|
|
リアクション
ANSWER 21 ・・・ PMRの問題(2) リネン・エルフト(りねん・えるふと) ミレイユ・グリシャム(みれいゆ・ぐりしゃむ)
V:俺たちは、すでに遅すぎたんだ。
結論を先に言わせてもらったわ・・・PMRのリネン・エルフトよ。
事件についていろいろな可能性を考えて、聞き込みをしてみたの・・・姫と被害者のつながりを知ってる容疑者を知りませんか・・・ノーマン・ゲインを知りませんか・・・ノストラダムスと恐怖の大王でもいいわ・・・切り裂き魔のファンの人っているの・・・姫の友達・・・でてきて・・・死体の解剖にこだわる犯罪者さん、いらっしゃあい・・・恋人のいない同性愛の吸血鬼の人、さびしいのね・・・マジェスティックの沈没・・・私、沈むの?・・・
これだけの問題はいまから解決するなんて、やっぱり・・・俺たちは、遅すぎたんだ・・・だわ。
だから私は、マジェスティックの街でビラを見かけた交霊会にきてみたの。困った時の神だのみ・・・霊は神じゃないかも・・・私、間違えたわ・・・。
「リネンさんもきてたんだ。捜査なかなか進まないよねぇ」
リネンに話しかけてきたのは、同じPMRのメンバーのミレイユ・グリシャムだった。パートナーのシェイド・クレイン(しぇいど・くれいん)も一緒にいる。
「街で聞き込みしながらね、この画像をみせて、今回の事件の怖さをみんなに伝えてるんだよ」
ミレイユは、友達の小豆沢もなかから送られた、春夏秋冬真都里が半裸でトマトをぶつけられている画像をリネンにも見せてくれた。添えられたメッセージは、血文字のようなフォトンで、マツリ サラワレタ トウ アヤシイ タスケテ。
「姫様を守ってあげないと、こういうめにあわされちゃうよ、って」
「・・・な、なんだってぇ!? ・・・この画像は、たしかに悲惨・・・」
「だよね。ワタシもこんなめには、あいたくないし、姫様をこうしちゃいけないんだ。さらわれた真都里くんは、ロンドン塔でこういうめにあい続けて、おかしくなっちゃったって、もなちゃんが言ってたよ。手遅れだから、やっぱり助けに行かなくていいて」
「もなかさんの話がすべて事実だとは、限りませんが」
「ねーシェイド、ここいる霊能力者なら、姫様の居場所を教えてくれるかな」
「どうやら、それは、難しそうですよ」
V:シェイドの意見は、事実だわ・・・交霊会の会場にはお客さんがたくさんいるけど、部屋の中央で、体に降りた霊の言葉を語っている女の人は・・・どう見ても、雷霆リナリエッタだし、横にいる霊媒師ノックスは、パートナーのベファーナ・ディ・カルボーネ・・・隠れた特技があったのかしら・・・違うと思うわ・・・。
「お願い。マジェスティックのみんな、いまこそ、地球人に虐げられてきた私たちの無念を、晴らして! ああああああ」
紐状の下着をつけただけのほとんど全裸のリナリエッタが躁状態で、霊の言葉? を口にしながら体をよじる。
「みなさん、もはや、霊たちの怒りは我慢の限界です。これを和らげるには、邪悪な敵を打ち倒す他ないでしょう」
ベファがもっともらしく、客たちに語りかけた。
「あっ。街の人からメールが着てる。仲良くしようと思って、さっき、捜査中に焼き栗やシェイドの作ったマカロンをあげて、メアドも教えてあげたんだよねぇ。ええっ。お姫様が見つかったって、いまから一緒に市内をまわるって」
「ミレイユ。声が大きいですよ。そのメール、もしかすると罠かもしれませんが、行ってみましょう。ここにいるよりは、得るものがありそうです」
「うん。ねえ、リネンちゃんは、どうする?」
ミレイユに尋ねられ、リネンは、
「私は・・・ここにいるわ。ここでもなにかが、起きそうよ・・・気をつけてね・・・」
ミレイユたちが行ってしまうと、入れ替わるように入ってきたのは、リカイン・フェルマータと赤羽美央だった。
V:また捜査メンバーがきたわ・・・みんな、神を頼るのね・・・。
「PMRのリネンさんですね。赤羽美央です。あの、ここに銀髪の怪しい感じの男の子、昼間、模倣犯として逮捕されたニコ・オールドワンドさんが入ってきませんでしたか」
「・・・ごめん・・・知らないわ」
「外は、フィスが探してるし、逃げ込んだとしたら、ここくらいなんだけどな。なに、ここ。すごく盛り上がってるわね。みんなでロンドン塔を引き倒しに行く集会? 私も参加しようかな」
リカインは、リナとベファに扇動され、拳を突き上げ、叫びをあげる客たちを眺め、微笑んでいる。
「あんたたち、ニコを探してるの。あの子、ニセノーマンにそそのかされて、さっそくやらかしたわけ?」
会場内にいたらしい茅野菫も三人に近づいてきた。
「ムムムムム。菫さん。あなた、ニコくんを手助けして脱走させたんじゃないんですか」
「そんな昔の話、忘れたわ。女王様、ケガは治ったの。私、心から心配してるわよ」
菫のあきらかに口だけの心配に、美央は頬をふくらませる。
「匿ってるんなら、彼の居場所を教えてくれないかな。私たち、彼と決着をつけたいの」
「知らないわよ。でも、例えニセ者でも、ノーマンのいるところにいるんじゃない。しかし、あいつ、なんで、こんなキレイなお姉さん方に追いかけ回されてるの」
「私は彼とは悪魔関係なの」
リカインは、自分でも意味のよくわからない言葉をつぶやいた。
「うわああああ。殺して! 燃やして! 憎い、あいつが、あいつが憎いいい」
座の中央で、アジテーターを演じ続けるリナリエッタの横に、男が一人、近づいてきた。
激しく頭を振りまわすリナの顎先をそっと?むと、男は、彼女に口づけをする。
興奮している客たちは、男の行為に気づいていないようだ。
「お客さん。踊り子にふれられては、困ります。おや」
注意しようとしたベファは、男の顔をみて表情を崩した。
「リナ。いらっしゃったようですよ」
「私に会いたくてこんなことをしているのかい。ハニー」
リナから唇を離した、小奇麗な顔の赤い目の男は、ささやき声で問いかける。
「待ってたわ。ダーリン。と、言いたいところだけど、あなた、違うわ」
「・・・」
リナは、首を横に振る。
「舌の動きが、キスの味が、別人よ。ニセ者さん。ダーリンよりも、たくさん貯金があるなら、愛してあげないこともないけど」
少しかなしげなリナの前で、一瞬、動きをとめた男の顔が大きく歪む。
「うぐっ」
男は衝撃を受け、床に倒れた。
「先生の名を騙るニセ者め。僕の前によくでてこられたな」
光学迷彩で姿を消したニコ・オールドワンドが、男を殴り倒したのだ。
「ニコくん、そこね」
「あなたこそ、よく、私たちの前にでてこられましたね」
リカインと美央が、声を頼りにニコへ突進する。
さらに。
客の誰かが火をつけたらしく、室内には、すぐに火の手がひろがり、会場は、怒声と悲鳴の交錯する火の海とかした。
V:大変なことになってしまったわ・・・やっぱり、すべてはもう手遅れ、なのね・・・交霊会会場からの実況は以上よ・・・。