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砂漠のイコン輸送防衛前線

リアクション公開中!

砂漠のイコン輸送防衛前線

リアクション

 ――、攻防

《緊急事態! 各員応戦体勢!》
 アリスによるテレパシーにより、生身組への伝達が瞬時に完了する。
 しかし、0号車だけは伝達よりも早く敵への応戦することとなった。
 その男は、三道 六黒(みどう・むくろ)は荷台の上へヌメリと現れた。
「貴様は誰であります?!」
 ジャンヌが黒い扮装の男へと叫ぶと、男は口角を釣り上げて答えた。
「わしが誰であろうとよかろう? 強いて言うならば、わしは“悪”だ」
 そう六黒が答えると、トレーラーの前方の蜃気楼を突き破り、多くの敵が現れた。
 サンドモービル、砂鯱、小型飛空艇、はてはイコンまでもが、前方に待ち構えていた。
 それだけではない、砂地からモグラのようにイコンが現れる。
「砂の中に隠れていやがったのか」
 荷台のラルクが呻く。
「でも、コイツラどう見たって鏖殺寺院のスーツ着てるじゃんっ!?」
 輝夜の言葉を遮るように、1号車の車体が傾く。
「どうしたんです!?」
 荷台にしがみつき、エッツェルが運転手の燕馬へと通信する。
《タイヤをヤラれた!》
 1号車の前方車輪に辿楼院 刹那(てんろういん・せつな)の【リターニングダガー】が刺さっていた。
「悪く思うなよ。わらわも仕事じゃからの」
 サンドモービルの運転を海賊に任せたおかげで上手く、タイヤを捉えることができた。これで、コンボイは停止せざる負えなくなる。結局タイヤを1つしかパンクさせることができなかったが、直径1m以上の大型タイヤをパンクさせただけでも、十分にすごい。
 機械を操るのは苦手だが、こういった妨害工作をするのはお手のものだ。
「では、わしも役目を果たさせてもらおう」
 六黒の握る拳に闘気が滲む。《百戦錬磨》による力の上昇が可視化していた。
「ハンドルを切れ! 道を外れるにゃ!」
 瞬時に音子が運転手へと指示を出した。0号車は大きく道を外れて砂地へと入り込むと同時に、《スタンクラッシュ》の大きな衝撃を受けた。
 もし、態と道を外れていなければ、後ろの車両と玉突き事故を起こしていたかもしれない。
「いやですぅー! 死にたくないですぅー!」
 揺れる荷台に必死にしがみつくルノー。
「余計な物が付いているが、この荷を頂くとしよう」
 荷台の連結が《一刀両断》される。動力を失った荷台は砂地にめり込むようにして動きを止めた。
《0号車、ダイジョブですか!?》
 1号車のサツキからの通信だ。
《心配ないにゃ。1号車はそのまま先頭を走るにゃ》
《了解っ!》
 音子の指示に、サツキではなく燕馬が応答する。パンクしたタイヤにハンドルを獲られそうだが、ここで自分が踏ん張らなければ、後方車両が全て道連れになる。
 しかし、海賊の攻撃は容赦ない。コンボイの動きを止めようと執拗にタイヤへの攻撃を仕掛けてくる。
「おらおら! てめーらも、わざわざ砂漠に襲われにクルタァご苦労様だなぁオイ!」
 羽皇 冴王(うおう・さおう)が砂鯱】から【漆黒の魔弾】を撃つ。
「サツキ! 左側面を頼む! 両方のタイヤをヤラれたら、どうにもならない!」
「わかった!」
 燕馬に言われ、サツキは左から飛んでくる。銃弾を《サイコキネシス》で反らせる。燕馬が頑張っているんだから、私もと力が入る。
《5秒後に全車両停止!》
(5秒後停車、総員対ショック体勢!)
 白竜の命令が下る。それを更に、アリスの《テレパシー》が拡散させる。道先のトラップの可能性と走行しながらの応戦が不可能と判断した。既に、応戦を初めているものもいるが、このままでは埒があかない。
 一斉にブレーキが踏まれる。土煙を上げてコンボイが止まる。
 そして、輸送部隊は全方位を海賊、いや、鏖殺寺院の下級兵士と、盗まれていた各学園のイコンに取り囲まれていた。
