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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第1回/全2回)

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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第1回/全2回)

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【第5章 王座の間】

 ミケロットの手には二丁のシャープシューターが握られている。
 王座の間に続々集まってくる生徒達。
 羽入 勇(はにゅう・いさみ)が明らかに様子のおかしいミケロットを説得しようとする。
「ミケロットさん…あなた、誤解しているよ」
 勇が語りかける。
「藤野家の真珠への扱いに怒りを覚えてるって言ってたね。でも、それは違うんだ。真珠のおじいちゃんは、真珠が当主になるには辛すぎるって、だから当主にさせなかったって静麻さんから、ボクは聞いたよ。それを誤解したままでいて欲しくない。おじいちゃんは真珠が可愛いって。でも、辛かったって。…ミケロットさんには真珠の笑顔を大切にして欲しい。ミケロットさんは、皆の相談にのってくれたりしたり、いまだに初恋の人を大切に想っている人だよね! そんな人が、真珠の本当の気持ち、分からないわけ、ないよね!」
 と語りかけると、眉間に皺をよせ苦しそうな顔をするミケロット。
 宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)
「あなたの持っていたロケット、真珠が持っていたロケットと同型だったわね…もしかして、ルクレツィアさんからもらったものじゃないの? そんなものに爆破物を仕込むのは、あなたにとって辛かったのではないの? あなたに戦う理由なんてあるの?」
 だがミケロットは
「そういうわけにはいかない」と戦う姿勢を見せる。
「真珠は、ぼくらといた方が幸せなんだ!」
 と言い切るミケロットであるが、その目には迷いがあり、シャープシューターの射的にもブレがでる。
 刀真は赫夜達を背後に守るようにして、ミケロットの攻撃をはね除ける。
「俺はこの主役達を囚われのお姫様の所まで連れて行くのが役目でね、邪魔するなよ…殺すぞ」
「殺しちゃいなよ」
 その瞬間、シャムシェルが姿を現す。
「シャムシェル・ザビク!」
「みんな殺せばいいと思うよ。全員で殺しあいをすればいい。そしたら、どんなことになるんだろうね? 凄く、見てみたいなあ」
 くすっと笑いながら、シャムシェルはそれでもミケロットに顎で王座の間へ退避するよう、指示すると、自分も一度、星剣、還襲斬星刀を鞭状にして振るうと、ミケロットから預かった小型爆弾を爆破させ、赫夜たちを足止めする。

 その間に既にアンジェラ隊やネッリ隊が王座の間に駆けつけているようだった。バッソ隊、改め、ダンツオ隊はまだ、到着できていない。

 爆破が収まると、そのまま駆け出した赫夜たちは大きな「王座の間」の扉を開く。

 そこは豪奢な深紅の色を基調とした天鵞絨が敷き詰められ、天井には美しい天使が舞う姿と、星座の数々が描かれていた。
 そして、その一番最奥にケセアレと、王座に座らされている真珠がいた。
 真珠は真っ白なドレスを着せられて、その肩にケセアレの手が置かれている。
 一瞬、『ひい様』と真珠が重なる赫夜。
「ついに来たか…セルバトイラの赫夜…見たまえ、この真珠の美しさを。真っ白なこのドレスはルクレツィアの一番のお気に入りだったものだ。まるでルクレツィアが帰ってきたようだぞ。」
「…はじめてお目見えするな、ケセアレ・ヴァレンティノ! 真珠は真珠だ。確かにお母上のルクレツィア様と似ているのは当然だ。だが、ルクレツィア様が生き返った訳ではない! 我が妹、藤野真珠を返して貰おう!」
 赫夜は星双頭剣を抜く。
「ふん、血も繋がらぬ所詮は十二星華のお前の妹? 恥ずかしいことを言うな。真珠はこの城で私と暮らすのだ。それが真珠の幸せだ。なあ、真珠」
 真珠の顔をケセアレの手のひらがすうっと撫でる。
 しかし、其れまで黙っていた真珠が叫ぶ。
「姉様!」
「真珠、待っていろ! 直ぐに助ける!」
「…姉様! 姉様!」
 そして真珠はにゃん丸の姿を認めると腰を王座から浮かせて更に叫んだ。
「にゃん丸さん! …にゃん丸さん、傷は、傷は…大丈夫なの!?」
「ふふふ…俺様は不死身なのさ。…真珠、これ以上休むと留年だぞ!」
 油汗を隠して空元気なにゃん丸。
「にゃん丸さん…!! ……私、ここに来てから決めたの。ある人に言われたわ。 自分で何かを決めたことがあるかって。…今までの私は、自分では何も決めてこなかった! それを全部、人のせい、環境のせい、私以外のせいにしてた。ばかだった!! だから決めたの! 絶対留年、なんか、しない! 学校へいくわ! あなたと一緒に! ここは私のいる場所じゃないわ!」
 と叫ぶ真珠。
 その言葉に驚くケセアレと微妙な顔をするミケロット。
「何を言うんだ、真珠…強くなりたいと、言っていたではないか」
「伯父様、違うわ、伯父様の言う強さは本当の強さなんかじゃないわ。誰かに貰って手に入れた強さは、直ぐに壊れてしまうの。だから伯父様が私に呉れた指輪も、壊れてしまったでしょう!? 私、それを見たの、知っているの!! だからここにはいられないの! …きっと母様もそうだったんだわ。母様は父様と新しい人生を自分の手で足で、切り開こうとしたかったんだわ! 母様は父様のこと、大好きだった。父様は母様のことを愛していた!私はそんな父様と母様に愛されていたし、お祖父さまにも、姉様にも、愛して貰ってる! みんなに、愛して貰っている! だから私はここにはいられない。みんなのところへ愛を返しに行くの!」
「真珠! では、私がルクレツィアを愛していたことはどうなる!? お前を愛している私はどうなる!」
「ケセアレ伯父様…!」
 イーオンがバーストダッシュで真珠を救い出そうとするが、アンジェラの鞭がイーオンの足を打ち、イーオンは地上に倒れる。