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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第2回)

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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第2回)
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2-02 ドストーワ
 
 章冒頭に登場した、砂漠を西の果てに進むレジーヌと、パートナーのエリーズ
「ね、ねこ?」
 はっきりと形は見えないが……
「ねこ……」
 羽の生えた、猫。のように見える。猫が、飛んでいく。
「ワタシたちと同じ方角ですね」
「ねこ飼いたい」
「……」
 進むと、ほとんど水の干上がったオアシスがある。
 そこに佇む影。
 エリーズは剣を取る。
「いえ、待って」レジーヌはそれを静止し、武器も取らずに前に出る。
「レジーヌ?」
「ワタシに共鳴している……」
 影は佇んだまま応えた。
「貴公の弱々しさの内に芯の強さを見た」
 水が蒼く光放ち、その影の姿が浮かび上がった。
「拙者は徐 晃(じょ・こう)。契約を申し出る」
 手には、先に大斧の付いた長柄を持つ。古の武将。目は、優しかった。
「行こうぞ。ドストーワはもうすぐでござる」
「わぁ。カッコいい。レジーヌ? ああいう方はどう?」
「え、ええ……」レジーヌはフードで顔を隠した。「行きましょう」



 ドストーワは、とびねこ被害に悩まされていた。
 毎年一定の被害がありそれは致命的なものではないが、今年は現状のように戦時下であり、食糧難になれば遠征する兵を出せない。
 主に、砂漠芋などの収穫のときを狙ってくる。どれだけ護衛を配しても、その数や百二百ではなく、すべてを護りきれないのだ。しかも、戦術にもそれなりに長けており、獣人兵と言えど侮ると怪我をさせられる。
 裏の山岳に生息しているのだが、高所に巣を作っているため、獣人らはこれを駆逐できないでいた。
「拙者ども、とびねこ退治の専門家でござる。この道、五十年」
 徐晃は、しごく真剣な表情で述べた。ドストーワの執政官は是非とも退治を依頼すると応えた。
「手が届かぬなら、誘き出せばよろしい」
「しかし、今、収穫期ではない。おそらく来ぬぞ。
 次の収穫は、まあもうすじゃが……。次が上手くいかないともう兵は出せなくなる、対策は練っておきたいのう」
「その前に、潰してしまうのがいいでござろう。
 心配後無用。
 仲間に、とびねこを誘き出させる」
 蔵を二つ、用意できるかと彼は問うた。
 兵らは、一つの蔵を豪華に仕立て、しかし中身は空にした上で、警備を厚くした。適度に戦ったら、兵を退かせ蔵に入らせ閉じ込めてしまう。
 もう一方の蔵に、今ある食糧をすべて移しておく。
 とびねこに接触したレジーヌとエリーズは、
「とびねこさん。さっきは手荒な真似をしたごめんなさい」
「いいにゃ。おれたちひもじいにゃぁ。たべものくれたらゆるすにゃ」
 二人は、山の麓まで行き、飛びかかってきたねこを倒し、家まで案内させたのだった。
 あらかじめ徐晃と示し合わせておいたように、豪華でない方の蔵の襲撃を示唆した。
 とびねこにとっては例年以上の餌を得る結果となり、また、ドストーワは三日月湖方面への最出兵を諦めざるを得ないこととなった。ドストーワは、黒羊郷へ食糧・物資の援助要請を頼みに、使者を送り出した。
 黒羊郷は食糧の貯蔵庫を持っており、臨時の際にはいつでも、ここから蓄えを出せるようになっている。
 同盟国として、最大の戦力であるドストーワが兵を出せないとなれば、これに応じてくれぬことはないだろう。

「やったぁ。レジーヌ、これで私たちもふもふできる?」
「戦争が終わったら……」
「もーふ、もふ♪」
 徐晃が戻ってくる。
「徐晃さん、サングラス……その格好で?」
「うむ。本当は……早く戦争を終わらせ、彼らにも食糧を戻してやるべきでござろうかな」
「とびねこさんも、第四師団で雇って食べさせてあげられたら、いいかもね」