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最後の恋だから……

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最後の恋だから……

リアクション

★エピローグ



 窓から差す朝の陽光で目覚めたら、どれだけ気持ちよく起きれるだろうか。
 起き上がり、一度伸びをしてその朝日を目一杯身体で浴びれば、悪夢などは、過ぎ去るに違いない。

「私がお贈りした余興は、如何だったでしょうか」
 ホテルのエントランスに再び舞い戻った涼華は、丁寧にお辞儀をしてそう言った。
 一体誰に言っているのか。
 それは、一行――冬のバカンスに参加した『エントランスで眠りから覚めた』総勢49名の参加者に向けてだった。
 夢落ちでしたと涼華は言うが、その夢のディティールの細かさは、単純な言葉では片付けられなかった。
「壊されなくてホッとしております。いえ、壊しようがないというのが事実なのですが」
 涼華はエントランスで最も太い円柱に強烈な一撃を加えた。
 円柱は折れるわけではなく、その固められた壁だけが崩れ、中から円柱型の装置が出てきた。
 この孤島は古代シャンバラ王国時代の遺跡であり、この機械装置は発掘品の1つだと言う。
 幻覚装置。
 暫定通称、ドリームメーカー。
 本来は楽しい夢を見せるための装置らしいのだが、修理過程で伝染病の悪夢しか見れなくなってしまったという。
 有効範囲は島全体で、集団で眠っている人の脳に対して働きかけるという。
 ただし装置のパワーをあげれば、有効範囲を縛ることで、一瞬で相手の脳を――即ち睡眠状態――に持っていけるということらしい。
 49人全員がこのエントランスに入った瞬間、その効果により、実は皆がここで寝て過ごしていただけ、ということなのだ。
「というわけでして、皆様の仲をぐっと縮める一役をドリームメーカーに託してみたところでございます」
 古代シャンバラ王国時代の人々は、この装置に何を求めていたのだろうか。
 苦しい現実から逃れるために、この孤島を楽園にしようとでもしたかったというのだろうか。
 とにかく無事で何よりだ。
 ある者は安堵し、ある者は笑い、ある者は照れ、ある者は泣き、ある者は呆然とし、ある者は欠伸をし、ある者は憤怒した。
「ゴブッ!?」
 怒りが沸点に達した乱世からの頭突きを涼華は顎に食らったのだった。
 確かにドリームメーカーは一役かったかもしれないが、やりすぎた感は否めなかった。
「で、ですので、お詫びと言っては何ですが」
 そう言ってホテルのエントランスに入ってくるのは、従業員と思わしきボーイとシェフ達だった。
「もう2日ほどこの島で十分にバカンスを楽しんでいただきたい。今度はドリームメーカーの起動しない、皆様の本当のバカンスです」
 顎を擦りながら指をパチンと鳴らす涼華を合図に、ボーイが各々の荷物を持ち案内し、シェフは鼻を鳴らして張り切っているようだった。
 本当のバカンスは、
 ――ここから始まるのである。

 古代の技術や機械というものは、中々にその詳細を掴めないものである。
 否、それともこれは、人の成せる業なのだろうか。
 事の顛末の報告を聞いていた綾小路想子が所属する空大のサークル「恋愛研究会」一同は、遠く離れた地で、伝染病の悪夢にうなされたのだった。
「ひいいいいいっ!?」
 人の思いの強さが、残留思念となってこびりついたのか。
 それとも、悪巧みをした天罰なのだろうか。
 だが、そんなことはもう彼らには関係ない。

 さあ、冬の孤島で、

 ――バカンスだ!




(お終い)

担当マスターより

▼担当マスター

せく

▼マスターコメント

皆様、おはようございます。そして、参加して下さった方々、お疲れ様でした。
二度目のシナリオと相成りました、せくです。

最後というのは、否応無しに切なくなるものです。
人、物、生活、想像……。
様々なモノに、それぞれの想いの強さだけ、感情は高ぶります。
さて、そんな私のリアクションは、皆様の最後の閃光に応えられたでしょうか?
執筆中、執筆後は、否応無しに不安に駆られるものです。

皆様に楽しんでいただけるよう願いながらこの項を埋め、マスターコメントとさせていただきます。
それでは、またお会いできる日をお待ちしています。
ありがとうございました。失礼します。

1月7日:一部修正を加え、リアクションを再提出させて頂きました。