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リアクション
ANOTHER 少年犯罪王誕生(逃走編)
XXXは最高だぜ。俺様はXXXの帝王だ。
俺様は禁書写本 河馬吸虎(きんしょしゃほん・かうますうとら)。リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)のパートナーにして、XXXの教育者だ。
リカをエロ河童にすべく日夜、XXXとかXXXとか禁じられた言葉をささやき続けているんだが、リカときたら、俺様がなにを言おうとまるで気にしない。
日常的に、俺様の話をスルーするクセがついているのだ。ひどい話だ。リカなんかXXでXXXXXでXXXだぜ。
ん? あんたみたいないやらしい本が捨てられないのが、不思議だって。大きなお世話だ。人間にはXXXが必要だろ。なければ、人類滅亡だぞ。
しかし、いつも無視されてばかりでは、俺様もつまらないので、魔道書らしく、悪魔だの、秘密だの、それらしい言葉をリカの気をひくために口にしてみることにしてみた。
「最近、空耳が激しいのよ。悪魔召喚とか、六芒星とか、阻止とか。なんなのかしらね」
俺様がささやきだして数日後、リカがそんな風に言いはじめた。リカは、俺様がXXXな言葉しか言わないと思っているので、作り声で俺がささやく適当な単語を空耳とカン違いしたらしい。
いいだろう。聞いてくれているのだな。よしよし、この調子でXXXな単語もたまに混ぜて、XXXな教育をしてやるとしよう。
「リカの空耳って、心の声なんじゃないかな」
「どういう意味」
「最近、マジェステイックで起きてる事件を知ってる? フィスは、あれって、悪魔召喚の儀式魔法の気がするんだ。リカの中のなにかが、あれをとめろって命令してるんじゃないの」
「え。そうなのかしら。なんかね、考えてみると、私、悪魔とすごくかかわりのあるような気がするのよ。んぱー。あれ? いまなにか言った」
俺様と同じリカのパートナーのシルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)が、余計な口を挟んだせいで、話は俺様の予想外の方向へ行こうとしている。
「悪魔とセットで、私の耳に聞こえるの。ニコ・オールドワンドって名前が」
俺様は、それは言ってない。
「え。彼は、マジェスティック事件の模倣犯として捕まったよ。さっき、ニュースでやってた。リカ。行ってみない、マジェスティックへ」
「うん。心の声に、導かれてみるか」
それは、違うぞ。
が、いまさら、真相言いだせば、リカになにをされるかわからん。ここは、ことの次第を眺めるために、俺様もついていくしかないな。
なぜ、こうなる。
俺様たちがマジェスティックに到着したら、ニコは脱走し、街中では暴動が起きていた。
「とりあえず、ニコさんを捕まえてみようか」
「ニコは、事件のキーパーソンの一人でしょうから、捕まえるのは、いい作戦ね。事件の黒幕と噂されてるノーマン・ゲインともつながっていそうだし」
リカもフィスもやる気まんまんだ。
ノーマンはXXX野郎らしいな。俺様は、XXXなやつは嫌いじゃないぜ。
リカは街中をニコを探してパトロールをはじめた。俺様は、本の形でリカのバックに入っている。
俺様としては、めずらしく口を慎んでる。ヘタになにかしゃべると、とんでもない解釈をされそうだしな。
「フィス。いまの聞こえた。放火魔だって。あっちよ」
「住民も味方とはかぎらないわ。気をつけて」
いきなり、リカは走りだした。
XXXな内容で頭が一杯とはいえ、本である俺様としては、火を使う敵はXXXXだな。もっとも、俺様は石造りなのにページもめくれるオーパーツな仕様なので、灰になったりはしない。
「あのメガネの女の子よ。ほら、あそこ」
リカは放火魔を発見したらしい。そして。
バコ。ボコ。
聞きなれた衝撃音。
「そんなに強く殴るな。暴力女。ノーマン一家をなめたらあかんぜよ」
「放火魔さん。弱すぎね。なに、その目、まだやるの」
リカの人生にはXXXな快楽は少ないが、暴力は売るほどあるな。
「犯人を確保されたんですね。リカイン・フェルマータさん」
「あら、あなたはたしか雪だるま王国の」
「はい。赤羽美央です」
放火魔を捕まえて、知り合いと出合ったらしいな。
「私とフィスは、ニコくんを探してるんだけど、あなた、彼を知らないかしら」
「私も彼を探しているところです。この放火魔をヤードに引き渡したら、一緒にニコさんを捜索しますか」
「リカ。美央。あれ、問題の彼じゃない。ほら、あそこの物陰から、こっそり様子をうかがってる、あの人」
フィスが標的を見つけちまったらしいな。リカが動きだした。ニコがあらわれたんで、放火魔はもうどうでもいいらしい。抜き足差し足、気配を殺してゆっくり歩いてる。
バコン。
「いったいなあ。なんだよ」
男の、少年の声だ。
「ニコ・オルードワンドくん。悪魔召喚のうらみ、忘れてないわ。また、悪さをしてるようね。あなたに必要なのは、お仕置きよ」
「おまえは・・・悪魔って、なんの話?」
「私の心の奥底の悪魔の記憶が、あなたの名前を呼ぶのよ。なんか、私自身、自分がなに言ってるのか、わかんないんだけど、体と口が勝手に動くの」
ボコ。ボコ。
「ニコさん。反省しなさい!」
パコーン。
「う、うわあああ。なんだよ。おまえら。僕の頭をぽんぽん叩くな。暴行魔か」
「逃げてはいけません。待つのです」
「悪魔はあなたを忘れないわよ」
バリバリバリバリ。
稲妻系の魔法の音がした。軽めの足音が遠ざかっていく。少年が逃げたのか。
「逃がすわけないでしょ」
「当然です」
リカが再び走りだす。