天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

クリスマス硝戦

リアクション公開中!

クリスマス硝戦

リアクション

「なかなかやるじゃん。このルカルカ相手に一歩も退かないなんて」
 余裕を見せて、陽太の攻撃を凌ぐルカルカ。それでいて迎撃は激しく、受ける陽太はいっぱいいっぱいだというのに。
 至近距離での戦闘はハンドガンを使う陽太には分が悪く、剣とインファイトを駆使するルカルカに有利だ。しかし、陽太が距離を取ろうにもルカルカが間合いを詰めてそうはさせてくれない。バットステータスで攻め落とそうにも、それらの耐性を見越した装備をした彼女には効きそうにもない。
「君ほどの人が【反対派】に加勢するなんて……、どうしてですか? リア充が嫌いなわけでもなさそうですし」
 息を切らして陽太が質問する。
「そうだねぇ。ルカルカもどっちかといえばリア充だし。ほら」
 ルカルカは指貫のグローブを外し、左手の薬指を見せた。
「まあ、強いて言えば、こっちについたほうが”楽しくなりそう”だったからだよ」
 あっけらかんとするような答えを口にするルカルカ。しかし、それでいて単純明快な動機が彼女の立ち位置を表していた。つまりは、彼女がここの戦況をコーディネートしていたのだ。
「そういう事ですか。君の意図がどうあれ、俺達はまだ負る気はないですよ」
 陽太がそう言うと、防衛で新たな混乱が起こった。
 暴れ始めたのは鴉だった。彼は再び【鬼神力】を使い残った【反対派】の防衛を蹂躙していく。
「できるだけ敵を引きつけて!」
「わかってるよ!」 
 アスカも【殺気看破】を駆使して、防衛の攻撃を避けて進む。避けられないなら、【エンデュア】で無理矢理にでも進んだ。
 群がり寄る【反対派】の波を二人だけではなかなか突破できそうにもないが、アスカの狙いは防衛の突破ではない。守備が彼女らに集まることで、クリスマスツリーの真下がガラ空きになるのが狙いだ。
「いまだぜ! アスカ!」
「いっーーけぇええええええええええ!」
 ツリーが手薄になったのを見計らい、アスカは【愛のリース】をツリー目がけて投擲した。
「なに?!」
 頭上を飛び越える【愛のリース】に驚く武尊。咄嗟に光条兵器で撃ち落とそうとするが、加夜の【氷術】に邪魔される。
「涼司くんがイルミンから借りたものを壊させたりはしません」
 放物線を描いて、ツリーへと飛んでいく【愛のリース】。
 だが、簡単に【肯定派】の勝利とはいかない。炸裂する散弾がリースの軌道を大きく外すことになる。【禁猟区】で破壊は免れたが、その【禁猟区】の効果もだんだん弱くなっているようだ。
「黎明華をノケモノにするななのだ! というか、倒れた黎明華を雪の上に放置するななのだ!」
 気絶から立ち直った黎明華の砲撃によりアスカの投擲は失敗した。
 しかし、まだ【肯定派】のチャンスは続く。
「セアトくん、お願い!」
「任せろ! 八雲、おまえの馬鹿力で俺を飛ばせ!」
「愛の共同作業ね、いっくわよ!」
 白銀 司の狙いで、セアトが【愛のリース】の確保を試みる。八雲の【鬼神力】による肉体強化を利用し、セアトは八雲を踏み台にして空高く跳躍した。彼の跳躍の邪魔は司の【弾幕援護】がさせない。
 セアトの右手が【愛のリース】を掴む。
「よし、受け取れ!」
 セアトは体を捻り、司たちに向かってリースを投げた。彼はそのまま自由落下でイルミネーションの網に落ちた。
 リースを受け取ったのは八雲だった。
「セアトちゃんの気持ち、受け取ったわ!」
「八雲さん、ここは私に任せて先に行って!」
 【愛のリース】を狙って、【反対派】が襲い来る。八雲の背後を守るため、司はその場で銃を構えた。
「わかったわ。背中はあんたに任せる!」
 八雲は後ろを振り返ることなく、一直線にクリスマスツリーへと爆走した。
「おーほほほほほ! アタシとセアトちゃんのバージンロードを阻む奴は死刑よ〜!」
 男たちを身震いさせる台詞と走りでオカマが戦場を駆け抜ける。
「一度いってみたかったんだよね。この台詞」
 敵に囲まれてもなお、司はおどけてみせた。けど、その台詞。どう考えても死亡フラグです。
 八雲は走る。積まれた雪壁は【鬼神力】で強化された彼? の肉体には障害としての意味はない。雪壁を人形にブチ抜いて八雲は直走る。【反対派】主要の戦力となる人物は他の面々に抑えられているため、道を阻む者は誰も居ない。
「これでアタシと司の友情と、アタシとセアトちゃんの愛の勝利よ!」
 八雲が勝利を確信し、ツリーへと到達しようとする。
「まだだ! まだ、終わってなァァァァァイ!!!」
 八雲の足を不死者の腕が掴む。土から這い出てくるアンデットはケンリュウガーの必殺技「豪快! アカシック・ブレイカー」でここまでぶっ飛ばされたゲドーの最後の抵抗だった。彼の呼んだゾンビとスケルトンがツリーの周りを囲い込む。
「俺様の中にはモテずに散っていった野郎どもの、数えきれない怨念がうずまいってるんだぁぁぁ! てめえみてえなカマ野郎にいい所を取られてたまるか……!」
 ボロボロに這い蹲りながらも、多くのアンデットを気力だけで操るゲドー。意地でもクリスマスを中止にさせたい思いが彼を突き動かしていた。
「あら、アナタも中々可愛いじゃない。でも、死人を使ってレディーにアタックするのはダメダメよッ!」
 そう言って、八雲は【煙幕ファンデーション】を地面に投げつけて、アンデットたちに目眩ましを仕掛けた。化粧品の匂いがする白煙が辺りに立ち込める。
「視覚を持たないスケルトンにそれは効かねぇぇぇよ!」
 アンデットたちは煙の中で八雲の生命力を嗅ぎ分け、的確に襲いかかった。大量の骨に四肢の自由を奪われては肉体が倍化した八雲でも身動きが取れなくなった。
「これでてめぇの持った【愛のリース】を壊せば、クリスマスは中止だぁぁぁぁって?」
 ファンデーションの煙が晴れて、八雲の手に【愛のリース】が握られているのが、見えるはずだった。しかし、その手には何も握られては居なかった。
「どういう事だ――」