リアクション
* 「ウォーレン! よく、無事で……」 「レオン。……」 感慨を噛み締め、しかし今は伝えねばならないことがある。 「レオン、このテント山は……」 「……何」 ウォーレンは、敵陣で掴んできた情報を伝えた。彼は、戦闘中、情報を持ち帰るため故意にイリーナのパートナーに捕らわれる演技を見せたのであった。 「急がねば。ウォーレン、ここは我らに任せひとまずは後方で、休むと……ウォーレン?」 ウォーレン。どこへ行く。 ここに至るまでに、ウォーレンにも色々重いことがあったのだろう。今は、そっとしておくのが良いか。 レオンハルトは、全軍をテント山から退かせる。 「マッドモモ……いないの? 何、撤退命令?」 敵将を討ち取らんとやっきになっていた豹華も、驚く。 * 「めいべる。おれは、オークシリーズ・黒羊郷探訪のあと職を失いてんてんとし、そして自爆兵団長に就職したのだ。 めいべる。このテント山は……罠だ」 山頂が、爆発し、吹っ飛んだ。 * ウォーレンは陣地へ戻っており、少し元気のない様子だったが、シルヴァの質問に答えていた。 「聞かせて頂きたい質問は三項です。 ジャレイラの求心力? ジャレイラが止まれば、黒羊軍は止まるか」 「"しるしの女"としての話も聞いたぜ。族長たちから聞いた、戦いの話だけじゃない、"しるしの女"としての話…… 黒羊軍が族長たちにしたことを忘れるなどはできない。ただ、彼ら族長らが信じた彼女と、彼らが求めた平穏も忘れはしない。 ジャレイラは、部族たちの信を得ている」 「黒羊軍だけじゃない、部族たちも……」 おそらく、ジャレイラと共に戦った者たちは、ジャレイラと同じ信念を共有した。戦うことを止めない、か。疑問を持っている部族もあるが、根っこの部分ではジャレイラを信じている。ジャレイラが死ぬようなことがあっても、最後まで戦うのだろう。 「黒羊軍内での派閥構成は? 一枚岩でないなら各派閥の代表など」 メニエスの名が挙がった。 「メニエス。何を企んでいる……」 綺羅瑠璃。虚ろな瞳で、もしかしたら操られているのかもしれないこと。しかし、指揮を預かり今までの通りジャレイラに忠実に従い攻めてきていることは事実。ジャレイラをどうにかせねば、ここは崩せないかも知れない。 鴉賊にはもう頭もおらず、こちらに抵抗できる兵力は残っていないだろう。 「シャトムラ(しゃとむら)?」 後方を預かる指揮官であり、黒羊教の敬虔な信徒であるらしい。 「ふむう……」 レオンハルトは方針を固めた。 ジャレイラを捕虜にする。そのための条件は整いつつある。 「ここからは、痛み分け上等、陣地の被害は覚悟の上。 戦術的勝利より戦略的な勝敗に於いての逆転を狙う」 不敵に、微笑んだ。 * テント山は、消し飛んだ。 落馬し、山を転がり落ち(なんてイメージは全然似合わないお姉さんなのだけど)、ともあれ爆発に巻き込まれるのを免れたフィリッパ。 葉っぱで小さな船を作り、そこにシャンバランフィギュアを寝かせて、東河に流す。 しゃがみ込んで、ぼうっと流れていく小船を見つめるフィリッパ。 「さようなら……シャンバラン。 さようなら……メイベル」 シャンバランフィギュアの隣にはそっと、メイベルフィギュアが添えられていた。フィリッパの手作りだ。世界に一体しかない。セシリア・ライトの分は、撲殺っ娘らしく、石ころ辺りで……メイベルフィギュアの頭の上の辺に置いておいた。 こうして霊を弔うと、シャンバランとメイベルの墓も作った。墓石には、手書きで"シャンバランとメイベルのはか"と記す。 「シャンバランとメイベルのはか……シャンバランとメイベルのばか。……ばか……」 嗚咽が漏れる。フィリッパは、声を押し殺して、泣いた。 「このふぃぎゅあも、一緒に流してあげてくださいですぅ」 「え、ええ……いいですわ、……は、あっ。メイベル……! セシリア……! そ、それに……」 ぼろぼろになったメイベルとセシリアが帰ってきた。二人が抱えているのは、ユハラ……じゃなく、巨大な漢。 「え、それフィギュア……?」 「いえ、こちらですぅ」 メイベルの手に、何故か怒鳴堵濁酢憤怒一世ふぃぎゅあがあった。 怒鳴堵濁酢憤怒一世は、メイベルを抱え、爆発の中、ひた走った。 「めいべる。ひゃっはぁ。おまえがすきだ。めいべる……」 山の麓で、そう最後の言葉を言い残し。 怒鳴堵濁酢憤怒一世のはか。「これでよし、ですぅ」怒鳴堵濁酢憤怒一世のばか。シャンバランのばか。 「怒鳴堵濁酢憤怒一世に、シャンバラン……こうしていると、オークシリーズを思い出しますぅ。 そして黒羊郷探訪、南部戦記……このシリーズも、もうすぐ終わりですね……」 |
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