかもしれないけど、ゲームは始まってるからねえ。一番に玄武甲を拝むのはこの私さ。さあ、道をあけろ！」」
　有象無象に立ちふさがる海賊やペットたちを見据えて、ココ・カンパーニュが叫んだ。
「させるかい」
「それはこっちの台詞だぜ」
　再びココ・カンパーニュに近づこうとするデクステラ・サリクスを、ロア・ワイルドマンが狙撃して下がらせた。
「氷雪よ、敵を封じよ！」（Ｖ）
　さらに、ソア・ウェンボリスが氷術で追い払う。
「こっちだって、邪魔はさせないんだからね」
　シニストラ・ラウルスからラルク・クローディスへの攻撃を、アーミア・アルメインスとともに二本のランスで受け止めたミネッティ・パーウェイスが叫んだ。
「暇は与えないんだよ！」
　素早くシニストラ・ラウルスが下がる所へ、前に出たアーミア・アルメインスが追い打ちをかける。
「大丈夫？」
「ああ、すまねえ。またまだ修行が足りねえなあ。久々に本気になれる相手だぜ」（Ｖ）
　右手につけた光り輝くナックルで軽く地面を叩くと、ラルク・クローディスが立ちあがった。
「さあ、本番だ。これで、仕舞いにしようぜ！！」（Ｖ）
　ラルク・クローディスが、シニストラ・ラウルスにむかって叫んだ。
　
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「邪魔だ！」
　遺跡の入り口にバリケードのように並んだゴーレムを見て、ココ・カンパーニュが叫んだ。
「道を造ります。ガイアスさん！」
「承知した。ふん、一戦交えるかのう」（Ｖ　戦闘開始ボイス２）
　ジーナ・ユキノシタとガイアス・ミスファーンが前に出る。
「一度、こうやってちゃんと呼吸を合わせてみたかった」
　この場に似つかわしくない笑顔で言うと、ガイアス・ミスファーンは左の拳を、横に立つジーナ・ユキノシタの右の拳に合わせた。
「力を貸すよ」
　日堂真宵が、ゴーレムの前に集まっているペットたちにむかってファイアストームを放った。一面が火の海となって燃えあがる。
「切り開け！！」
　ジーナ・ユキノシタとガイアス・ミスファーンが、呼吸を合わせてドラゴンアーツを放った。炎の海が、衝撃波で二つに割れていく。遺跡入り口を守っていたゴーレムが直撃を受けて、倒れた。
「行くよ！　邪魔だぁ！」
　走り出したココ・カンパーニュが、左右から入り口に移動しようとするゴーレムたちを、両手を左右に振って瓦礫に変えた。やや遅れて、学生たちが彼女に続いて遺跡に飛び込んでいく。
「それ以上、入れさせるな！」
　シニストラ・ラウルスが叫んだ。
　すぐさま海賊たちが態勢を立て直して、後続の学生たちが遺跡に入るのを阻止する。
「おやおや、敵もさる者でございますな。リッジョ様は無事入られたようでございますが、どうなりますことやら」
　遙か後方で、傷薬や弾薬を並べた露店を開きながら、三井　八郎右衛門（みつい・はちろうえもん）が面白そうに推移を見守って言った。そんな彼の近くで、なぜか森がざわめく。
「なんでございましょう。何か近づいてきているような……」