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節分・厄払い・豆撒き大会

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節分・厄払い・豆撒き大会
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銃術士たちの戦い

『『赤鬼』チームも動き始めたようです』
 シズルがカメラの映像から現状を伝える。
『ここから『赤鬼』も反撃が始まるのかな? にしてもなにか良からぬことを企んでいる感じですねぇ』
『不正はこのわたくしが許しませんわ』
 レティーシアは今回の不正監視の役割も担っている。彼女が画面に張り付いているのも単にその為ではなく、武器、魔法による直接攻撃や
殺傷力のあるトラップで参加者が怪我しないためでもある。ルールを守らない生徒がいれば、彼女がその生徒のメインマーカーのブザーを鳴らし、即退場させる。
『今のところ目立った動きがあるのは『青鬼』の信長率いる4人と『赤鬼』の陽太率いる捜索隊でしょうかぁ。『青鬼』の郁乃、マビノギオンペアーも『赤鬼』の旗のある棟で何かを待っているようですね』
 マリエルがスクリーンに3チームの動きを映しだす。
『しかし、一番わからないのはルナティエールさんとエリュトさん彼らはなにしているのでしょう?』
 シズルの見ている映像には校長室の窓の外でせっせと穴を掘る二人の姿が映っている。攻防戦は殆ど校内で行われているというのに、このような場所に落とし穴と言う原始的な罠を仕掛けようと言うのか。その意図がつかめない。
『それなら火村 加夜さんの罠もよくわかりませんわ。校内の至る所にバナナの皮を置かれていますけど……、アレに引っかかる人がいらっしゃるのかしら?』
 レティーシアはどこかのレースゲームじゃ有るまいしと思う。
『加夜ミステリー小説が好きだからね……、その真似かな?』
 マリエルは前にバナナの皮で人が殺されていく話題のミステリー小説のことを思い出した。加夜の仕掛けたトラップはその本の犯人が使ったトラップの模倣なのだろう。
『でもそろそろ、激しい戦闘が見たいところだわ』
 遠距離からのチマチマした攻撃が主なっているため、シズルが現状に飽きてきたようだ。
 しかし、変化は自ずとやってくる。例えば、互いを互いに標的としている者同士が出逢えば、その場で死闘となる。
 そしてその変化は『青い鳥』と縁が殲滅へと動き出したことで始まった。
「あらかたここは片付けたけどぉ、ちさー居ないわねぇ……」
 廊下で『赤鬼』の殲滅を図りつつ、人を探す縁と睦月。標的のちさーこと『青い鳥』をまだ見つけられずに居た。それもそのはずだ、大地と『青い鳥』のペアーはつい先程まで屋上にて防衛に参加していたのだから、彼女たちが出会うのはこれからと言う事になる。
「めがねにーちゃんとぺたんこねーちゃんどこなんだろうな? どうするねーちゃん?」
「二手に分かれて探そうかぁ〜? 私は〜こっちの棟、睦月は〜あっちの棟」
 縁は睦月と別れての捜索を提案する。二人は丁度、棟と棟を繋ぐ渡り廊下の近くに居た。睦月に向かわせるのは『赤鬼』たちの守備する棟に向かわせることにする。
「わかった。ぺったんこねーちゃん居たら直ぐ知らせるよ!」
 と言って、睦月は渡り廊下へと駆け曲がる。
「あぁ〜、そこ、かやさんが仕掛けたバナナが〜」
 あるから注意しなさい。と言おうとしたが、どうやら遅かったようだ。
「ウワァァァン! たーすーけーてーーねぇーちゃん!」
 睦月がバナナの皮に乗って渡り廊下をスライドしていく。普通バナナの皮はそこまで滑らないのだが、これはどういう仕組をしているのだろうか。 
 睦月はどこまでも滑走していくかと思われたが、途中であまり柔らかくない何かにぶつかって止まった。彼はそれに抱きつくことでなんとか倒れずに済んだ。抱きつかれた方は突然ぶつかってきた睦月にビックリしているようだった。
「助かったァ……、でもこの弾力の無さ具合は……」
 睦月は『青い鳥』に抱きつき、その絶壁胸に顔を埋めていた。――埋めていたは多少語弊があるかもしれない――
「やっぱり、ぺったんこねーちゃんだ。着物着てるから少しはあるかと思った本当にぺたんこなんだな。ねーちゃん!、ぺったんこねーちゃんいたー!」
「……ぉぃ」
 縁を呼ぶ睦月の頭部に銃口が押し付けられる。
 睦月が顔を上げるとそこには鬼の貌(かお)があった。
 容赦なくフルオートで豆が発射される。
「うわあああ! なんで撃つんだよー!」
 頭目がけて乱射する『青い鳥』から逃げるべく、睦月は渡り廊下を逆走した。廊下を曲がる瞬間に足のサブマーカーを打たれてしまうが、なんとか彼は縁の元に戻ってくると、彼女の後ろへと隠れた。
「あらあらぁ〜、ちさー怖い顔ねぇ」
「縁、大人しく睦月くんを渡しなさい。そうすればあなたは見逃してあげるわ」
 『青い鳥』が取引を持ちかける。パートナーを差し出せば、敵である縁の安全、つまりメインマーカーへの攻撃をしないことを保証すると言っているのだ。
「睦月を渡したらどーするのぉ? 失格にさせるぅ?」
「いいえ、睦月くんには『赤鬼』私たちの射撃練習の的になってもらった後に、フラッグ防衛用の盾になってもらいます」
「ひっ酷い! そっそんなのやだよぉ!」
 非道な仕打ちに身を縮める睦月。恐らくメインマーカーから狙いを外されつつ、豆を打たれ続けることになるだろう。実弾を撃たれないだけマシかと思われるが、死ねない攻撃を永遠と撃たれ続けるのは拷問と同じだ。
「人の胸を触った挙句にぺたんこ呼ばわりは失礼よ! 大人しくこっちへ来なさい!」
「ねーちゃん……どうにかしてくれよぉ!」
 泣いて懇願する睦月を見かねて、縁が前へ出た。
「仕方ないわねぇ……」
 縁は『青い鳥』に銃口を向け、ライフルを構える。
 答えはノーと言うわけだ。
「交渉決裂ね」
「元から交渉もないでしょぉ? だぁーって私たち敵じゃない」
 二人は互いを敵と再認識する。尤も、敵以前に彼女たちは出会って直ぐにでも撃ち合うべき間柄なのだ。
「千雨さん、やっと追いつきましたよ」
 『青い鳥』の後を追っていた大地がようやく彼女に追いつく。と、『青い鳥』は大地の持っている銃をその手から奪った。
「借りるよ。人払いよろしく」
 追いつたパートナーにそうそうぶっきら坊に命令する。
「言われなくても。もうその必要はないですよ」
 大地は『青い鳥』と縁が別のチームになったことから、こうなることを予想していた。二人が戦う時のために《用意は整っております》を使うはずだったが、先のこの辺りの生徒を縁と睦月が制圧していたので、その必要はなくなった。