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第三章 オルディオンを探して
 険しい顔をしながら、アルツール・ライヘンベルガー(あるつーる・らいへんべるがー)は、ミルザム・ツァンダ(みるざむ・つぁんだ)の傍を歩いている。
「アルツールさん、そんなに怖い顔をしていたら、オルディオンに会えたとしても逃げられてしまいますよ?」
 苦笑いを浮かべるミルザム。
「油断は禁物なのであります。敵は魔物だけではないのですぞ」
 鋭い視線と言葉をミルザムに向ける。気圧されてしまった彼女は、うっ、と口を閉じてしまう。
「まぁまぁ。二人とも」
 少しばかり悪くなってしまった空気をなんとかしようと、イルミンスール森の精 いるみん(いるみんすーるもりのせい・いるみん)が朗らかに笑う。
「アルツール、ヘタに気張っていると戦闘になった際にいつもどおりに動けなくなるぞ。だがミルザム、この森はいつものイルミンスールの森とは違う。のんきに構えていてもいいというわけではないぞ」
「そうですね……。ごめんなさい。アルツールさん」
「いえ……過剰警戒にならぬよう、俺も気をつけるとします。と、誰かいますな」
 遠くのに目を向けたアルツールは、二つ人影を見つけた。
「おう、やっと見つけたぜ。ミルザム様」
「ヴァルさん。会うことが出来てよかったです。もう森の中に入っていると聞いたので……。あっ、あと、提案の件ですが、大丈夫ですよ」
 ミルザムの言葉を聞いたヴァル・ゴライオン(う゛ぁる・ごらいおん)は嬉しそうにガッツポーズを決める。
「よし! 捜索の効率が上がるぜ〜。超上がるぜ〜!」
 彼は、事前に根回しをして、探索チーム間で情報を検索できるように、巨大サーバ通信ポートを設けてもらったのだ。
「蒼空学園かクイーンヴァンガードという話でしたが、一応両方作っておいたので、役立ててくださいね」
「マジか!? 助かるぜ! ゼミナー、お前も情報まとめんの手伝えよ!」
「承知したのだよ」
ヴァルの命令を承諾する、パートナーの神拳 ゼミナー(しんけん・ぜみなー)
「情報の書き込みはあるのかな……。ん?」
 常時発動させていたディテクトエビルに反応があった。
(誰だ――)
 周囲を注意深く見渡すも、特に魔物や敵の気配はない。
 やがて、反応は消えてしまった。
(気のせいだろうか……)

 ――ふっ、勘が鋭いやつがいるようだ。楽しめそうだな。


 同じく森の中。
「よ〜し。こっちですわ」
 リリィ・クロウ(りりぃ・くろう)は、棒っ切れが倒れた方向へと向かって歩いていく。
「いやいや! おまえ遭難志願者かよ!? もうちょっと真面目に道を探そうぜ」
 うんざりしたような口調で、カセイノ・リトルグレイ(かせいの・りとるぐれい)が言う。
「え〜。でもカセイノさん、『おまえの勘は当てにならね〜』とかさっき言ってたじゃないですの〜。だからわたくしは、天に運命を任せて、正しい道を探しているのですわ」
「天じゃねぇよな? 明らかに枝だよな? 枝のバランス感覚に自分の命をベットしてるよな?」
「む〜。カセイノさん、わがままですわ」
「足跡とか探したほうがぜって〜効率いいに決まってんだろ……」
 肩を落としてしゃがみこんだその時。
「お前たち! そこで何をしている!? 何者だ?」
 綾刀を佩いた男が現れた。
「げっ……あいつ、噂の怪しい集団の人間じゃね?」
「っぽいですわね……確かめてみましょう」
 小声で相談する二人。それを変だと思ったのか、
「なにコソコソ話している!? ますます怪しいヤツらだ。合言葉を言えっ!」
 綾刀の柄に手をかけながら叫ぶ男。
