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節分・厄払い・豆撒き大会

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節分・厄払い・豆撒き大会
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リアクション

『そっちはどうです?』
 オルフェリアが通信で捜索部隊に連絡を入れる。
『今影っちがフラッグの場所を割り出して、向かっているところそっちはどう?』
 司が通信を返す。いつの間にかアダ名を付けられている影野陽太だった。
 校舎中に仕掛けられた罠の位置と、屋上からの視覚にある教室であることを考えて、『青鬼』のフラッグの位置を特定した。
 結果、その場所は一階の隅にある視聴覚教室。小窓しかなく、外から様子が見えにくく、フラッグを隠すには最適な場所だ。
 この結果を裏付けるかのように、視聴覚教室に向かうに連れて、罠の数が増えている。陽太とキルティが罠を解除して進んだ。
『こっちは防衛に勤しんでます。なるべく早くフラッグを確保できるよう、他の面々にも連絡を回します』
 オルフェリアがそこで通信を切った。
「向こうも大変みたいね。急ぐよ」
 自軍のフラッグが破壊されてしまっては元も子もない。早く敵のフラッグユニットを回収しなければ。
「しかし、罠は多いのに、守り人は全然だな」
「なんか不気味ですわ……」
 ヒューリとセレナリスが気味悪がる。
「恐らくフラッグの位置を特定させないための策なんでしょう。罠を多く配置しているのも、容易には近づけさせないため」
 陽太がそう結論づけた。
 『赤鬼』が屋上に拠点を置いて防衛を優先しているのに対して、『青鬼』たちは攻撃を重視しているのだろう。攻め推され続ければ、『赤鬼』の防衛は危うくなる。
 視聴覚教室の前に着く。罠が仕掛けられていないかキルティが確認し、ドアを開けようとする。
「鍵が掛かってる。ちょっと待ってなさい」
 教室に内鍵は無いはずだ。誰かが外から閉めたのだろう。キルティが《ピッキング》を駆使して鍵をこじ開ける。
「開いたよ」
 全員が武器を構えてドアの側面へと隠れる。ドアを開けた瞬間に攻撃されるかもしれないからだ。開錠音でこちらが来たことは中の『青鬼』たちにバレている。
 司がドアを蹴り開け、中へと特攻する。
 教室内には無数のフラッグユニットが浮遊している。1つ以外は偽物だろうが、どれが本物なのか見分けがつかない。
 そして、それらに向かって豆を打ち続ける、防衛のアイリス、メイ、アレクサンダーとそれを微笑ましく眺める霜月が居た。
「あ、メイがユニットを1つ壊したであります……」
「へへ、一番遠い奴を落としたぜ!」
「うぅ……豆が跳ね返ってきたァ……」
 司たちは何か場違いな場所に来た気がした。
「ん? もしかして敵さんのお出ましですか? フラッグの破壊にきましたか?」
 今更気づいたらしく、振り返る霜月が聞いてきた。
 お勢いよく部屋に飛び込んだ司たちは毒抜かれてしまう
「壊しに来たわけじゃないけど」
「じゃ、アレクたちに豆をぶつけにきたの……」
 敵を怖がって、霜月の後ろへと隠れるアレクサンダー。彼を守るように霜月とメイが臨戦体勢にはいる。
「子供たちに手を出すなら容赦はしませんよ」
 司たちも8才くらいの子供を攻撃するのは気が引ける。それを意図的に組み込んだ防衛役なら、『青鬼』たちもなかなか質の悪い防衛方法を採っている。
「どうするよ?」
「へへ、ここは俺様に任せてもらうか獣人のねーちゃん」
 ヒューリがキルティに自身あり気な態度を示して、銃を仕舞い前へ出る。
「流石ヒュー様、頼りになりますわ」
 後ろからセレナリスが褒める。
 ヒューリはアレクサンダーの前に屈むと、その頭を撫でて言った。
「大丈夫、俺様はカワイコちゃんには手を上げない主義でね。フラッグを確保しに来ただけだぜ。フラッグを渡してくれたら、大会の後にいいところ連れていってあげるよ」
 ヒューリはアレクサンダーにナンパを仕掛けた。光源氏物語よろしく、若紫計画もいいかと妄想してのことだ。
 彼の相変わらずな行動にセレナリスは幻滅した。
「ヒュー様の馬鹿ぁ! クズ虫ィ! ロリコンッ!!」
 セレナリスは罵倒と共に彼の背中を撃ちまくった。マーカーは胸と腹にあるので当たることはない。
「あれがナンパと言うものでありますか……、しかし、アレクサンダーは男の子でありますよ」
 アイリスの指摘に電流が走るヒューリ。男をナンパした失態に打ち拉がれて、教室の壁と話し始めた。
 代わりに陽太が霜月に事情を話した。
「――、なるほど。そういう計画があるのですか、いいですよ。仲間には自分から伝えておきます」
 陽太は戦闘にすることなく、話し合いで済ませられたのは幸いだと思った。子供たちに手を上げれば、霜月が本気で自分たちを倒しにかかる雰囲気を一瞬だけ感じたからだ。
「ありがとうございます。で、本物フラッグはどれです?」
「それが……」
 陽太の質問に霜月が言葉を濁す。目線がダミーフラッグの海に向く。
「どれだったか忘れてしまいました」

 この後、『ダミーフラッグは耐久力が低い』というだけを手がかりに、ダミーフラッグを撃って破壊しながら、本物のフラッグユニットを探すハメになった彼らだった。
「はいはーい。加勢しに来たあちき、レティシアちゃんですよぉ。あちきのスリングで吹き飛ばす敵は何処ですかぁ? てかなんで皆トリガーハッピーしているの?」
 後に散弾攻撃の出来る脳天気な忍者が来てくれたお陰で、フラッグを見つけるのが大分楽にはなったが。