 イーグリット、イーグリット・アサルト、コームラント、アグニ、キラーラビット、玉霞、雷火、アルマイン・ブレイバー、シバーヒー、クェイル、センチネルと彼らが持つに相応しくないイコンが並ぶ。
 そしてそれらを束ねているであろうイコンが、姿を表す。すべての機体と海賊を制して近づいてくる。
 シュメッターリングだ。
 オープン回線で、シューメッターリングパイロットからの通信が入る。
《無駄な抵抗はするな、大人しく積荷を差し出せば殺しはしない》
 意外にもその声は女性のものだった。
「アレイシャ……」
 加夜は九品寺がそう呟いたのを確かに聞き取った。
 敵から通信には白竜が答える。
《敵大将とお見受けします。寛大な提案をして頂いていることは重々承知しています。しかしながら、それを受けるわけにはいきません》
《断ると。この状況下で最善の選択を》
 命が助かると言うならば、投降するのが得策かもしれない。輸送隊は四方を囲まれ不利なのは見るに明らかだ。
 しかし、それでも任務の為にやることは決まっている。
《――っ、総員攻撃体勢! これより敵の殲滅を行う!》
 白竜が叫ぶように命令を下す。皆一斉に武器を構える。
《そう……、なら死ね! 攻撃開始! 力づくでイコンを奪取せよ!》
 敵も再び攻撃を開始する。
 砂漠が一瞬にして戦場へと姿を変える。
《待機部隊、イコン全機出動! 応戦! トレーラーの保護を最優先!》
 ルカルカがイコン部隊に号令をかける。トレーラー内にて待機していた者たちも、扉を開けて、外へと出る。
《生身部隊は、【砂鯱】、サンドモービルを警戒! イコンと戦うものは無理をするな! 保身を第一としろ!》
 生身の者へはダリルが命ずる。
御剣 紫音(みつるぎ・しおん)綾小路 風花(あやのこうじ・ふうか)と共にゲイ・ボルグ アサルトより《テレパシー》にてイコン部隊の通信管制する!》
《了解! 生身部隊への通信をアリス・テスタインに、各部隊との相互通信をユイリ・ウィンドリィに任せる》
《了解》
《了解》
 白竜の指示に、アリスとユイリが承知し、テレパシーと機械による通信網が完成する。これにより、生徒たちは遅滞なく情報を得ることが出来、滞り無く連携することが出来る。
「しっかし、これじゃあ敵と味方の区別がわかんないよ!」
 混戦に入りゆく戦場を見て、葛葉 杏(くずのは・あん)がぼやく。
 敵リーダーを除き、全てのイコンがシャンバラ製だ。敵味方の区別がつかないため、フレンドリーファイヤ(同士討ち)をする可能性が高い。
《味方イコンには全て赤布を上腕部に取り付けてるよ! それを目印にして!》
 リネン・エルフト(りねん・えるふと)が助言する。混戦を予想して、フェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)とともに、昨日のうちに参加各機に布地を取り付けておいたのだ。
「なるほど、それなら分かりやすいです」
 リネンの助言に橘 早苗(たちばな・さなえ)が頷く。
《通信、研究者に繋がっているか?》
 朝霧 垂(あさぎり・しづり)が九品寺の乗る飛空艇へと通信する。
「どうしましたか?」
《敵の改良イコンだけどよ、破壊していいのか? それによって戦闘方法が変わってくるんだけどさ?》
 敵の操るイコンも元は研究所から輸送していたものだ。応戦するにも躊躇いが出てしまう。
「お任せします。 元は、あなた方に返すはずの機体でしたから」
 要は、持ち帰りたいなら壊すなと言うことか。と、垂は解釈した。
 だが、彼女としては釈然としないところがある。彼女はこの護送自体が、改良型イコンの実践テストかもしれないと考えていた。
「とは言え、事実は敵機を捕獲してみないとわからないよな……。ライゼ機体の情報収集は任せるぜ!」
「そのつもりだもん。任せて!」
 ライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)は計器から得られる情報の解析に指を動かす。改良型イコンの詳しいデータがほしいため、垂が敵機を捕獲してくれるのを望んでいた。