「ああ、いえ……わたくしたち……じゃなかった、ウチら〜、新人なんで〜、わかんね〜っす」
 悪ぶった口調で返すリリィ。
「はぁ? なんだよ……。オルディオンを捕まえなきゃならねーんだぞ。チームワークが悪いってだけで効率ダダ下がりなんだからよ、しっかりしてくれよ。ゴースト兵器の実験もあるんだからちゃっちゃと済まそうぜ」
「すいませ〜ん……」
 頭を掻きながら、カセイノも愛想笑いを自分の顔に貼り付ける。
 二人に呆れながら、男はとぼとぼ近寄ってくる。
「まぁいいや。合言葉はな、『援軍呼ぶなら、リーザスよりゼス』だ」
 その言葉が終わる否や、男はドサッ、と地面に倒れ伏した。
「はいどーも。助かりましたわ」
 つい今男の頭に振るったホーリーメイスをしまいながら、リリィは微笑む。
「なんつーだまし討ち……」
 リリィに若干の恐怖と軽蔑を覚えていると、
「おい、一体何があった!?」
 怒号と共に、複数の足音が響いてきた。どうやら、男の近くに多数の仲間がいたらしい。
「ちょ、やべーって! おいリリィ――うわ、もう逃げてやがる! くそっ」
 必死に足を動かしはじめるカセイノ。振り返ると6〜8人ほどの集団がこっちに向かい始めているところだった。
 リリィに追いついて、何とかしねぇと――
 カセイノは心の中で作戦を立て始めた。


 リリィたちとは別の場所では――
「よし。やれっ!」
「いきます」
相沢 洋(あいざわ・ひろし)の指示を受け、パートナーの乃木坂 みと(のぎさか・みと)がハーフムーンロッドを振るう。
 杖の前方に、魔方陣が展開される。
「気高き水の力よ、氷刃となりて、我が敵を蹴散らせ! ていっ!」
 魔方陣から、無数の氷が現れ、次々と槍衾を作り上げていく。そしてそれは、二人の前にいた男たちへと疾駆し始めた。
「ぎゃあ!」
「ぐはっ……」
 凍てついた氷の刺突を受けて、次々とうめき声を上げながら地に伏していく男たち。
「みと、一人ぐらいは殺さないようにしろよ」
「はい。洋さま」
 オルディオンの居場所を吐かせるため、殺さない程度にダメージを与えて捕獲する必要があった。
 それゆえ、洋は不殺の命令を出していたのだ。
「このような感じでいかがでしょう?」
「うむ。よくやったぞ。みと」
 自分の頭を優しく撫でる洋の姿に、目を細めるみと。
 眼前には、激しい氷術を受けて苦しんでいる男たちがいた。さらに男たちの奥には、腕を抱えながら頭を下げている青年の姿があった。
「助かったよ。ありがとう」
 森を歩き回りながらオルディオンの手がかりを探している途中、謎の集団の構成員たちから袋叩きにされてるこの青年を発見した。
 見捨てるわけにはいかないし、何より情報を得ることが出来るかもしれないと踏んだ洋は、青年の救助を行ったわけである。
「あいつら、オルディオンに酷いことしようとしてるらしいから、尾行して一網打尽にしようと思ったんだけど……。見つかって逆にやられちゃったよ」
「なるほど……。オルディオンについて知っていることがあれば教えて欲しいのだが。あっ、勘違いしないで欲しい。我々はオルディオンを保護しようとしているだけだ」
「ははっ、そんなことは大体見当がつくよ。疑ったりしてないから安心して」
 しばらく笑うと、青年は再び口を開いた。
「オルディオンの居場所だったね。彼は――ああ、オルディオンの性別は雄だから。彼は、森の北にある小高い丘、その丘の周辺でよく見かけるんだ。でも、瘴気の影響でどこかに逃げてるんじゃないかな……」
「そうか。協力、感謝する。身体の方は?」
「ああ。大丈夫だよ。腕は折っちゃったけど、足は平気だから。何とかやり過ごしてみせるよ」
