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ハート・オブ・グリーン

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ハート・オブ・グリーン

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SCENE 16

 小瓶を太陽に透かし、やはりな、と、呟く。
 クレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)は独自に植物のサンプルを採取し、ハンス・ティーレマン(はんす・てぃーれまん)と共にこれを調査していた。クレアはまず、提出された報告書を徹底して読み込み、事件の本質が『在来種の変質』ではなく『外来種の侵食』であることを明白にしている。
「『外来種が侵食している』のであれば、元々異常に成長の早い植物なのか、それとも何らかの方法で成長を早めているのか……と思っていたが、明らかに後者だ。薬品の影響が見える」
「それに加えて共通項がありますね、ここの植物には」
 ハンスは手袋をした手に、長い尾のようなものを握っている。ひょろ長くしなり、ときおり動く様が蛇のようにも見えるものの、それは植物の根なのであった。異常植物すべてが、程度の違いこそあれ同様の長い根を有していた。異常進化しているのは地表に見える部分だけではなかったということだ。このことまでつきとめたのは、全参加員のうちクレアのみである。
 集めた証拠からクレアが、導いた結論は以下の通りだ。
 異常進化した植物はいずれも、長い根を持っている。土壌よりさらに深くに流れる地下水路から水を吸収するためだ。すなわち『緑の心臓』とは給水源、そしてこれは地下にあるのだ。
 クレアは秦良玉との回線を開く。
「ベースキャンプか。李少尉に繋いでくれ……感謝する。少尉か?」
 ノイズ混じりながら李梅琳が返事するのが判った。
「少尉、階級は私が上かもしれないが団長の代官は貴官であり、命令系統においては私は貴官の配下となる。かしこまらないでいい」
 クレアが自分のつきとめたものを語ると、梅琳もこれまでに得た情報を返す。
 その中には、白銀昶がふと述懐した古謡(『SCENE 13』参照)も含まれていた。伝承は侮れない。ときとしてそこに真実が隠れているものだからだ。
「『龍脈』か……恐らくそれが地下水路のことだろうな。『静かに流る』とは、秘匿されていることを意味しているのかもしれん……」
 ハンスが口添える。
「そういえば、早い段階(『SCENE 05』参照)でアーデルハイト様一行が発見した小さな祠というのがありましたね」
「まさか……」
 ハンスは声を出さず、ただ頷いて見せた。
 クレアは通信機に告げる。心なしか声が昂ぶっていた。
「少尉、ベースキャンプに連絡を回し、祠の付近にいる部隊を調査に向かわせてみないか? ……ああ、アーデルハイト校長代理は『緑の心臓はもっと広い場所だ』と言っていたというのだな? いや、調べてほしいのはその地下だ」
 クレアは半ば確信していた。『緑の心臓』は、祠の地下だ、と。