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リアクション
第10章 タシガンの好敵手
キマクでフレデリカ達と別れた変熊は、若トナカイのへの子と共にクリスマスを一人で過ごす寂しい独り身のお年頃の男子諸君にプレゼントを配る為、タシガンに来ていた。
変熊は、タシガンの街中に飾られている中で、一番大きなツリーの上に立ち、高らかに宣言した。
「わーっはっはっ! 待っていろ男どもよ! 寂しい貴様らに、今からこの俺様がとっておきのプレゼントを届けに行くぞっ! とおっ!」
華麗にツリーから飛び降りた変熊は、白馬に跨がりタシガンの街へと突進する。その後を、トナカイのへの子が嬉しそうについて行った。
変熊は、目的の家に辿り着くと、玄関をノックする。キマクでフレデリカが言った子供達には特に見つからないようにという注意は耳に入らなかったらしい。
恐る恐る出てきた母親に子供を出せとお願いする。
「うちの子は……」
もう眠っていると断ろうとする母親に、変熊が言う。
「どうせ深夜アニメ見て起きてんだろ?」
母親は、呆れたような諦めたような溜息をついて家の中へと戻って行った。子供の行動をズバリと当てた変熊を子供の変わった友人と判断したようだ。
「まったく、あの子の知り合いと来たら、こんな夜中に訪ねてくるなんて、常識がないんだから………」
母親が文句を言いながら2階に消えた後、しばらくして、中学生くらいの眼鏡をかけたニキビ面のメタボ少年が現れた。
「何? 誰? 僕に用?」
少年が、不審げに訪ねる。
「俺様はサンタだ! 一人寂しいお前の所に来てやったぞ」
胸を張って言う変熊に、少年は余計なお世話だと扉を閉めようとする。変熊は閉まりかけた扉の間に半身をつっこみ、それを力づくで阻止した。
「ま、待てっ! 俺だって本当は忙しいのを来てやったんだぞ!」
まだ予定はないが。しばらくの攻防の後、根負けした少年が渋々変熊の話を聞く。
「で?」
イラつく様子の少年に構わず、変熊はプレゼント袋からスネグーラチカでは決して思いつかないようなスペシャルなプレゼントを取り出した。
「はいっ、プレゼントの抱き枕だ。フレデリカとスネグーラチカ、どっちがいい?」
少年が変熊の手にする抱き枕を見て溜息をついた。
「僕は、アーデルハイトちゃんの方が……」
「あー、だめだめ! さっきも言ったが、版権絡むと面倒なんだよね。大人なんだから、わか……」
気づけば今度の相手は子供だった。ので、変熊は大人として強引に説得する。
「アーデルハイトなんてやめておけ。こっちはクリスマス限定のレアものだぞ。青田買いをしてこそ大人の階段を上る第一歩だろうが」
「そ、そうかな」
「こっちは、これから人気急上昇間違いなしだ。この機会に手に入れておかないと一生後悔するぞ」
「まあ、そういうなら、1つ持っていてもいいかな……」
「よし、それでこそ男だ。で、どっちにする?」
少年はスネグーラチカの抱き枕を選び、自分の部屋へと戻って行った。
「よし、次だな」
その時、通りの向こうを機晶ロボが走って行くのを見た。変熊は物陰に隠れてその様子を窺う。動物と違って疲労しない機晶ロボは、最初と変わらないスピードでスネグーラチカの配達を助けている。
「ぐぬぬ…あれが噂の機晶サンタか。なんてカッコイイ!!」
変熊は悔しそうに呟いた。
「機晶サンタになんか負けるわけにはいかんっ! 俺様も、もっとプレゼント配りで目立たねば!!」
変熊はつい物陰から飛び出て、びしりと機晶ロボを指でさす。
「しかし、どんなに恰好良く目立っても、機晶サンタにはわかるまい! プレゼントがまごころだと言う事を。配達するだけなら宅急便で事足りる。俺様は、恰好良く目立つまごころサンタとして、必ず貴様を超えてやる!!」
スネグーラチカの機晶ロボに対抗心を燃やす変熊だったが、当の機晶ロボとスネグーラチカ達は、すでに遠くの角を曲がるところだった。しかし、上空の雪娘が変熊に気づき、戻ってくる。
雪娘が変熊に『氷術』を放つ。
「ぅをわっ!!」
突然の攻撃に変熊は慌ててそれを避ける。3度目に避けた時、変熊が足を滑らせプレゼントごと派手に転がった。それを見た雪娘は、くすくすと笑いながら飛び去っていく。
変熊の元へ、彼を心配していた若トナカイのへの子が駆け寄るが、手前でぴたりと足を止めた。
「どうした?」
変熊の呼びかけに、への子が首を横に振り後ずさる。目も潤んでいるように見える。への子の様子に変熊が回りを見ると、転んだ拍子にプレゼント袋からこぼれ落ちたフレデリカの抱き枕が変熊の下敷きになっており、地面に両手をついて起き上がろうとしていた変熊がまるでフレデリカを押し倒しているようだった。それに加え、スネグーラチカの抱き枕が変熊の腰のあたりにしなだれかかっている。まさに屋外でハーレム状態だ。相手は抱き枕だが。
への子はその光景に傷つき、さらに潤んだ瞳を変熊からそらすと、彼に背を向け走り出した。
「ま、待てっ! 誤解だ!!」
変熊は抱き枕をプレゼント袋に突っ込むと、慌ててへの子を追って駆け出した。
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