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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第2回)

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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第2回)
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2-03 アジト

 さてこちらは……
 少し、前章に遡る。三日月湖から遠く北へではなく、南へ、谷間の宿場を抜け、ほぼ草原地方に至る付近。
 本営から盗賊の一団を討伐に向かった林田樹(はやしだ・いつき)率いる騎狼部隊、エル・ウィンド(える・うぃんど)ら黄金の鷲は、ここで盗賊の一団に出くわした。
 数は、100程か?
 相手もすぐにこちらに気付いた。そのまま遭遇戦になる。射手が、矢を向けてくる。
 エルのファイアストームが炸裂する。
「ファイアストーム!」
「ぎゃぁぁ!!」
 ジーナが前に出た。
「喰らえ6連ミサイルポッドー、なのです!」
「うぁぁ!!」
 敵は早くも怯んだ。
 騎狼部隊が回り込み、敵の退路を遮断する。
「とにかく、奴さんが動けなくなることが大切だもんね」
 緒方は爆炎波で周囲の草木を焼いて、敵の動きを封じた。
 この勝敗は、あっけなく決した。
 敵は降伏し、捕虜となった。
「早速、尋問か。この役目は……」
 ばっ。「(あたし、あたし!)」ばっ。シャンダリアが挙手。
「そ、そうだな。シャンダリアが、適任だろう……」
 今度こそとばかりに、シャンダリアが尋問を開始した。
「エルは、あっち行ってていいですから。
 さあ気合入れ直して、と……えへん。
 ええ、この戦争を一刻も早く終わらせるために、食糧・物資の一大拠点といわれている場所を教えてくださいな。
 戦争が終われば、あなたたちも早く故郷へ帰ることができるし、犠牲者が増えることもないと思うの。
 あなたたちにも大切な家族がいるんでしょう? ね、お願い!」
 シャンダリアのウィンクに、盗賊たちの目がハートマークになった。
「……」
 シャンダリアは、少し待ってみた。盗賊たちの頬が、紅くなってきた。
「……で」
 しばらく経って、シャンダリアが尋問を終えてくる。
「エル」
「ええと……何かわかったかな。肝心の、敵の一大拠点の場所とか……」
「えっ。敵の一大拠点……の場所も、知らないの?!
 あんたなんかに教えてあげるわけないでしょ!
 あたしだって忙しいんですからねっ!
 ……きっ聞かないの? 聞いてくれないの??」
「あ、ああ。その、……教えてください」
 シャンダリアが尋問したところ……盗賊は、西の山にアジトを持つ盗賊の一党であった。
 そしてこのアジトというのが……
「付近から奪った食糧や物資を、貯えている?」
「どうもあやしいな」
 エル、林田はそのまま草原地方に入り、西山ルートを辿ることに……そして待ち受けていたのは。



 西山ルート。実際には、数日の旅となる。経度で言えば、三日月湖から北の森を越え砂漠に至る付近と同程度になる。奥地ほどではないが標高は高い。
 これが、盗賊のアジト……
 それは、山中に屹立するまるで巨大な城塞であった。林立する尖塔には、見張りらしき兵がきちんと配備され防備にも余念がない様子。(この文章……つまり、「黒羊郷探訪 第2回」(p17)に出てきた盗賊のアジトである。)
 しかし……ここまで来たのだ。もうやるしかない。補給線も断たれて、第四師団には、あとがないのだ。(ちなみに、上記「黒羊郷探訪 第2回」では、無論、多勢に無勢もあったが、騎凛、マリー、朝霧、ルイス、ユウという第四師団きっての猛者どもが揃っていたにも関わらず、抗しきれずかつ数日におよぶ執拗な追撃からかろうじて逃れる結果となっている。)
「黒羊郷の激戦から生き延びたオレ達だ、こんなところで負けはしないぞ!」
 パントルが、つぎはぎだらけの騎狼旗を掲げる。
 こちらの数は、100に満たない。同数程度の盗賊団は難なく倒した。しかし、このアジト、潜む敵はその二倍、三倍か……?
「私はもう、迷わん!」
 林田も、銃をしっかりその手に握る。
「そうだ。まさしく」エルは、呟く。「ボクたちに、策がある。ギル」
 ギルガメシュ、頷く。エルらは、黒羊軍の装備を持ってきている。ここは、黒羊軍の利用する食糧・物資の拠点になっているのだ。これは、使えるではないか。
 だが、間違いなく、激戦が予想される。
 騎狼部隊の林田、ジーナ、緒方、パントル。黄金の鷲のエル、ギルガメシュ、シャンダリア。この一戦に、勝機は見えるか。