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どきどきっ、オータムパーティー!

リアクション公開中!

どきどきっ、オータムパーティー!

リアクション


6、記念撮影の前に


 ステージ近くでは橘 恭司(たちばな・きょうじ)比賀 一(ひが・はじめ)がのんびりと喋りながらビリヤードを楽しんでいた。(株)特殊配送行ゆるネコパラミタの社長である恭司は一に自社へのスカウトを試みているようだ……。
「こんにちは。飲み物はいかがですか」
「お、サンキュ……。本郷さん、か。よろしくな」
 一はキューをビリヤード台に乗せると、涼介にジンジャーエールをもらってぐいっと飲み干した。恭司も礼を言いながらアイスティーをもらっている。
「んあー。集中してたら腹減ってきたな……」
「本郷、何か軽いものをもらえるだろうか」
 勿論。と笑い、調理の得意な涼介は厨房でカナッペを作ってきれくれた。ちなみに『カナッペ』とは美少女のニックネームではなく、クラッカーなど一口大の大きさの物に具を乗せた食べ物である。小さなピザと考えてもらえればいい。
「うっめえええええええええええ!!!!!」
 金がないことに定評のある一はカナッペを端からバクバクと食べまくっていた。どれを食べても『うめえ』としか言わない彼に対し、恭司は1つ1つに簡単な味の感想を付けている。
「この、トマトにアボカドの組み合わせは見た目もいいな。……うむ、舌の上で溶けるようだ」
「喜んで頂ければ何よりですよ。こちらのスモークサーモンもおススメです」
「こっちもうめええええええええ!!!!!」
 涼介には味わってくれる恭司の反応も、夢中で食べている一の反応も喜ばしいもののようだ。ニコニコしながら新しい皿を出してくれた。
「……!」
「……殺気ですね」
「モグモグモグモグ!!」
 殺気看破で異常を素早く察知した涼介と恭司は視線を合せてこくりと頷いた。一は口の周りにクリームチーズをつけながら、夢中になってカナッペを頬張っている。
「この気配は……あそこか!!」
 見ると、ステージ上で椿 薫(つばき・かおる)風森 巽(かぜもり・たつみ)と一触即発の空気で、小さなテーブルごしに向かい合っている。彼らの手にはトランプサイズのカードが握られていた。


「あれは、マイスターカード!!!」


 博識な涼介は思わず声をあげ、社長の恭司は思わず胸ポケットにある『ブルーアイズ・ホワイトぞうさん』を抑えた。
「なんだ、マイスターカードって」
 一が指についたソースをなめながら尋ねると、恭司は不敵に笑いながら『まあ、見ていることだ』とだけ言った。
「色々バラまいておこうとしたら、面白いものを見つけたでござる」
「お祖母ちゃんが言っていた……大切なのは正解を選ぶ事じゃない。選んだ道で自分なりの正解へと近づくように努力を続ける事だ。って!!!」
 巽と薫は同時に右手を高々と上げ、オーバーリアクションとも取れる豪快な動きでデッキに手を伸ばした。
「「デュエル!!」」
 事情はさっぱり分からないが2人は戦うことになっている。一は涼介から餃子の皮でできた温かいカナッペをもらった。ベーコンが美味しかった。
「拙者のターン、ドロー!! ……『ハイジ・マッカワイイネ』を守備表示で召喚。さらにカードを1枚伏せてターンエンドでござる!」
 ……伏せカード、これは何かのフラグか!?
 巽のこめかみに一筋の汗が光る。
「そう……これこそ交流だよね。我以外にもデュエリストが居るとは! 我のターン、ドロー!! 『マスター☆ハギ』を攻撃表示。『ハイジ・マッカワイイネ』を攻撃だ!!」
「引っかかったでござるな! 伏せカードをオープン!!!」

「なっ、あのカードは!?」
「おいおいマジかよ。俺でも分かるぜ、そのヤバさはよ……」
「クリティカルヒット!! こいつはいいことがありそうだ」
 薫がめくったそのカードの効果は……。

