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五機精の目覚め ――紅榴――

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五機精の目覚め ――紅榴――

リアクション

「な、何だ、何が起こってるっていうんだ!?」
 PASD先遣隊の一人は、自分が直面している状況がまるで理解出来ていなかった。
 眼前には、少し前まで共に調査をしていた隊員達が物言わぬ姿で転がっている。
「早く逃げろ! 伝えるんだ、『来てはならない』と」
「しかし、隊長……」
 隊長、と呼ばれた男が彼を逃がそうとする。
「このままだと全員お陀仏だ……くそ、おとなしく引き返していればこんな事には」
 その時だった。
「隊長!」
「俺はいい、さっさと行け!」
 五本の刃で串刺しにされる隊長。暗闇を照らす光術の光に映ったのは、「赤色」だった。
(く……!)
 歯を強く噛みしめ、振り返る事なく上階へと向かって彼は駆け出した。
(無線は、本部への連絡は!?)
 走りながら無線を取り出そうとする。それが使えなくなっている事も忘れて。

 ――そんな馬鹿な!?

 通路の先には心を持たぬ機械の兵隊の姿があった。調査開始時は動いていなかったそれらは、彼をじっと見つめている。
(……っ!!)
 その時、自分の足を何者かに掴まれるのを感じた。
「た、助けて、助けてくれ!!」
 隊員の一人が地べたに這いつくばっている。その彼の両足は吹き飛ばされ、顔も半分焼けただれていた。
「痛い、足が、目がうわあああ!!!」
 悲痛な訴えも空しく、機械の兵の銃口が火を吹き隊員をただの肉塊へと変える。

 ガチャリ

 次はいよいよ彼の番だ。
(いやだ、こんな所で死にたくない!!)
 だが身体は震え、その場から動く事は出来なかった。恐怖が彼を支配していたのだ。

――君で最後だよ。ご苦労さま。

 視線の先の人影を見る。
(なんで、気付かなかった……)
 裏切り、否、違和感は始めから存在していた。先遣隊に紛れていた、その人物は静かに彼を見下ろしていた。

――これも「仕事」なんでね、悪く思わないでよ。

 極限の精神状態の中で彼は一瞬、眼前の暗闇に閃きが訪れるのを感じた。

 雷鳴を思わせる轟音、それが彼の意識が落ちる前に聞いた最後の音だった――