天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

クリスマス硝戦

リアクション公開中!

クリスマス硝戦

リアクション

 司と夏野が【愛のリース】を確保する少し前、{エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)はアリスのミュリエル・クロンティリス(みゅりえる・くろんてぃりす)を連れて、【愛のリース】がクリスマスツリーに掛かっているか確認しに【反対派】の防衛線へと様子を見に近づいていた。
 ミュリエルは【愛のリース】がどうしても観たかったので、エヴァルトにクリスマスツリーの近くまで連れていってもらったのだが、予定と違い【愛のリース】はツリーに飾られていないばかりか、イベント【肯定派】と【反対派】の抗争で殺伐としていた。
 見られなければ、それでもよかった。
「偽物だけど、ケーキと一緒にリースが売っているから、買って帰るか」
 と、エヴァルトが提案してくれたので、ミュリエルもそれで充分嬉しかった。
 のだが……。
「お前らどっちだ?」
 物騒にも【光条兵器】や銃火器を二人に向けて敵味方を問う生徒が数名、周りを取り囲んでいた。
 エヴァルトの目つきの悪さが故か、弱そうなアリスを連れていると思われて、もし敵なら真っ先に排除してしまおうという魂胆なのか――。どちらにしても、彼らが【肯定派】なのか【反対派】なのか、わからない以上適当に答えるのは得策じゃないとエヴァルトは考え、
「どっちでもない。俺らは【愛のリース】を一目見に来ただけだ」
と答えた。敵でも見方でもないなら自分たちに手出しはしないと予想しての返答だ。
 エヴァルトの予想通り、武器は目の前から引いた。
「悪かったな。こんなところにいるから【反対派】かと思っちまった」
 どうやら、彼らは【肯定派】の人間らしい。
「なに気にするな。ここじゃ【愛のリース】はみれそうにないしな。帰るぞミュリエル」
「あ、うん待ってお兄ちゃん!」
 臆病にズボンのベルト通しを握り、おずおずとミュリエルが後を付いていく。大勢に囲まれたのが怖かったようだ。
 二人を囲んだ【肯定派】の生徒たちも散ろうとする。
「紛らわしいな。あのロリコン。普通アンナの連れてリースを見に来るか?」
「よねー。パートナーにお兄ちゃんなんて呼ばせて、もしかしてシスコンじゃない?」
 エヴァルトは恋愛とかには興味はない。争っている奴らのどっちが勝っても構わない。
 ただロリコンとかシスコンと言われるのは頭に来る。
「だれだ……、俺をロリコンだのシスコンだの言った奴は――」
【龍の波動】をシスコンと言った女子生徒にぶち込む。
「お兄ちゃん?!」
 エヴァルトの突然の攻撃行動にミュリエルがどうしていいか分からず焦る。
「てめえぇ! 人の女に何しや……うおぉ?!」
 続けて、エヴァルトは【神速】で男子の背後を取り、腰をフォールド。
「俺はロリコンじゃなぁい! 訂正しろぉぉぉぉお!」
 後方に体勢を反らして、ジャーマンスープレックス。相手の頭を雪に突き刺し、スケキヨを作った。
 すっかり、周りの【肯定派】には敵だと認識されてしまったようだ。
「お兄ちゃんもみなさんも、ギスギスしてどうしたんですか? ロリコンが悪いんですか? ロリコンてどんな意味ですか?」
 ロリコンと言われたことが、エヴァルトの暴れる原因だが、ミュリエルにはその意味がわからない。
「ロリコンてのは少女が趣味嗜好の異常性愛者の事だ。つまりお前の連れの事だ――ブヘェ!」
 エヴァルトはロリータコンプレックスの説明をする輩の顔面にドロップキックをかました。
「お兄ちゃん異常性愛なんですか!? とっても優しいのに異常なんですか!?」
「嘘だ違う! 俺は断じて異常じゃねえ! ミュリエル、嘘つきなコイツら全員ぶっ飛ばせ!」
 【等活地獄】で更に激しく暴れるエヴァルト。
 ミュリエルは彼を止められそうにないと感じだ。おまけに自分にまで攻撃が来始めたので、タワーシールドに隠れて身を小さくした。
「わーん、みんな仲良くしてくださいです〜!」
 ミュリエルの叫びは虚しく、怒髪天のエヴァルトには届きそうにもなかった。


「本物が見つかった?!」
 影野 陽太(かげの・ようた)火村 加夜(ひむら・かや)にそう聞き返した。
「【飛行翼】で空から確かめました。司さんと夏野さんがバイクに乗って、こっちに運んでいるそうです」
 上空に居る際にゲドーの叫び声でそれを知った加夜は即急降下し、陽太に状況を知らせに来たのだった。
「バイクか。【反対派】の防衛を一気に突破するならいい方法かもしれません」
 二人も【肯定派】に属している。敵の防衛線を削る役目を己に課していたが、あと一歩防衛の壁を打ち破るに至らない。鍵となる【愛のリース】も見つからないため無理に中央突破にも踏み切れずに居たところだった。
「ただ、【反対派】の防衛ですけど、彼らの指揮をしているのはルカルカさんのようです」
 加夜は自らがリスペクトしている人が敵側に居ることに、不安を隠せないようだ。それはルカルカの実力を知っていてのことだろう。
「噂に聞く最終兵器乙女ですか……、なんでまた彼女が【反対派】に。厄介ですね」
 陽太も警戒すべきだと考え、次に自分たちがどんな行動を取るべきかを考えた。
「それなら、俺らはバイクで向かってくる二人の援護をしましょう。徒歩で攻めるよりも彼らの方が確実です」
 序に言うならば、【飛行翼】などで空から攻めるのも対空砲火に晒される危険がある。
「必至。いきましょう!」
 加夜も陽太の意見に賛同し、突破口となる場所へと急いだ。