「わかった。気をつけてな」
 去っていく青年を見送ってから、痛めつけた男たちのほうへと振り返る。
「怪我人に無理はさせられないからな……。だがお前たちは別だ」
 呻き声を上げていた一人の頭を掴んで引っ張ってくる。ひい、と短く叫ぶも、洋は気にしない。
「安心しろ。殺しはしない。私の質問に答えてくれるのならばな。抵抗してもいいが、苦しいだけだぞ」
 チャキ、と機関銃を取り出す洋。
「これで足を撃って、ヒールで回復。その繰り返しだからな」
「お願いですから情報をくださいませんか? 尋問を拷問にしたくないのです」
 不気味な脅しをかける二人に、男の精神は完全に白旗を上げていた。
「わ、わかった……。何が知りたいんだ」
「率直に訊こう。オルディオンはどこにいるんだ?」
「く、詳しいことは知らない! ほ、本当だ。瘴気から逃げようとして、瘴気の薄い場所に向かっているらしいが……。お、俺たちも追ってる途中だったんだ。仲間の通信からすると、西――サルヴィン川方面へ向かっているとの目撃情報があったらしいが……」
「なるほど。西だな」
 言って、そのまま男の鳩尾に拳を叩き込む。ぐう、と低く呻いて、男は気絶した。
「このまま西へ向かうぞ。みと」
「はい。わかりましたわ」
 歩き出す洋。しかし、すぐに立ち止まった。
「そうだ。便利なものがあったな」
 そう言って取り出したのは、銃型HC。さっそくクイーンヴァンガードの情報掲示板へアクセスし、手に入れた情報を書き込んだ。
「これでよし。さあ、行くぞ、みと」
「はい。洋さま」


 洋たちが西へ動き出したその頃。
 難しい顔をしながら、大岡 永谷(おおおか・とと)ルース・メルヴィン(るーす・めるう゛ぃん)は地面や木々を調べていた。
「うーん。足跡や爪の跡は無いぜ……」
「こちらもです」
 オルディオンを探そうと森を歩き回っていたのだが、一行にヒントが見つからずにいた。
「姿形はわかるんだけどなぁ……」
 スキル“博識”を使える永谷は、オルディオンの容姿を思い出せたものの、肝心の居場所までは特定出来なかった。
「こっちじゃないんじゃないか? 全く痕跡が無いってことは」
「きっとそうですよぉ〜。私のトレジャーセンスにも反応してませんしぃ〜」
途中出会った黄泉 功平(よみ・こうへい)咲夜 由宇(さくや・ゆう)が進路変更を希望している。
「う〜ん。それもそうだな……。よし。一回少し戻ってみようぜ!」
 永谷は、踵を返すと、もと来た道を歩き出した。
「由宇、具合は大丈夫かい? 瘴気は軽く見ちゃダメだよ」
アレン・フェリクス(あれん・ふぇりくす)が、パートナーである由宇に気遣いの言葉をかける。
「大丈夫ですぅ。ありがとうございます。アレン君」
 グッ、と握り拳を作って、平気アピールをする。
「こっちじゃないってことは……さっきのとこの狭い道かなぁ……」
 歩きながら、永谷が道を推理していく。
「可能性はありますね。他の人がいたら訊いてみるとしましょう」
 周囲を気にしつつ、早歩きで進む。
 捜索に集中しているためか、会話は特になかった。永遠に続くかと思われたそのとき、功平が何かを発見した。
「おいおい……なんだありゃ……」
 彼の目の前には、怪しい男二人と向かい合っているラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)がいた。
「どうしても言わねぇってんなら……仕方が無い。力ずくで行かせてもらうぜ」
 瞬間、ラルクは肉食獣のごとく跳ねた。ただそれだけで、目の前にいた男との距離がゼロになる。
(なっ、速い――)
 ラルクの動きは止まない。
