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ラビリンス・オブ・スティール~鋼魔宮

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ラビリンス・オブ・スティール~鋼魔宮

リアクション

 SCENE 05

 運が良かった、と言えるかもしれない。
 アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)は単身で相当な移動距離となる行動を続けていた。ヒューマノイドマシンはやりすごし、罠にも一切ひっかかることなく奥部まで進むことができたのだ。恐らく彼女が、現時点で最も奥部に進んでいるメンバーといえるだろう。
「これだけの規模の物資はどこから供給されているのかしら……えっ!?」
 だが彼女の運は唐突に尽きた。書類室を発見、これを夢中で調べるうちに、研究員に捕らえられてしまったのだ。
「両手を挙げてもらおう」
 彫りの深い顔立ちの研究員が、拳銃を握って立っているのが判った。蛇のような目をしている。その隣に立つ男も、狼さながらの視線でアリアの姿を上から下まで検分していた。
「うあっ! ……くぁ、やめっ、放して……いやああああああああ!」
 アリアは抵抗しようとするのだが、男たちは耳を貸さず、彼女の両手に冷たい手錠を填めていた。
「……何をするの!? いやっ」
 男たちは、がらんとした一室に彼女を投げ込んだ。倒れるアリアの手錠を、天井から伸びるフックに吊す。何かのスイッチが押されたらしく、ゆっくりとアリアの体は天井から吊り下げられてしまった。
 二人の男の目を見て、アリアは心の底から震え上がった。
 歪んだ悦びをたたえた目の色だ。
 恐怖の余り息が詰まる。おそらくは拷問、つづいては陵辱……その両方も十分考えられた。獣(けだもの)のような男たちにアリアは汚され、玩ばれ、最後は廃人のようになってしまうことだろう。仲間と組まず先行しすぎたことを後悔するが、どうやらもう遅いようだ。
「いやっ! 触らないで……いやぁ……や、あ、んふぁぁぁあ!」
 恐怖と同時に体に熱いものを感じ、彼女は激しく悶えた。そのたびに手錠が手首に食い込む。
 ところが、
「さっさと逃げよう」
 男二人は連れだって、そそくさと部屋から退散しようとするではないか。
「待って! ど、どこ行くつもりよ! 身体検査とかしないの! 揉むとか!」
 自分でもわけがわからぬままにアリアは口走るが、反応は予想外のものだった。
「や、やだよ三次元の女にそんなことするなんて!」
 やっと口を開いた男は、狼じみた見た目のわりに子どもみたいに甲高い声だ。
「ぎゃー、三次元女は下品すぎる! 俺は逃げる前に手を洗うぞ。手錠を填める際に触ってしまった!」
 蛇の目つきの男も、腕にできた鳥肌をさすりながら叫ぶのである。
「ちょ……なにそれ!」
「二次元と三次元の間には越えられない壁があるのだ!」
「パソコンのモニターに入って出直してこい!」
 アリアは人並み以上の美貌である。いや、そのまま雑誌モデルくらいならすぐにでもつとめられるくらい完璧といっていい。それがこんなに面罵されてしまう。なんたる屈辱! 辱めは想像していたが、まさかこんな形の辱めになるなんて夢にも思わなかった! 手錠をガチャガチャ鳴らして猛抗議する!
「私を放っておいて逃げる!? 三次元だからダメ!? 何言ってるの! このっ、せめて情報を引き出すくらいの努力したらどうなのよ!!」
「……やだよ。だって触りたくないもん」
「三次元女は嘘つきだしね」
 これでは、どっちが尋問されるかわからない。
「だったらせめて尋問マシーンでも持ってきなさい! あるでしょ!」
「ぇー……」
 渋々と男たちは、なにやらマジックハンドらしきものがわしゃわしゃと生えた機械を持ってきて設置した。
「これ、開発途中だったマッサージ器だけど、具合が可笑しいから拷問になるかもね」
 一人がスイッチを入れて、
「じゃ、そういうことで!」
「三次元女はわがままだよなぁ」
「あれが『スウィーツ(笑)』ってやつかもしれないぜ」
 あいかわらず噴飯ものの捨て台詞とともに、二人とも本当に彼女を放置して逃げ去ってしまったのである!
「なんという放置プレイ!?」
 しかし恐怖のマッサージ器(?)は、彼女の柔肌をいじりまわすのである。揉んで叩いて、たまにつねって……。
「いっ、やっ、あぁぁぁんん! だ、だめっ、やめてええええ!」
 くすぐったさと共に何やら体の芯に疼くものを感じて、アリアは一人、身を捩ってこの仕置きに耐えた。
「んあっ……ふあぁ……だめぇ! もう……あぁんっ! ……やめてぇ……」
 マジックハンドは代わる代わる、彼女の凝りを揉みほぐす。