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砂漠のイコン輸送防衛前線

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砂漠のイコン輸送防衛前線

リアクション

《敵戦線が退いた、今のうちにトレーラーは円陣を》
 マーゼン・クロッシュナー(まーぜん・くろっしゅなー)がトーテンコップよりトレーラーの運転手たちに命令する。直列で並ぶコンボイを守るより、円陣を組ませた方が、守りやすい。砂地もイコンで踏み固められている今ならそれが可能だ。
 しかし油断はならない。サブパイロットのアム・ブランド(あむ・ぶらんど)が索敵レーダーの反応を無言で訴える。
《飛鳥、涼子は、サンドモービル、砂鯱の部隊を足止め。アムと自分はヴァラヌスを食い止める。ジャスティシアの名において、このような無法を許す訳にはいかん!》
 敵も陣形が変わるのを許してはくれないようだ。だが、ここで円陣を組めれば、戦況は有利に働く。
「本能寺忍法の奥義、とくと味わいないッ!」
 本能寺 飛鳥(ほんのうじ・あすか)が《ファイヤーストーム》と《アシッドミスト》を唱える。
「近づかせないですわ!」
 早見 涼子(はやみ・りょうこ)は魔女の箒で敵上空を飛行して、【しびれ粉】を振りまく。
 白石 忍とリョージュの蓬莱もアサルトライフルで応戦する。
「オラオラ! 海賊風情が、おとなしくしていれば付け上がるんじゃないわよ!」
 なんか、忍は性格が変わっていた。
「おっしゃ、なら俺の歌を聞け!」
 リョージュは蓬莱を敵上空に持って行き《恐れの歌》と《悲しみの歌》で敵の弱体化を計る。
「加勢します! フィス姉さん!」
 マーゼンの動きに、殿を務めていたリカインたちも合わせる。
「わかったわ。さあいくわよディジーって! 乗る前に勝手に行くんじゃない!」
 リカインはシルフィスティとディジーのコンビが宛になりそうにないと、再度痛感した。
「私に任せて!」
  代わりに、サンドラが働く。【しびれ粉】で動けない敵に《ライトニングブラスト》を放つ。
「近距離では戦えないが、これなら!」
 ヒロユキはマジックカノンを使い、近づいてくるクェイルを撃ち落とす。
「しかし、このイコン物凄くエネルギーの消費が激しい」
「しかたないよ。マジックカノン打っているんだもん。ほら次来たよ」
 補助電力を担当するフィオナが、次の敵の到来を知らせた。
 マジックカノンを撃ち尽くしても、ここは何としても死守しないといけない。

 紫音が戦況を報告する。
《敵イコンの主力は残り、コームラント2機とシュメッターリングのみだ》
《敵コームラントは遠距離武器、誘導ミサイルと分裂ミサイルを多く搭載してはる。近づくのは大変どすな……》
 敵の分析を伝える風花。
《トレーラーに円陣を組ませ終えました》
 マーゼンからも防衛配備の完了が知らされる。
《一機捕縛したよ。尋問は判官のおまえに任せるぜ》
 垂が鹵獲した敵機をマーゼンの元へと持ってくる。
 その後ろで、ライゼが「従来のイコンとあんま変わんなかったなぁ」と嘆いているのがうっすら聞こえた。
《エネルギーのある機体は、シュメッターリングを狙い、残りは敵の生き残りを捕縛。いいわね? じゃあ、ちょっと敵の頭さんを取っ捕まえるよ》
 ルカルカの指揮の元、リーダー機の撃破が始まる。

「そろそろ、本当のことを話してくれませんか?」
 鉄心が九品寺を問い詰める。
「どうやら、研究所での事故。何か知っているようですね?」
 九品寺は後ろへと一歩後退するが、それ以上は背後に回った九頭切丸が許さなかった。
「まさか、イレイシアさんを事故に合わせたのは……」
「ちがう! あれは、おれじゃない!」
「じゃあ、何をやったんだ!」
 鉄心が九品寺へと掴みかかる。
「アレイシャの話ではお前がイレイシアに何かをしたってことだ。事故に合わせていないというならば、その後彼女をどうした? 居場所を知らないというのは嘘だろう!」
 そのことに関してはティーの《嘘感知》でクロと出ている。
 九品寺は知っているのだ、イレイシアの居場所を。そしてそれを隠している。
 彩羽から通信が入る。
《お取り込み中だけどいいかな?》
「どうしたんです? 彩羽さん」
 加夜が通信に応答する。
《出発前に改良型イコンの中を《サイコメトリー》で調べたんだけど……》
 彩羽の言葉に、いよいよもって青褪める九品寺。
《イーグリットの中に人が一人詰め込まれているのよ。あのコックピットの中にある変な装置のなかにね》
 それはつまり、「単独搭乗システム」の中に誰かが入っているということ。
「まさか、Q策さん! あなたはイレイシアさんをあの中に!?」
 全てが露見し、九品寺は力なく、床へと自ら平伏した。


「単独搭乗システム」とは何か。
 それは名のとおり、二人乗り用のイコンを一人用として、十分な出力を発揮させる物。
 しかし、原則として地球人とパラミタ人が二人乗ることでしか、イコンは力を発揮できない。二人が一緒に搭乗してからこそだ。それは、機械的にシステムではどうしようもない問題だ。
 しかし、二人がかりで動くイコンを一人で動かせるならこれほど効率のいいシステムはない。
 なら、イコンを一人で動かすためにはどうすればイイ?
 簡単な話だ。二人乗ればイイ。内一人は動けなくたっても構わない
 意識が無くとも、四肢が無くとも、脳だけでも機械の中で誰か生きていればいいのだ。
 それが、「単独搭乗システム」の真実であり中身だ。
 中にはイレイシア・ミナミが詰まっている。

(私の妹は、Q策によってシステムの素材になった)
 アレイシャは妹と九品寺の幸せを姉として願っていた。それが馬鹿らしくなる。
 結局、九品寺は研究と開発と言う名目で妹をその犠牲としたのだ。愛していたはずの人間を自ら手をかけたのだ。それが、アレイシャには許せない。
 しかし、まだイレイシアは死んではいない。 
 だから、取り戻す。鏖殺寺院の末端組織にまで入って、犯罪に手を染めても、妹をシステムと九品寺の呪縛から開放させたい。
 その一心で、アレイシャは“敵”へと向かう。