「トラップ発動、『全年齢対象』でござる!! カードの効果により『マスター☆ハギ』の攻撃力は半分にダウンでござるよ!」
「ぐああああっ。我としたことが……イニシャルからエロ爆発のカードにその効果はぁぁぁっ!!!」
 一はよく分からなかったが涼介の餃子カナッペをモグモグと食べていた。ピーマンとチーズの相性が最高だった。
「我は……負けてしまうのか?」
 緑茶を飲んで落ち着こうとするが、絶望は水槽に落とした墨汁のように心に急速に広がって行った。
「馬鹿者が!! 梱包するぞ!! 入社したいのか!!」
「ゲブハァッ」
 怪力の籠手で武装した恭司がバーストダッシュからの鳳凰の拳を巽に叩きこむ……胸元に武装していた高級芋ケンピのおかげで命は助かったものの、芋ケンピは小麦粉の如くサラサラになってしまった。
「そ、そうだ……社長の言う通り。我は……カードを信じる!! 我のターン、ドロー! ……こ、これは」
 巽の目に希望の光が戻った。ぐいっと制服の裾で目元をぬぐうと、にやりと笑って薫に向き合う。
「『葵乃上式部』、『ららら木・KSK』、『えりりんか』を生贄に捧げて……」
「なっ、比賀さん……見てください! 神のカードが……!!」
 会場の外は急速に暗雲が垂れ込め、落雷の影響で一瞬会場内に停電が起こった。しかし巽の持っているカードは自身が光を発しているらしく、それを見た薫は膝が震えるのを必死に抑えていた。

「究極召喚!! 『ケンタロスの巨神兵』だあああ!!!!」

「ぐああああ!!! 誘い受けでござったかあああ!!!」
 この日、タシガンの山の1つに嘘か誠か巨大なケンタロスの蜃気楼が目撃されている。カードから発せられる莫大なエネルギー波を受けて立っていられる者がいる訳もなく、薫は壁にめり込むようにして倒れた。
「こ、これも去りゆく夏のいい思い出でござる……よ……」
 こうして、ツァンダにまた新たな伝説が生まれた。


 フリータイムのステージ付近でも談笑を交わす学生たちの姿が多く見られる。バンド活動などの出し物が目立つ中、牙竜は即席らしいタロット占いの屋台を開いていた。
「よう牙竜、調子はどうだ?」
 簡素な机に、自分と相手の椅子が1つずつ。牙竜は座りながら刀真に軽く手を挙げるとぼちぼち、と答えて椅子をすすめた。
「適当な占いだからな。やってくか?」
「俺? 必要ない……欲しい未来は自分で掴み取るからな」
 占ってほしいのは月夜のようだ。白花が自己紹介をした後に椅子に腰かけ、『刀真の金運』をリクエストした。
「月夜のじゃないのか?」
「欲しい本があるのよ♪」
 刀真はコトノハ・リナファ(ことのは・りなふぁ)に声をかけられ、ここの会話が届いていないようだ。白花は苦笑しながら月夜の艶やかな髪を見ていた。
「月夜さん、よっぽど欲しいんですね」
「よっしゃ、占うぜ!!」
 牙竜は23枚のカードをよくかき混ぜると、シャッフルしてその中の1枚を抜き取った。今回の占いでは良く言えば直観を重視する方式らしい。
「……『魔法少女になると道が開かれます』!!」
「「え?」」
「だから、魔法少女になると金運が良くなると出た!!」
「「えー!?」」
 ど、どういう意味? でも、占いってそういう物なの? と月夜と白花は困惑した表情を浮かべている。一方、少し離れた位置ではコトノハが刀真に何やら詰め寄っているようだ。埒が明かなかったようで蒼天の巫女 夜魅(そうてんのみこ・よみ)を連れて白花の元へ向かっている。
「こんにちは、夜魅」
「お姉ちゃんっ。あのね、この前ママと海に行ったんだよ。とても大きくてびっくりしちゃった。同じくらい大きなタコさんも出てきたんだよ!」
 夜魅のにこやかな表情から幸せにやっていることを察した白花は、弥十郎にジュースをもらってそれを彼女に渡してやった。妹は姉が楽しくやっているかが気になるようだ。
「私も、今とても幸せ。……もし、コトノハさんが心配しているならそう伝えてもらえるかな?」
「うん……。あっ、変なうさぎさんがいる!」
 バニーガール姿の正悟が豪快にコトノハの胸をつかんでいた……。それを見てびっくりした夜魅は慌ててコトノハの元に戻って行く。

