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リアクション
爆発音が1つ、続けて2つ3つと鳴り響いた、その衝撃で床も揺れた。
ベルバトス ノーム(べるばとす・のーむ)教諭の研究室内において、葉月 ショウ(はづき・しょう)と姫神 司(ひめがみ・つかさ)が状況確認の為に動き出そうとした時−−−
部屋の天井が崩れて落ちた。
先程よりも小さな爆発音の後に天井が落ちて来たのだ。
とっさにジェニファ・モルガン(じぇにふぁ・もるがん)が、透き通る水晶のユイード・リントワーグに覆い被さり護ったが、落下する天井と共に2つの影が飛びかかってきた。
「くっ……」
ユイードを壊そうとしたのだろう。繰り出された拳をショウは高周波ブレードで受けた。
「なっ! チェスナー!!」
視界に氷術が迫ってきているのが見えた。
パワーアシストアームを装備しているからであろうか、チェスナー・ローズの腕力にショウは圧され動けないでいた。
「ふっ」
司の爆炎波が氷術を砕いた。術の使い手はミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)であった。
「そなたたち……」
皆まで言わなかった。2人の瞳は赤く染まっている。ならば今は、何を言おうとも効果は無い。
「きゃっ!!」
「がっ!!」
倒れ込むジェニファとマーク・モルガン(まーく・もるがん)。全身が水晶化したままのユイード・リントワーグに並び立った、フラッドボルグが姿を見せた。
「自分が動く時には派手に動く… 相変わらずだねぇ… フラッド」
「ノーム… それに見た顔も幾つかあるな、良き再会だ」
「人の部屋を壊しておいて、よく言うよ」
飛びかかろうとするショウの前に腕を出して、教諭は顔から笑みを消した。
「その娘を、どうするつもりだぃ?」
「破壊する。修復できない程に、粉々に」
「なぜだぃ? なぜ、その娘を狙う…」
「それを考えるのは、お前だろう? ノーム、当ててみろ」
フラッドボルグは拳を握り、腕を胸の前に構えた。
「たった一人の標的の為に君が出てきた… その娘には、それだけの価値があるという事だよねぇ」
「さぁな、果たして標的は一つであろうか」
「なるほど、確かに君は言ってない、でも、君がここに居る事が、その娘の重要度を物語っていると思うけどねぇ」
「ふっ、詭弁だな。お前こそ、相変わらずだ」
まっすぐに。視線がぶつかる。
「その水晶化も… パッフェルに狙わせたのも君の仕業かぃ?」
「………… 時間切れだ」
「待てっ−−−」
ガシャアァァァァアアァァン!!
振り抜かれた腕が、胸を砕いた。続けて振り下ろされた拳が胴から足まで打ち砕いた。
最後に落ちた頭も、ガラス細工の様に砕けて散った。
「なっ… 何で…… どうしてこんな酷いことが出来るの!!」
葉月 アクア(はづき・あくあ)が叫ぼうとも、フラッドボルグは表情を変えない。それどころか、俯く教諭を見て、笑みを浮かべていった。
「また生徒を護れなかったなぁ、ノーム」
「………… 答えろ、フラッド……」
俯いたままに、震わせたままに。
「なぜパッフェルが先に来た… なぜ水晶化なんて真似をさせた…… 彼女を消すためだけに、イルミンスールを襲わせたのか……」
誰一人として動かない、動けなかったのだが、誰一人。教諭は今も動かなかった。
「パッフェル嬢は、勝手に動いただけだ、俺は何も指示していない」
口元が上がってゆく。
「可愛い事に、俺らの指示を聞くような奴等じゃないんだが。聞けば、目覚める可能性のある華を放置したままだって言うんでな」
「………… わざわざ君が?」
「あぁ。これ以上、裏切りの華が増えると、こちらも色々と厄介でね」
「裏切りの華………… クイーン・ヴァンガードに目覚めた剣の花嫁の事かぃ?」
「ふっ、話しすぎたな−−−」
「話しすぎだよ、ありがとう」
いつもの不気味な声をして、上げた顔は笑んでいた。
教諭が手を挙げると、壁際でジェニファが毛布を掴んだ。包まれた毛布を剥ぐと、全身を水晶化されたままのユイード・リントワーグが姿を現した。
「砕いたガラスは片付けておくれよ、ケガをするかも知れないからねぇ」
目を見開くだけにして。言葉は、出ないようだった。
「こんな古典的な手に引っ掛かるとはねぇ、くっくっくっ、おかげで色々と聞けたよアリガトウ」
「ふっ」
教諭の笑みに対するように、彼も再び笑んんでいった。
「強者の余裕とでも言ってくれ。パッフェル嬢も俺も、隠密行動は性に合わないようでな」
「能力と性格は必ずしも一致しないんだ。正に、良い例だねぇ」
「全くだ」
笑みながらも、目は獲物を狩る鋭さを。
「さぁ、第2ラウンドと行こうか」
半壊、崩れた研究室の、扉の向こうの廊下から、瞳を赤くした生徒たちが現れた。
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