 太い腕から繰り出されるフックを顔面に叩き込んだ後、遠心力を生かした後ろ回し蹴りを腹に決める。
 その間、およそ三秒も無い。
「て、てめぇ……舐めやがって……」
 残った男が、機関銃を構え、いきなり掃射してきた。
普通の機関銃ならばラルクにだって反撃するぐらいの余裕があっただろう。しかし、男の持っている機関銃は、ゴースト兵器の力を付加され、威力が増し、逆に反動は少なくなっているという、非常に厄介なシロモノと化していた。
「うおっ、危ねぇっ!」
 頭を低くして走り出す。
 距離を取ることには成功したが、このままではすぐに見つかってしまう。隠れなければ。そう思って、素早く周囲を見渡したとき、功平の姿を発見した。
「来るなっ! 機関銃はちょっと厄介だ!」
 逃げろ逃げろと手を振ってラルクは合図するが、危機的状況の仲間を見て、功平は見捨てることは出来なかった。
「待ってろ。今――」
「応援してまーす。がんばってくださいね!」
 功平の声に被さってきたのは、由宇の声。
「いきますよぉ〜」
 由宇はエレキギターを取り出すと、ジャン、とピックで弦を弾いた。そして、ふっ、と短く呼吸した後、足を踏み鳴らしてリズムを取り始める。
 高音からの指のスライド、早いリズムでのオルタネイト・ピッキングが開始される。
「う、うまいな……」
 機関銃を持った男のことなど忘れてしまったかのように、その場の二人。加えるなら他の四人も見入っていた。
 演奏は続く。
 ブリッジミュートを奏でていた指が、今度は忙しなく6弦から1弦へと、上下していく。時に荒々しく、時に繊細かつ綺麗な音を出す由宇の運指とピッキングを見ていたラルクは、口を開き。吼えた。
「うおーーーーーーーーっ!! 何かに火がついたぜ!」
 そのまま男が来るであろう道に向かって走っていくラルク。軽身功を使っているため、とても素早いが、由宇の演奏を聞いてから、心なしかさらに倍速になった気がする。
「出やがったな。死ねぇ!」
 引き金に力を入れる男。だが、素早く動くラルクには全然当たらない。けたたましい銃声と、硝煙の匂いだけが辺りに満ちる。
「はっはっはーーーー!」
 いつの間にか、すぐ目の前までラルクは迫ってきていた。そして、後ろ足の筋肉の収縮を使い、男へ肉薄する。
「きんにくさん、こーむらがーえった!!!」
 ドラゴンアーツが乗った拳が、機関銃を粉々に打ち砕いた。
「ひっ!」
 恐怖のあまり、男が機関銃を持っていた指をグニグニと動かしたが、ただ空を掻くだけだった。


 戦闘の後、尋問が開始される。
「殴っちゃうぜ。居場所を吐け」
 両腕両足を拘束した上で胸倉を掴み、拳を振りかぶるラルク。それだけで、もう男は泣きそうになっていた。
「わ、わかった。だが我々だって探していたんだ。確実な場所までは分からない。飽くまで目撃情報でいいか……」
「あっ?」
「い、いえ……よろしいでしょうか?」
「ふん。まあいいや。話せ」
「え、えっと、仲間から、サルヴィン川――ああ、キマク方面ですから西ですね――の方で見つかった見たいな情報を得まして……」
「……なるほどな。あんがとよ」
 そのまま、背を向けて歩き出すラルク。
「えっ、ちょ、ちょっと、せめてほどいて欲しいなぁ、なんちゃって……魔物もいるわけですし……ねぇ、ちょっと、だ、だんな……?」
 媚びる男を無視して、ラルクは永谷たちの元へと向かう。
「俺もおまえらに付いていくことにするぜ」
「目的は同じみたいだな。情報を持ってる人なら、大歓迎だぜ!」
 六人は、西へ向かって歩き出した。
「にしても――あいつら、とっととやられてくれねぇかなぁ……」
 ラルクはボソリと、愚痴を零した。