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リアクション
ＡＮＳＷＥＲ １４ ･･･ 儀式の問題 一ノ瀬 月実（いちのせ・つぐみ）
彼女がピアノをひく前に、
「ちょっとこれ持ってて。ただのリモコンスイッチなんだけど、これを押すと自動でご飯が炊きあがるのよ。便利でしょ。全自動飯ごう。教導団で大流行りなのよ。私がピアノをひき終えたら押してね。真剣に演奏すると、お腹がすくじゃない。お願いよ」
ピンクの髪の元テロリスト、現お姫様に、そうお願いされた、かわい維新です。
外見がそっくりなのはともかく、テロリストの月実にピアノなんてひけるわけないって、僕も、月実のパートナーのリズリット・モルゲンシュタイン（りずりっと・もるげんしゅたいん）も思ってたんだけど、驚くべきことに彼女は、普通にちゃんと英国国歌を演奏してて、この集会場にいる人たちは、みんな合唱してる。
世の中、不思議なこともあるもんだね。
慣れないことをすれば、お腹もすくだろうし、ひき終えたらすぐにご飯にできるように、気をきかして、先にボタンを押しとくね。
プチっと。
スイッチは、ボクが持ってるけど、これ、かんじんの飯ごうは、どこにあるんだろう。
他の人に食べられちゃわないように、どこかに隠してあるのかな。
「リズ。飯ごうは、どこにあるの？」
「おまえはなにを言ってるんだ。月実の演奏をきけ」
「でも、炊き立てご飯が」
「この、一秒で地球を七周半するボケがぁぁ！！」
「そのセリフ、使う相手が違うってば」
僕は、リズのテニスラケットのつっこみをよけた。
ピアノの音がやんだ。
中途半端な気がするけど、演奏、終わったのかな。
「維新。月実がヤバイぞ」
リズが、耳の部分に刃がついてるうさぎのぬいぐるみを振り回しながら、突進した。
いつの間にかピアノを囲んでいた怪しげな黒マントの一団がみんなで月実を連れて行こうとしている。
拉致してくれるのか、それなら、ありがとうを言わないと。
ドカン！
突然、ピアノが爆発して粉々になって、飛び散った。
「飯ごう爆弾のスィッチ。押したわね」
月実が僕をにらんで、怒鳴る。
あんたが、押せっていたんでしょうが、しかも、爆弾なんて、聞いてないよ。いつの間に、こんな仕掛けを。なに、考えてるんだ、この破壊魔。
「うわあああ」
火だるまになった人が叫んでる。
おおっと。
ピアノの爆発は小さなものだったんだけど、何人かのマントに火が燃え移って、そのうえ、連中は、火気厳禁な危険物を凶器として携帯していたらしくて、僕の目の前で、派手に人が爆発した。
僕は、吹き飛ばされて、気がつくと、なぜか、リズに体を縛られてた。意識を失ってたのは、ほんの数秒の気がするんだけどな。
「全部、おまえの仕業よ。もう暴れさせないわ。今日からあなたは、一生、私の下僕よ！ イエス。もしくは、はいと言いなさい。俺様をリズ様って、呼びなさい」
「リズ様。それどころじゃないよ」
「生意気な口をきくなー」
いろいろ飛び火して、場内のあちこちで爆発が起きたせいか、集会場全体が地震みたいに揺れてる。
リズが僕に馬乗りになって威張ってるのって、一種の現実逃避なんじゃないだろうか？
暗い空間でたくさんの人が勝手にうごめいている。
「壁が割れたぞ！」
誰かが叫んで、ごおって音がした。水の音だと思う。
リズが僕の上から消えてる。流されたのか？
僕は、誰かに抱え上げられた。首をめぐらせるとその人は、マントをはおっていた。悪の一味に捕まってしまいました。縛られたままおぼれなくて、よかったけど。
こうして、僕と月実は、手荷物状態でロンドン塔へ移動です。
月実と維新を拉致した一団は、地下からでると出入り口を爆破し、教会にも火を放った。
闇に閉ざされた地下には、レキも、カナも、福ちゃんも、兎野ミミも、リズも、エルムも、ジョセフも、それに多くのマジェスティックの住人もいる。
「携帯がつながらない。でも、ボク自身は、ケガもないし元気だよ。カナちゃんたちは」
「私は、平気」
「福チャンモ生キテルワヨ」
「自分は、子供たちが心配です」
「みなさん、これは、連続殺人犯かわい維新の仕業よ。あいつとは、俺様が必ず決着をつけるわ。いまは、耐えて、我慢してね」
「今日は、びっくりしてばっかりいるよ。僕、後でこの冒険をみお姉に話してあげるんだ」
「ミーは暗いのも、血のにおいも平気デース。みんな、吸血鬼になったつもりで元気をだしまショウ」
暗闇の中、捜査メンバーたちは、ケガ人を治療したり、勇気づけたりしながら、脱出の方法を探す。
Ｆｕｋｕｃｈａｎ ｈａｄ ａ ｌｉｔｔｌｅ ｌａｍｂ
Ｌｉｔｔｌｅ ｌａｍｂ，ｌｉｔｔｌｅ ｌａｍｂ，
Ｆｕｋｕｃｈａｎ ｈａｄ ａ ｌｉｔｔｌｅ ｌａｍｂ
Ｉｔｓ ｆｌｅｅｃｅ ｗａｓ ｗｈｉｔｅ ａｓ ｓｎｏｗ．
（福ちゃんの羊。
羊。羊。
福ちゃんの羊。
雪のよう）
子供たちを励まそうと、レキ、カナ、ミミ、リズ、エルム、ジョセフが声を揃えて替え歌を歌いだし、やがて、子供だけでなく、みんなが口ずさみはじめた。
