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リアクション
マリエルの涙『進軍』
マリエルの耳に、長い長い呼び出し音が響いていた。
不意にぷつっ、と通話のつながる音がする。
「あっ、リネン!? 今どこに……」
『留守番電話サービスに接続します。発信音の後にメッセージを……』
「……あう、やっぱだめだ」
通話を切って、マリエルはぐったりとうなだれた。
「留守電は? 入れてみましたか?」
アリア・ブランシュの問いに、マリエルはこくこく頷く。
「警察に提出されたら迷惑防止条例が適用されるくらい、留守電も着歴もぱんぱんになってるはずなんだけど……」
「それだけやっても連絡がないんなら……やっぱり、なにかあったんですかねぇ」
メイベルがのんびりと言った。
「だろうね。占いの館に突入してから連絡がないのなら、返り討ちにあったと見て間違いないと思う」
セシリアがあごに手を当てて、メイベルの言葉を継いだ。
「リネンちゃんたちは、戦闘が不慣れってわけでもなかったのに……その上、二人がかりだったのに返り討ちに遭うだなんて」
「とーっても強いか、たーっくさんお仲間がいるか、どっちかってことかしらねぇ」
フィリッパが、困ったように首をかしげた。
「先走らせたのはまずかったですね……少人数のほうが刺激しないかと思って任せてしまいましたが……」
ウィングの沈んだ声に、恭司が頷いた。
「……だが、向こうにある程度戦う力があると分かったのは収穫だろう。こちらもそれだけ警戒できる」
「戦うんですか……?」
アリアが、沈んだ声で言った。
「そうならないことを祈るけど、向こうがやる気なら対抗するしかないじゃない?」
アルマが不敵に笑う。
「まあ安心してよ、アリアちゃん。いざとなったら、あたしが榴弾で部屋ごと吹っ飛ばして穏便に終わらせちゃうから!」
「それは穏便とは言わないし、ついでに言えば愛美ちゃんがいるかもしれないんだからグレネードは使えない」
ぽん、とアルマの肩に手を置いて、裕也が苦笑いした。
「えぇッ!? 窓から二、三発打ち込めば一網打尽だよ!?」
「ここをどこの紛争地と勘違いしてるんだ、アルマ……」
裕也が深くため息をついて、頭を掻いた。
「――あっ! マリエルさんみっけ!」
おなかから張り上げた元気な声がして、マリエルははっとした。
遠くでぶんぶんと手を振っていたミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)は、あっという間に廊下を駆け抜け、マリエルの前までやってきた。
「ちゃわー。聞いたよ、愛美さんいなくなったんだって?」
息ひとつ乱さず、ミルディアは明るく微笑んだ。
「あっ、うん。でも、誰から?」
「ああ、梅木君から。あたしもバスケやってるからさ、それ関係でね。んなわけでマリエルさん、困ってるならあたし、力になっちゃうよ!」
ふふん、とミルディアは薄い胸を張った。
「ありがと、えっと、ミルディア! ちょうどね、これから、多分犯人だと思う人のとこへ行くとこなの」
「犯人!? じゃ、愛美さん誘拐されたの!?」
「決まったわけじゃないけど、たぶんそう」
マリエルがしゅんと顔を伏せる。
力強いミルディアの両手が、マリエルの肩をがっと掴んだ。
「そーゆーことなら、安心して。荒事なら、あたしが体を張って守るから!」
「ミルディア……」
「それにね、あたしこれでも白百合団のメンバーなんだよ? 腕っ節にはちょっと自信あるからさ。任せてよ!」
「うんっ! ありがとう!」
マリエルが大きく頷いて見せると、みんなの顔にかすかな微笑みが広がった。
「……よい士気ですね」
翡翠が、落ち着いた声で言った。
「うっし、んじゃ行こうぜ! いざ、占いの館へ!」
レイスの掛け声に、マリエルたち一同は「おおっ」と声を合わせた。
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