リアクション
prologue 何故。……ジャレイラは、自らに問うていたのかも知れない。静かな、どこもかしこもただ蒼いばかりの空間をどこまでも、歩いていくジャレイラ。どこまでも、緩やかな坂を下っている、という気もする。何処だろう。夢かも知れない、それとも、……。 四方の色が、種々に移り変わっていく。そしてそのあちこちに輝いている星屑。 どこからともなく波が押し寄せ、さらっていきそうになる。 何だ。あれは? キリンちゃん。キリンちゃん。…… 高い空を、誰か呼びながら飛んでいるのは人形のカナリーなのだけどジャレイラにはわかる由もない。 今度は、ジャレイラを呼ぶ声がする。 この声なら、聞き覚えがある。 綺羅瑠璃(きら・るー)か。どうしたのだ。どこに…… 誰かが、坂を上ってくる。 沙鈴(しゃ・りん)だ。ジャレイラには、誰かわからない。もっとも、この場所では人の姿をとって現れているわけではない。さっきのカナリーのように人形であったり、沙鈴のようにおっぱいだけの存在であったり…… シャリンさん。シャリンさん。…… 近くに聞こえていた瑠璃の声が、沙鈴の名を呼びながら、遠ざかっていってしまう。瑠璃……? 行ってしまうのか。いや、ジャレイラがぐんぐんと、下へ下へ下りているのだ。 ……ここは何処だろう…… やはり、夢か。しかし、知らない者もいる。 さっきの者たちのように、ここを訪れている者は何でここを訪れている。皆、どこからきてどこへ行こうとしているのだ。それに我は何故。…… 空間がゆらぎ、また声が響いてくる。 また、ジャレイラを呼ぶ声。今度は、知らない声だ。 誰? 「如月 和馬(きさらぎ・かずま)という。 今、夢の領域からジャレイラの夢に干渉している。いきなりの登場でぶしつけかも知れないが、悪く思わないでくれ。 だが、ここは夢の深い部分。あなたの夢でありまた全ての夢ともつながっているオレたちの共有する普遍的な無意識の世界と言えるだろう」 どうしておまえは、我にこうして問いかける。何を問いかけるのか。 「オレが今この領域に来ているのは、オレが……(自称・異次元騎士カズマだから(自由設定より))。いや、それはいい。 できれば、南部で戦うすべての者に夢を通じてこの声が届けばいいのだが。 この戦いを裏で操っているのは、エリュシオン帝国。この南部だって一つにまとめられれば敵も厄介だろうから、火種を巻き争いを起こさせている、と見ることもできるだろう。逆に、ここが一つにまとまることができれば……それは、ジャレイラも含めてだ。ジャレイラ。オレはジャレイラがその指導力をもった者として、……オレたちと……共に…… ……」 声が、かき消えていく。 エリュシオン? ジャレイラはふと、自分の故郷を垣間見たように思う。だけど、それはもう自身にとって帰る場所ではない。 もう、遅いのだ。帰る場所はない、今から我が向かうのは…… * 【十二星華編】『ヒラニプラ南部戦記〜第2回〜』 ◆プロローグ 戦いの続きから…… ◆第一部 1章 前線と本営 2章 存亡 Barbaroi 砂漠の勇者 ◆第二部 3章 死の谷決戦 4章 ジャレイラ(2) 黒い翼 ◆第三部 5章 水軍(水上砦攻略/ブトレバを巡って) 6章 オークスバレー(2) 7章 南部諸国 白百合の園 ◆第四部 8章 ハルモニア解放後 炎と踊る男 9章 黒羊郷 ◆あとがき(マスターコメント) ・・・・・・ p42 ※目次《詳細版》は次頁にあります。 |
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