「ウーロン茶をお持ちしました、お嬢様」
 執事姿の変熊 仮面(へんくま・かめん)が疲れてソファーに腰掛けている橘 美咲(たちばな・みさき)に微笑みながら飲み物を渡すと、その素顔の美しさに美咲の顔はほんのりと赤らんでしまった。
「あっ、あっ、ありがとうございますっ」
 先ほどカラオケでノリノリな時間を過ごした後のため、今はデジタルカメラで参加者たちの写真を撮影しているところだった。今、彼女の目の前にいるのは素顔であるけど噂に聞いてる変熊仮面その人だった……。
 ガシャン、とグラスを倒す音が聞こえる。どうやらフィーバーした牙竜がグラスを割ってしまったようだ。
「この後掃除するの誰だと思ってんだ! そこ! グラス倒すな!」
「わりぃ……おっ、変熊の占い結果は『筋肉を鍛えるとハリウッドから映画の主演のオファーが来た後、政治の世界へ』だな!」
「俺様の美貌がハリウッドに通用するのは当然のことだろう!」
 まったく、何言っとるんだっ。ぷんすかぷんっ。
 ご立腹の変熊はステージのスタンドマイクをロックンローラーのように掴むと、藤乃とカリギュラに曲のリクエストをした。


☆変熊の詩 〜アイツにジェラシー〜
   俺様は変熊 今日は皆にあいつを紹介するよ
   刀真〜 刀真〜
   (ここで服を脱ぎはじめる、さあ皆も一緒に!)

   髪の色もー 髪形もー 被っているのにー
   俺様の方が美形なのはナゼー
   それは誰にも 分からないんだー


 変熊はドヤ顔をした。キリッ!
 美咲は『目線いらないので体の向きだけどうぞこちらに!!』と訳の分らないことを叫んで、変熊の下半身ばかりを執拗に撮影している。
「変な歌を歌いやがってカラオケで勝負だ変熊! 俺の歌に聴き惚れろ!」
 突然ステージ上に全裸で買い物袋を被ったエコロジー前回の男が出現し会場は黄色い声に包まれた。彼こそ自称変熊のライバル、変能マスクである。
「え〜と……月夜さんあの人とう」
「だ、大丈夫だ。あいつは白花の知らない奴だぜ!!」
 牙竜は慌てて白花の視界を塞ぎ、白花のことを占うことで彼女の気をそらそうとした。月夜は無言でマシンピストルを武装しており、目が完全にスナイパーである。
「はっ、はい。わかりました」
「よしっ。白花は……『裏方で活躍すると、尊敬されます
』らしいぞ! 一日一善……後ろを見るなぁぁ!!!」
「ご、ごめんなさーいっ!」
 記念写真撮影に並ぶ集団めがけて襲いかかる変熊と変能。エメに向かって奇声を発しながら両手の人差し指を突き出し、背後に向かっていく彼を壮太が必死に守ろうとしている。
「噂には聞いていたけれど、これが本物……意外と可愛い♪」
 恍惚とした表情の美咲は記念撮影よりもその場の『活きた表情』を撮るのに夢中になっていた。ネームカードで住所が分かる人には郵送するのもいいだろうが、樹から学校に送ったらどうかと言われてそれもそうかと頷いている。
「変熊さん……、この思いを込めた写真を受け取ってくれるかな」
 全裸の貴公子は記念写真で芹菜と一緒に真ん中でピースをしている。モザイクがかかるのは時間の問題だろう。


おしまい

担当マスターより

▼担当マスター

相馬 円

▼マスターコメント

お世話になっております、相馬 円(そうま・えん)です。
関係設定は結構チェックしています。
ここに設定されていないと何度も初対面扱いになってしまうこともあるので、
良かったら色々な方に感情設定してみてくださいね♪
今回はグループでの描写を意識して書かせていただきました。

大変申し訳ないのですが、今回『話しかける』『歌う』というアクションで
どういった内容を話すのか、どういった歌を歌うのかが明記されていなかったキャラクターに関して
描写量がノーマルにしては少なくなったかもしれません。
パーティーなのでダブルアクション覚悟の方も多かったのですが、
なるべく絡ませるようにはしましたが全採用はできませんでした。


温かい私信をたくさん頂き、本当に感謝感謝です。
応援に対するお返事は今後の頑張りで返していきます。
半年間、本当にありがとうございました!!!